映画『Michael/マイケル』パンフレット サントラCDとアルバム『Dangerous』

映画『Michael/マイケル』が問いかける「自由に創造すること」

〜 実の甥ジェファー・ジャクソンが蘇らせたマイケル、その物語から考える 〜


音楽伝記映画の歴史を塗り替えるほどの異例の世界的大ヒットを記録している映画『Michael/マイケル(原題:Michael)』、あなたはもうご覧になりましたか?

私もこの映画はとても楽しみにしていたので、もちろんIMAXで、いつものお気に入りの席を陣取って観てきましたが、結論を一言で言うと、最高でした。

映画『Michael/マイケル』予告編

正直に言いますが、私は、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)は昔から好きだったものの、熱烈なファンというほどではありません。
もちろん代表曲は知っていますし、いくつかアルバムも持っています。
しかし、初めは「マイケルの伝記映画だから絶対に観たい」というより、「どんな作品なのだろう」という興味の方が大きかったように思います。

私は基本的に、観たいと思った映画については、事前にはあえてあまり情報を入れずに観に行きます。
週に1、2回のペースで映画館に足を運ぶ私は、本編が始まる前に流れるこれから上映される映画の予告編と、劇場に並ぶチラシをさっと眺めて、観たい映画を決めます。

映画『Michael/マイケル』も、まずチラシを見て「あのマイケル・ジャクソンを再現するとはすごいチャレンジね。これは観ないと」と思い、その後、映画館では予告編が流れるようになり、当然のことながらますます興味を持ちました。
が、やはりこの時点では詳しいことはチェックせず。
予告編には、マイケルを演じた俳優が「Hi, I am Jaafar Jackson.(こんにちは、ジェファー・ジャクソンです)」と挨拶するバージョンもあり、それを見て、私は「ジャクソンっていう名前だから、マイケルの甥かな。マイケルには兄弟が大勢いるから俳優の甥がいてもおかしくない。その子を採用したのね」くらいに思っていました。

そしていよいよ映画鑑賞当日、まずパンフレットを購入するために売店に立ち寄りました。
ディスプレイには、この映画『Michael/マイケル』のサウンドトラックCDも並んでいて、少し気になりはしたものの、映画を見る前は、正直そこまで欲しいと思うかどうかわかりませんでした。
マイケルの楽曲ならすでに持っているものもありますし、それで十分かもしれないと考えたのです。

そんな私でしたが、映画を観終わった後には、結局サウンドトラックCDを購入していました。
この映画を通して知ったマイケルの物語を、もう一度音楽とともに辿りたい。
そんな気持ちになっていたのです。

映画『Michael/マイケル』パンフレット サントラCDとアルバム『Dangerous』
映画『Michael/マイケル』パンフレット&サンドトラックCDとアルバム『Dangerous』デンジャラス:映画の劇中で描かれた熱狂の「その先」にある時代を象徴するアルバムで、この作品も音楽史に深く名を刻む、凄まじい世界的大ヒットを記録した)

今回のサントラCDを購入する決め手となった理由の一つは、ジャクソン5(The Jackson 5)時代の楽曲でした。
もちろん曲自体は知っていましたが、その歌声の向こうに、幼いマイケルと家族の姿が見えるようになった今、それらの曲は以前とはまったく違う響きを持って聴こえます。

また、CDやレコードは海外の作品でも、日本盤にはライナーノーツ(解説文や歌詞の対訳など入った冊子)が同包されることが多く、ぜひそれも読んでみたいと感じたのです。
今回の解説は音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんによるもので、映画に関わる点から各楽曲についてまでかなり詳しく説明されていて、そこから得られる感動も多かったです。

映画『Michael/マイケル』サウンドトラックCD
映画『Michael/マイケル』サウンドトラックCD(モノクロの冊子が21ページにも及ぶライナーノーツ。最終ページにはジャクソンズマイケルのアルバムの一覧画像も掲載されてました)

そして何より驚いたのは、マイケルを演じたジェファー・ジャクソンJaafar Jeremiah Jacksonでした。
映画を観ている間、私は何度も「本当にマイケルを見ているようだ」と感じていましたが、映画を観終わった後にパンフレットを開くと、なんと彼は元々は俳優を目指していたわけでもなく、今回のオファーを受けて初めて演技をすることになったのだと知り、本当に驚きました。

誰がマイケルを演じるのだろうと思っていた本人が、結果としてその役を引き受けることになる。
しかも相手は、世界中の誰もが知る大スターマイケル・ジャクソン
比較されることも、批判されることも覚悟しなければならない役だったはずです。

それでも彼は、その重責を背負い、見事に演じ切りました。
私は単にダンスや歌の再現度に感動しただけではありません。
マイケルという存在への敬意と覚悟が、スクリーン越しに伝わってきたことに心を動かされたのです。

映画 Michael/マイケル チラシ(1)
映画『Michael/マイケル』チラシ(1)

ところでこの制作には、音楽伝記映画の記憶としてはまだ新しい、ロックバンド・クイーンを描いたボヘミアン・ラプソディでプロデューサーを務めたグレアム・キングGraham King)が携わっています。
『ボヘミアン・ラプソディ』のときは、主演のラミ・マレックの息遣いに加え、フレディ本人の音源、そして声が酷似した外部の歌手の歌声を巧みにパッチワークのように重ね合わせた、いわゆる「3部編成」での緻密な音響エンジニアリングが取られていました。

一方、今回の映画『Michael/マイケル』で取られたアプローチは、それよりもはるかにシンプルで、同時に奇跡的とも言えるものでした。
外部の「そっくりな声」を必要とせず、ただ二人の声だけで構成される「2部編成」。
それが可能だった理由は、主演を務めたジャファー・ジャクソンが、マイケルの実の甥であるという事実にあります。

映画のパフォーマンスシーンで私たちの耳に届いていたのは、マイケル本人のマスター音源(録音)と、ジャファーが撮影現場で実際に喉を枯らして歌った生歌を絶妙にブレンドした音声でした。

声というものは、骨格や声帯の形で決まると言います。
同じジャクソン家のDNAと骨格を受け継ぐジャファーの声は、ふと口ずさむような静かなシーンやアカペラにおいて、加工せずとも驚くほどおじであるマイケルの響きに似ているのです。
さらに、幼少期から身近にあった「ジャクソン・ファミリーのグルーヴやブレスの癖」が、彼の細胞レベルに染み付いていたことも大きかったのでしょう。

映画の中のジャファーは、ただ過去の音源に口の形を合わせる「口パク」をしていたわけではないのです。
マイケルがその声を出す瞬間の、首の筋の立て方、顎の角度、呼吸のタイミングまでを完全に身体にシンクロさせ、実際に歌いながら踊っていました。
だからこそ、私たちはスクリーンの中に「単なる模倣」ではない、本物の魂の実在感を感じ取ることができたのだと思います。

なお、販売されているサウンドトラックアルバムに収められているのは、映画の再現ではなく、100%「マイケル・ジャクソン本人のオリジナル音源」です。
スタジオで完璧に磨き上げられたおなじみの名曲から、彼がかつてツアーのステージで本当に響かせていた当時のライブ音源まで、混じり気のないキング・オブ・ポップの歌声が最高の音質で刻まれています。
映画館で、甥であるジャファーの血の滲むような肉体表現と融合した「新しい体験」としてのマイケルを観たからこそ、このサントラCDから流れる「本物の完全な歌声」を聴いたときの感動は、より深いものになります。

映画 Michael/マイケル チラシ(2外面)
映画『Michael/マイケル』チラシ(2外面)
映画 Michael/マイケル チラシ(2中面)
映画『Michael/マイケル』チラシ(2中面)

そして、映画『Michael/マイケル』にはもう一人、私の心に残った人物がいました。
マイケルの護衛を務めたビル・ブレイ(Bill Bray)です。
映画を観ている間、私は「この人の存在って初めて知ったけど、実はかなり重要な人物では?」と気になっていました。

派手な人物でも、決して目立つ存在でもありません。
けれど、マイケルが苦しい時、迷った時、ビルはいつもその傍にいました。

ジョセフが厳しさによってマイケルを導こうとした人物だとすれば、ビルは静かに見守る人物として描かれていたように思います。
実際のビルについて詳しい記録は多く残っていないようですが、彼が果たしていた役割は決して小さくなかっただろうと、この映画を観ただけでも感じとることができました。

才能は一人で花開くものではありません。
表舞台に立つ人がいる一方で、その人を支える存在もいる。
今回の映画を観ながら、私はそんなことを何度も考えていました。

そしてもう一つ、私の心に響いたものがあります。
それは映画の中でマイケルがノートに書き留めていた言葉です。

Be free to create.
創造するために自由であれ。

マイケルは世界で最も成功したエンターテイナーの一人でした。
けれど、その一方で、幼い頃から家族や世間の期待を背負い続けた人でもありました。

もし彼がもっと自由だったら。
もし彼がもっと自分らしく生きられていたら。

そんなことを考えずにはいられませんでした。
しかし同時に、その苦しみや葛藤があったからこそ生まれた作品もあったのかもしれません。
だから私は、この映画を観終わった後も簡単な答えを出すことができません。
ただ一つ思ったのは、創造することは、自由と深く結びついているということです。

音楽でも。
絵画でも。
文章でも。
そして人生そのものでも。

私たちは本当に自由に創造できているだろうか。
誰かの期待や評価ではなく、自分自身の心の声に耳を傾けながら生きられているだろうか。

映画『Michael/マイケル』は、そんな問いを私の中に残していきました・・・

✔️『Michael/マイケル』上映劇場一覧:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=michael

続編(Michael Part 2)の公開も既に計画されているとのこと。
待ち遠しいですね。


あなたは
自由に創造すること
できていますか?

アンドリュー・ワイエス展 図録 クッキー缶

アメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスの静寂に身を置く時間

〜 ニューヨークで出会った画家との再会 〜


東京上野で開催されている『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』を観てきました。
(会期:2026年4月28日(火)~7月5日(日))

20世紀アメリカを代表する具象画家であり、静寂と孤独、そして人々の記憶を描いたとして知られている、アンドリュー・ワイエス(Andrew Wyeth, 1917年7月12日-2009年1月16日)の展覧会が、米国建国250周年東京都美術館開館100周年を記念する今年、ここ日本では17年ぶりかつワイエスの没後初めて、開催されることとなったのです。

東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』告知動画

私にとってアンドリュー・ワイエスは、以前から特別な画家の一人です。
初めて彼の作品を見たのは2017年にアートに特化したツアーに参加し、ニューヨークを訪れた時のことでした。
当時の私は、今ほど近現代美術に親しんでいたわけではありません。
それでも、ニューヨーク近代美術館(MoMA : Museum of Modern Art)で目にしたワイエスの作品に、不思議と心を惹かれたのです。

ところで、アメリカの国民的画家と言われているワイエスですが、意外にも、MoMAが所蔵する彼の作品は《クリスティーナの世界(Christina’s World)》の1点きりとのこと。

*この作品の画像はMoMAの公式サイト(https://www.moma.org/collection/works/78455)にて見ることができます。
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』では残念ながら出展されていませんが代表作として有名な作品です。

1948年にワイエス《クリスティーナの世界》を描いた翌年(1949年)、MoMA初代館長であったアルフレッド・バー・JrAlfred Hamilton Barr Jr.,  1902年1月28日-1981年5月15日)がこの作品の価値をいち早く見抜いて買い取りました。
が、その後、MoMAの収集方針は抽象表現主義やポップアートなどの前衛的なモダンアートへとシフトしていきます。
一方で、伝統的な技法で具象的に描くワイエスのスタイルは当時の先端的なモダンアートの主流から外れたため、追加でコレクションされる機会がなかったというのがその理由のようです。

しかし、私にとって初めて目にしたワイエスの作品がその《クリスティーナの世界》1点のみでも、強く胸を打たれたのです。
本作は、病で歩行が困難になりながらも車椅子を拒み、這って進むことを選んだ隣人の女性クリスティーナをモデルに、「過酷な運命を懸命に克服する人間の生命力」を描いた作品です。

MoMAではせっかく撮影可能だったにも関わらず、感銘して見惚れてるうちに、人も集まり良いアングルを得られず写真を撮り損ねてしまったのですが、しっかりと記憶に残り、それ以来、ずっと心に残り続ける画家の一人となったのです。
そのようなことから「もっとこの人の作品を見てみたい」と思ったわけですが、日本で彼の作品に出会う機会は決して多くありません。

後に、福島県立美術館を訪れた際、同館が所蔵しているワイエスの作品6点を常設展で観ることができ、とても驚いたことを覚えています。
私が住む宮城のお隣の県で、彼の作品が6点も保管されていただなんて…

そしてそれからさらに数年後となる今回、ようやくまとまった数の作品をじっくり鑑賞できる機会を得ることができたのです。

東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展 チラシ(外面)
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』 チラシ(外面)
東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展 チラシ(中面)
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』 チラシ(中面)

(チラシ画像はクリックするとPDF画面が開き拡大できます)

チュルリョーニスとは違う静けさ

今回の上野行きの目的は、同時期に鑑賞した『チュルリョーニス展』でもありました。
どちらも静かな世界観を持つ画家ですが、私にはその静けさが全く異なるものに感じられました。

チュルリョーニスの作品からは、音楽が聞こえてくるような感覚があります。
星々が巡り、風が流れ、世界そのものが呼吸しているような…
静かでありながら、内側では壮大な宇宙が動いているのです。


一方、ワイエスの世界は違います。
ほぼ無音に近く、聞こえるとしたら、

風が草を揺らす音。
遠くの鳥の声。
古い家屋が軋む音。

そんな自然の気配だけ。
それ以外の音は、ほとんど存在しません。

「何も起きない」のに濃密な世界

ワイエスの作品を見ていて感じるのは、「何も起きていない」ということです。

劇的な出来事もない。
派手な色彩もない。
強いメッセージもない。

けれど、その「何も起きない」が濃密なのです。

空き部屋。
閉ざされた窓。
誰もいない野原。

本来なら何もないはずの場所なのに、そこには確かに人の気配や記憶が残っています。
まるで、「さっきまで誰かがここにいた」そんな感覚を覚えることがあります。

死ではなく、時間の気配

ワイエスの作品には、どこか寂しさがあります。
父親を突然の事故で亡くした経験や、幼少の頃には病弱で一般的な子供のように学校には行けなかったような彼自身の人生背景を知ると、その理由も少し見えてくるように思います。

ただ、不思議なことに「怖さ」は感じません。
死を描いているというより、「いつか失われるもの」への静かなまなざし。
そんな印象を受けるのです。

だからこそ、彼の作品の前に立つと心が静まります。
そして、自分自身の記憶や時間について考え始めてしまうのです。

”境界に立つとき、心が動き出す”

さて私は、『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』観覧後、この記事を綴るためにブログ用の写真を撮影していて、ふと気がつきました。

図録の表紙に選ばれている作品《ヒトデ(Star Fish)》
そして記念に購入したクッキー缶に描かれている作品《ゼラニウム(Geraniums)
さらに、展覧会場で撮影可能な作品だった中で、私自身が直感的にこれ好きだなと感じて撮影していた2枚限りの写真。
私にとってはどれも偶然のように思えたのですが、すべてに「窓」が描かれていたのです。

アンドリュー・ワイエス展 図録 クッキー缶
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』図録 クッキー缶(老舗パティスリー・アンテノールのラングドシャ・シトロン)

実は、私は昔から「窓」というモチーフが好きです。
けれど、その時は全く意識していませんでした。
だからこそ、無意識のうちに選んでいたことに少し驚きました。

しかしそもそもこの展覧会には『Boundaries or Windows』という副題が添えられていました。
これを直訳したら「境界線それとも窓」となりますが、改めてチラシを見返すと”境界に立つとき、心が動き出す。”という言葉が記されていました。
「窓」こそ、今回の展覧会全体のテーマの象徴だったのです。

窓の向こうにあるもの

私自身が心を惹かれ撮影した二つの作品を見返してみます。

《乗船の一行(Bording Party)》は、窓の外に見える帆船によって、旅立ちや不在を想像させる作品です。
そこにいるはずの人々は描かれていないのに、窓の向こうに広がる世界によって物語が生まれています。

アンドリュー・ワイエス 《乗船の一行(Bording Party)》
アンドリュー・ワイエス 《乗船の一行(Bording Party)》

一方、《ケネットの集会場(Kennett Meeting)》は、クエーカー教徒の集会所を描いた作品です。
人々が集い、語り合い、そして別れを迎える場所。
ワイエス自身も「窓の配置が美しい」と語ったそうですが、父N.C.ワイエスの葬儀が行われた集会所とも重なる背景を知ると、その窓がより特別なものに見えてきます。

アンドリュー・ワイエス 《ケネットの集会場(Kennett Meeting)》
アンドリュー・ワイエス 《ケネットの集会場(Kennett Meeting)》

ワイエスが描く窓は単なる建築の一部ではなく、

内と外、
現在と記憶、
ここにいる自分と、その向こうにある世界。

そうした境界を静かにつないでいるように感じます。

思いがけない「ゼラニウム」とのつながり

そしてもうひとつ、これはかなり個人的なことではありますが、驚いたことがありました。

展覧会特設ショップで購入するに至ったクッキー缶。
こちらに採用されている作品も窓が描かれたもので、私は「これも好きな作品だな、缶に配色された色もデザインも悪くないし、エッセンシャルオイル(精油)の保管にちょうど良いサイズ感かも」と思い購入したのです。

その時は作品名まで確認していなかったのですが、帰宅してからこの作品名が《ゼラニウム》だったことに気づき、思わず笑ってしまいました。

実は私はゼラニウム精油の香りが大好きで、常備しているエッセンシャルオイルの一つなのです。
偶然なのか、ご縁なのか。
そんな小さなサプライズも含めて、今回のワイエス展は私にとって印象深い時間になりました。

エッセンシャルオイルケースになったクッキー缶
アンドリュー・ワイエス《ゼラニウム(Geraniums)がプリントされたクッキー缶を活用して早速エッセンシャルオイルケースに。
静寂の中に身を置く

念願だった、たくさんのワイエス作品を見ることができて、本当に嬉しく、幸せでした。
展覧会を見終えた後も、強烈な感動というよりは、静かな余韻が残っています。

振り返ってみると、私は昔からこうした作品に惹かれてきたのかもしれません。

大きな声で語りかける作品ではなく、静かな余白の中に物語が宿る作品 ──

ワイエスの絵の前に立っていると、そんな自分自身の好みも改めて見えてくるようでした。。。

東京都美術館
東京都美術館

東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8−36
Webサイト:https://www.tobikan.jp/


あなたは
どんな静けさに
心を動かされますか?

映画 エレノアってグレイト。 Eleanor the Great パンフレット チラシ

映画『エレノアってグレイト。』に感動しすぎた理由

〜 人生は、いくつになっても新しい物語を紡げる 〜


今年は、まさかこんなに泣けるとは、と思える映画との出会いが多いように感じているのですが、『エレノアってグレイト。(原題:Eleanor the Great)』もまさにそのひとつでした。

映画エレノアってグレイト。予告編

スカーレット・ヨハンソン初監督作品となるこの映画については、実に観る前から期待していました。

世界的スター女優であるスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)が、初監督作でどんな作品を選ぶのだろうと思っていたら、主人公は、若く美しいヒロインでもアクションヒーローでもなく、90代の女性エレノア。
その時点で、何か面白いものを見せてくれるのではないかと感じたのです。

しかし、実際に観てみると、その期待をはるかに超える作品でした。

この映画は”世代をつなぐ友情の物語”と紹介されています。
確かに、そのとおりです。
けれど私にとっては、それだけでは語りきれない作品でした。

物語の中心にあるのは、エレノアが思わずついてしまった一つの嘘。
ですが、それは悪意から生まれたものではありません。

だからこそ私たち観客は苦しくなります。
「それは違うよ」と思いながらも、「でも気持ちはわかる」とも思ってしまう。
そして、その”今日だけのはずだった嘘”は少しずつ大きくなっていきます。

笑いが散りばめられたフィクション映画なのですが、私は途中から、「いつか必ずバレるよね…そのあとはどうなってしまうのだろう…」「どうかもう少しだけ、この時間が続いてほしい、でも…」と、少し不安が混じる気持ちで観ていました。

映画 エレノアってグレイト。 チラシ
映画『エレノアってグレイト。』チラシ

そんな物語の中で印象的だったのが、ユダヤ教のラビが語る「ヤコブとエサウ」のエピソードです。
*ラビ(Rabbi):ユダヤ教における宗教的指導者や律法(トーラー)の教育者

双子の兄エサウを出し抜き、父をだましたヤコブ。
けれど聖書は彼を単純な悪人として描きません。
苦しみや葛藤を経ながら成長していく人間として描いています。

”人は善人か悪人かだけでは語れない。嘘も意図によっては悪くはない。”
ラビの言葉は、まるでエレノアそのものを語っているようでした。

この映画は、観客に簡単な答えを与えないからこそ、深く心に残るのかもしれません。

そしてもう一つ、私が涙なしには観られなかった理由があります。
それはホロコーストです。

映画を観ている間、私はエレノアの長き親友ベッシーの回想シーンに強く心を揺さぶられました。

ホロコースト生存者(サバイバー)としての悲しみを語るその姿には、演技を超えた迫力があり、「もしかすると、この女優さん自身も実際にホロコーストを経験したサバイバーなのではないだろうか」と感じたほどでした。

後からパンフレットを読んで、驚くと同時にやはりと納得しました。
私が感じた通り、ベッシーを演じたリタ・ゾーハー(Rita Zohar)自身がホロコースト生存者だったのです。
だから彼女の語りには、演技を超えた重みがあったのでしょう。

ホロコーストはしばしば膨大な犠牲者数とともに語られます。
しかし、ベッシーの物語は、数字ではなく、一人の人生として私の心に届きました。

映画「エレノアってグレイト。」を深く理解するための図解
映画「エレノアってグレイト。」を深く理解するための図解(筆者作成)

さらに本作では、リタ・ゾーハーだけでなく、実際のホロコースト生存者たちも参加しているとのこと。
スカーレット・ヨハンソンは、ユダヤ系のルーツを持つ自身の背景も踏まえながら、ショア財団やホロコースト生存者のコミュニティの協力を得て、この作品を作り上げました。
*ショア財団(USC Shoah Foundation):第二次世界大戦時のナチスによるホロコースト(ショア)の記憶の継承をする組織

だからこそ私は、この映画から流れてくるものが単なる再現ドラマ的なものではなく、「実際にその時代を生きた人々の記憶」に支えられているように感じたのかもしれません。

と言いつつ、この現代の日本という国で平穏に暮らしている私は、ホロコーストやユダヤ教について詳しい人間ではありません。
けれど、この映画を観て改めて思いました。

過去にあった悲劇を忘れてはならない。
そして、ただ歴史として知るだけではなく、その悲しみを抱えて生きた人たちにせめて気持ちだけでも寄り添いたい。
──と。

何より胸を打たれたのは、この映画は、単なるホロコーストや嘘にまつわる物語として終わらないことです。

エレノアは、ひょんなことから孫ほど歳の離れたニナという友人を持つことになります。
ニナとその父ロジャーは、母であり妻を亡くした悲しみを抱えていました。
そんなニナに寄り添うエレノアだったからこそ嘘も発展し、しかしやがてその嘘もバレてしまうのですが・・・

・・・あとはネタバレになってしまうので、物語の中身についてはこれ以上触れませんが、深いストーリーはさることながら、ニナを演じたエリン・ケリーマン(Erin Kellyman)の演技も素晴らしく、彼女が涙を流すたび、私も涙をこらえることができませんでした。

映画 エレノアってグレイト。 Eleanor the Great パンフレット チラシ
映画『エレノアってグレイト。』のパンフレットとチラシ。パンフレットはジャーナリスト志望の学生であるニナのジャーナルをイメージしたデザインで可愛い。

『エレノアってグレイト。』というタイトルの映画ですが、まさにグレイトづくしでした。

2024年に『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』で93歳で映画初主演を果たして「映画初主演の史上最高齢」を記録し、94歳で再び主演を務めたジューン・スキッブ(June Squibb)
グラマラスでクールな女優と知られながらも、このテーマに初監督として挑んだスカーレット・ヨハンソン
そして人生の終盤に差しかかりながらも、新しい友情を育んでいく、物語の主人公エレノア。

彼女たちは皆、「もう遅い」ではなく、「まだこれから」を生きていました。
だから私は、この映画に感動し、励まされたのだと思います。

人生には失うものも、取り返せない過去もあります。
それでも人は、新しい出会いをし、新しい物語を紡いでいくことができる。

私にとって、映画『エレノアってグレイト。』は、自分の中にある喪失感と向き合う気持ちにさせられると同時に、希望を与えてもらえる作品でした。

なお、私がこの映画を観たのはフォーラム仙台にて。
現時点(2026年6月20日)で東北ではフォーラム仙台でしか上映されていませんが、ぜひ多くの方にご覧になっていただけたらなと思う作品です。

✔️エレノアってグレイト。上映劇場一覧:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=eleanor2026


あなたは今
どんな物語を
紡いでいますか?

物語を紡ぐ
Butterfly pea flower tea

青いハーブ「バタフライピー」の癒し

〜 神秘的な美しさを味わって 〜


透き通るような青色のお茶を初めて見た時、「これは本当に自然の色なの?」と驚きました。
その美しい青を生み出しているのが、「バタフライピー」というハーブです。

東南アジアを中心に親しまれている植物で、ハーブティーとして飲まれるほか、スイーツや料理、最近ではバスソルトなどにも活用されています。

Herb tea_Butterfly pea flower tea
バタフライピーのドライハーブ(生活の木で購入)

私自身、このバタフライピーを知ったきっかけは数年前に行われた東南アジアのイベントでした。
そして最近、生活の木仙台藤崎店のワークショップで、改めてその魅力に触れる機会がありました。

今回は、そんなバタフライピーの魅力について、実際に体験した感想も交えながら綴ってみたいと思います。

バタフライピーでつくる、青いバスソルト

今回のワークショップでは、バタフライピーのハーブティーを試飲するだけではなく、バタフライピーを使ったバスソルトづくりも体験しました。

作り方自体はとてもシンプル。
シーソルトに、バタフライピーから抽出した青い液を加え、そこにカレンデュラ(有機マリーゴールド)を少し混ぜ込んでいきます。
さらに別で作ったスイートオレンジエッセンシャルオイル(オレンジ・スイート精油)のアロマスプレーを、入浴前に吹きかけて使うというものでした。

私は最初、「バタフライピーは色づけの役割が大きいのかな?」とも思いましたが、お風呂ほどの湯量を青くするには相当な分量のバタフライピーが必要なので、実際には今回作ったバスソルトではお湯全体が鮮やかな青になるわけではなく、香りも主役はスイートオレンジであるとのこと。

けれど、出来上がったバスソルトを見ているうちに、私はこう思いました。

透き通るような青に、カレンデュラのやさしい黄橙色。
そこに柑橘の香りが重なることで、単なる「入浴剤」というより、「感覚を整えるための小さな作品」のように感じられたのです。

Butterfly pea bath salt
カレンデュラを加えたバタフライピーバスソルト

ハーブには、それぞれ効能があります。
けれど今回改めて感じたのは、ハーブの魅力は「身体への作用」だけではないということ。

色や香りを感じてみる。
バスソルトを手作りする工程を楽しむ。
ゆっくりお湯に溶けていく様子を眺める…

そんな五感を使う時間そのものが、すでに癒しなのかもしれません。
忙しい毎日の中で、ほんの少しでも「美しい」と感じる時間を持つこと。
それは案外、とても大切なことなのだと思います。

バタフライピーとは?

バタフライピー(Butterfly Pea、学名:Clitoria ternatea L.)は、鮮やかな青い花を咲かせるマメ科の植物で、和名は「チョウマメ(蝶豆)」。
この名称は、花びらの形が「蝶(Butterfly)」が羽を広げた姿に似ていること、そして「豆(Pea)」の植物であることに由来しています。
原産国のタイでは「アンチャン」と呼ばれ、昔からお茶や天然の着色料として使われてきました。

Butterfly Pea


特に面白いのが、レモンやビネガー(酢)など酸性のものを加えると、青から紫、そしてピンクへと色が変化する不思議な性質。
その神秘的な変化の様子を見るのは、まるで小さな実験のようでもあり、つい見入ってしまいます。

バタフライピーの嬉しい特徴と魅力

①アントシアニンが豊富

私たちの身体は、日々ストレスや紫外線などによって「酸化」が進むと言われています。
バタフライピーのあの美しい青色の正体は、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」
ブルーベリーなどにも含まれる成分ですが、バタフライピーには特に豊富に含まれていると言われています。

もちろん、これだけで劇的に何かが変わるというものではありませんが、「毎日を健やかに過ごすためのお守り」や「自分をいたわる習慣」の一つとして取り入れるのは素敵だなと感じました。

② デスクワークの合間のリフレッシュに

パソコンやスマートフォンを見る時間が増えた現代。
私自身、ブログを書いたり画像編集をする時間が長いので、意識的に画面から目を離す時間を大切にしています。

温かいハーブティーをゆっくり淹れて、湯気を見つめながら一息つく時間は、酷使した頭や目だけでなく、心にとってもちょっとしたリセットになります。

③ リラックスタイムにぴったり

バタフライピーはカフェインを含まないため、夜にも飲みやすいハーブティーです。
味そのものはとてもやさしく、クセが少ないので、はちみつやフルーツジャムを加えるのもおすすめ。

私はこの程、たまたま手元にあった洋梨ジャムを加えて楽しんでみました。
そこにほんの少し酸味を加えると、色がふわっと紫へ変わる瞬間がとても綺麗で…

ただ飲むだけではなく、「眺める楽しさ」があるお茶だなと思います。

Butterfly pea flower tea
バタフライピーのハーブティー(酸味を加える前の色)
一般的に言われている効能以上に感じたこと

今回、耐熱ガラスのカップを新しく迎えたこともあり、バタフライピーを淹れる時間がさらに特別なものになりました。
透明なガラス越しに見る青色や紫色は、本当に美しくて。

忙しい毎日の中でも、ほんの数分、自分のためにお茶を淹れて、その色を眺める。
それだけで少し気持ちが整うような気がします。

もしかすると、バタフライピーの魅力は、成分や効能だけではなく、「美しいものをゆっくり味わう時間」そのものにあるのかもしれません。

バタフライピーのハーブティー(酸味を加えた後の色)

バタフライピーは、東南アジアを中心に広く親しまれているハーブです。
生産地によって背景や文化は異なりますが、美しい青色や色の変化を楽しめる魅力は共通しています。
ちなみに、酸が強いほどピンク色に近づきます。

もし見かける機会があれば、ぜひ一度、その青色そして色の変化を体験してみてください。
少しだけ、日常が特別に見える時間になるかもしれません。


あなたは
どんな色に
心を動かされますか?

青い花とお茶の夢イメージイラスト
映画 プラダを着た悪魔2 パンフレット 映画 プラダを着た悪魔 サウンドトラックCD

20年後に帰ってきた『プラダを着た悪魔』による気づき

〜 音楽と共に、成長から成熟のストーリーへ 〜


映画『プラダを着た悪魔2(原題:The Devil Wears Prada 2)』、2026年5月1日に日米同時上映が始まってから1ヶ月経ちましたが、ここ仙台でも上映は続いていますし(6月5日現在)、老若男女問わず、かなり人気のようです。

記事にするのが遅くなってしまいましたが、私自身も公開開始から5日後にはTOHOシネマズ仙台へ足を運び、観てきました。

映画 プラダを着た悪魔2 チラシ(1)
映画『プラダを着た悪魔2』チラシ(1)

まずは、2006年に公開された映画『プラダを着た悪魔(原題:The Devil Wears Prada)』について振り返ってみましょう。

ヴォーグ誌の女性編集長のアシスタントを務めた経験を持つ新人作家(2003年時)ローレン・ワイズバーガー(Lauren Weisberger)によるベストセラー小説を原作としたこの映画は世界的に大ヒットしました。

気がつけば20年も前の作品ですから、今作の『プラダを着た悪魔2』を劇場に観に行った人の中にも、当時は生まれていなかったという人もいらっしゃるでしょう。

映画プラダを着た悪魔予告編

私はといえば、主人公アンディの「成長」物語としてこの作品を楽しんでいました。

ファッションに興味のなかった一人の女性が、誰もが憧れるファッション誌の世界に飛び込み、戸惑いながらも努力を重ね、自分の居場所を見つけていく。

華やかな衣装やニューヨークの街並み、テンポの良いストーリー展開に加え、印象的な音楽も相まって、とても爽快感のある映画だったように思います。

何より、アンディが仕事を通し、自分の価値観と向き合いながら前に進んでいくその姿に、多くの人が共感したのだと思いますし、私もその一人でした。

20年後の続編が描いたもの

それから20年の時を経て、続編となる『プラダを着た悪魔2』を観て感じたのは、前作とは少し違う空気でした。

映画 プラダを着た悪魔2 チラシ(2)
映画『プラダを着た悪魔2』チラシ(2)

もちろん、相変わらずおしゃれで華やか、テンポも良く、笑える場面もたくさんあります。
けれど、その奥には前作以上に深みのあるドラマが描かれていました。

登場人物たちは20年という歳月を生きています。
成功した人もいれば、挫折を経験した人もいる。
それぞれが様々な選択を重ねながら人生を歩んできました。

だからこそ今回の物語では、「これから何者になるか」ではなく、「何を選び、何を手放すのか」が描かれているように感じました。

ナイジェルのさりげない優しさ。
ミランダが下したある決断。
そしてアンディエミリーの関係性。

どれも若い頃の勢いや競争だけでは語れない、大人だからこその物語でした。
観終わった後、少し胸が熱くなったのは、そんな「成熟」した人間ドラマがあったからかもしれません。

映画「プラダを着た悪魔」の主要人物と関係性
映画『プラダを着た悪魔』の主要人物と関係性の図解(*筆者作成。映画の内容理解を目的としたイメージ図です)
音楽もまた成熟していた

『プラダを着た悪魔』を語る上で、音楽(BGM)は欠かせない存在です。

前作のサウンドトラックは、映画ファンだけでなく音楽ファンからも高く評価されました。
マドンナ(Madonna)U2ジャミロクワイ(Jamiroquai)アラニス・モリセット(Alanis Morissette)など、豪華アーティストの楽曲が並び、作品の世界観を鮮やかに彩っていました。

そして今回の『プラダを着た悪魔2』でも、その伝統は受け継がれています。
レディー・ガガ(Lady Gaga)デュア・リパ(Dua Lipa)マイリー・サイラス(Miley Cyrus)レイヴェイ(Laufey)など、現代を代表するアーティストたちの楽曲が登場し、華やかなファッション業界の空気感を見事に表現していました。

映画を観終わったあと、「サウンドトラックが欲しい」と思った方も多いのではないでしょうか。
私もその一人です。

しかし私にとって、このシリーズを象徴する音楽は別にもあります。
それは、テオドール・シャピロTheodore Shapiro)によるテーマ曲「プラダを着た悪魔(Suite From The Devil Wears Prada)」です。
前作のサントラにも収録されていたこの曲は、まさに『プラダを着た悪魔』そのもの。

テオドール・シャピロTheodore Shapiro「プラダを着た悪魔(Suite From The Devil Wears Prada)」

洗練されたリズム。
都会的で少しユーモアを感じるメロディ。
かと思えばセンチメンタルなピアノの旋律…

あのメロディが流れた瞬間に、ニューヨークの街並みやランウェイ誌の編集部、そしてアンディミランダらの姿が頭に浮かびます。
作品を象徴するテーマ曲というものは数多くありますが、『プラダを着た悪魔』においては、この曲こそが作品の心臓部なのではないかと感じています。

さらに映画の中では、そのテーマを、テンポを変えたり、楽器を変えたり、アレンジした楽曲が様々な場面で使われています。
だからこそ、気づかないうちに作品全体が一つの音楽でつながっているように感じられるのではないかと思えるのです。

20年前、この曲は私にとって「これから始まる物語」の音楽でした。
新しい世界へ飛び込む高揚感や希望を感じさせてくれる音楽だったように思います。

けれど今回続編で耳にしたときは、少し違って聞こえました。
そこには懐かしさがあり、積み重ねた時間があり、そして再会の喜びがあり、「歩いてきた時間を振り返る音楽」にも聴こえます。

同じ旋律なのに、まるで違う意味を持って響いてくる。
それはきっと、映画の登場人物たちだけでなく、観ている私自身も20年という時間を生きてきたからなのでしょう。

映画プラダを着た悪魔2』予告編

それから、ネタバレになってしまいますが、今作でのサプライズは、レディー・ガガの劇中での登場でした。
(すでに話題なので今更ネタバレにもならないかもしれませんが・・・)

『プラダを着た悪魔』を象徴する音楽といえば、私にとってはテオドール・シャピロによるテーマ曲である一方、ポップミュージックという意味ではマドンナ「ヴォーグ(Vogue)」も外せません。

マドンナ(Madonna)「ヴォーグ(Vogue)」

そして続編では、そのヴォーグがさりげなく流れる場面がある一方で、レディー・ガガが新たな時代の空気をまとって登場します。

2006年に『プラダを着た悪魔』が公開されたまさに同じ年にマドンナの生ライブも体験した私としては、マドンナに代わる存在はいない、と思っています。
けれど、「時代を象徴する女性アーティスト」という意味では、レディー・ガガは現代のポップカルチャーを代表する存在の一人なのだろうと捉えることができるのです。

♪ レディー・ガガ(Lady Gaga)&ドーチー(Doechii)「ランウェイ(RUNWAY)」

20年前の『プラダを着た悪魔』と、2026年の『プラダを着た悪魔2』
その間に流れた時間までもが、音楽によって表現されているように感じました。

20年という時間がくれたもの

前作を観た頃の私は、アンディの成長に心を躍らせていました。
そして今は、ミランダナイジェルたちの決断に心を動かされています。

同じ作品の続編なのに、心に響く場所が変わっていました。
それはきっと、この20年で私自身も少しずつ歳を重ねてきたからなのでしょう。

『プラダを着た悪魔2』は、懐かしいキャラクターたちとの再会を楽しめる映画であると同時に、自分自身の時間の流れを感じさせてくれる作品でもありました。
そして、その変化に気づかせてくれたのは、20年前と変わらずそこにあった音楽だったような気がします。

映画 プラダを着た悪魔2 パンフレット 映画 プラダを着た悪魔 サウンドトラックCD
映画『プラダを着た悪魔2』パンフレットと『プラダを着た悪魔』サウンドトラックCD

ちなみですが、今作『プラダを着た悪魔2』のサウンドトラックのCDはまだ販売されておらず、現時点では配信のみです(なので、上の写真もCDは前作のもの)。
7月に輸入盤CDおよびLP(レコード)の発売は予定されていますが、日本盤については今のところ言及されていません。
また、前作の時はありませんでしたが、今回はテオドール・シャピロによるオリジナル・スコアのアルバムの配信もされています。
そしてこのオリジナル・スコアのアルバムについては、輸入盤・日本盤ともにCDの販売は言及されていません。
このご時世ですので、CDでの販売拡大はされないのかもしれませんが、私個人としては、是非とも日本限定特典付きバージョンとして、サウンドトラックとオリジナル・スコアののCDセット販売をして欲しい気持ちです・・・

追記:なんとこの記事をアップした直後、『プラダを着た悪魔2』サウンドトラックCDの日本盤<特典付き>の販売について発表されました!7/31(金)に発売決定とのことで、予約受付が始まっています。
なお、オリジナル・スコアについては未だ配信のみの模様です。

✔️プラダを着た悪魔2上映劇場一覧:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=devilwearsprada2

✔️プラダを着た悪魔2サウンドトラック情報:https://www.universal-music.co.jp/dwp2soundtrack/


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