映画『Michael/マイケル』パンフレット サントラCDとアルバム『Dangerous』

映画『Michael/マイケル』が問いかける「自由に創造すること」

〜 実の甥ジェファー・ジャクソンが蘇らせたマイケル、その物語から考える 〜


音楽伝記映画の歴史を塗り替えるほどの異例の世界的大ヒットを記録している映画『Michael/マイケル(原題:Michael)』、あなたはもうご覧になりましたか?

私もこの映画はとても楽しみにしていたので、もちろんIMAXで、いつものお気に入りの席を陣取って観てきましたが、結論を一言で言うと、最高でした。

映画『Michael/マイケル』予告編

正直に言いますが、私は、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)は昔から好きだったものの、熱烈なファンというほどではありません。
もちろん代表曲は知っていますし、いくつかアルバムも持っています。
しかし、初めは「マイケルの伝記映画だから絶対に観たい」というより、「どんな作品なのだろう」という興味の方が大きかったように思います。

私は基本的に、観たいと思った映画については、事前にはあえてあまり情報を入れずに観に行きます。
週に1、2回のペースで映画館に足を運ぶ私は、本編が始まる前に流れるこれから上映される映画の予告編と、劇場に並ぶチラシをさっと眺めて、観たい映画を決めます。

映画『Michael/マイケル』も、まずチラシを見て「あのマイケル・ジャクソンを再現するとはすごいチャレンジね。これは観ないと」と思い、その後、映画館では予告編が流れるようになり、当然のことながらますます興味を持ちました。
が、やはりこの時点では詳しいことはチェックせず。
予告編には、マイケルを演じた俳優が「Hi, I am Jaafar Jackson.(こんにちは、ジェファー・ジャクソンです)」と挨拶するバージョンもあり、それを見て、私は「ジャクソンっていう名前だから、マイケルの甥かな。マイケルには兄弟が大勢いるから俳優の甥がいてもおかしくない。その子を採用したのね」くらいに思っていました。

そしていよいよ映画鑑賞当日、まずパンフレットを購入するために売店に立ち寄りました。
ディスプレイには、この映画『Michael/マイケル』のサウンドトラックCDも並んでいて、少し気になりはしたものの、映画を見る前は、正直そこまで欲しいと思うかどうかわかりませんでした。
マイケルの楽曲ならすでに持っているものもありますし、それで十分かもしれないと考えたのです。

そんな私でしたが、映画を観終わった後には、結局サウンドトラックCDを購入していました。
この映画を通して知ったマイケルの物語を、もう一度音楽とともに辿りたい。
そんな気持ちになっていたのです。

映画『Michael/マイケル』パンフレット サントラCDとアルバム『Dangerous』
映画『Michael/マイケル』パンフレット&サンドトラックCDとアルバム『Dangerous』デンジャラス:映画の劇中で描かれた熱狂の「その先」にある時代を象徴するアルバムで、この作品も音楽史に深く名を刻む、凄まじい世界的大ヒットを記録した)

今回のサントラCDを購入する決め手となった理由の一つは、ジャクソン5(The Jackson 5)時代の楽曲でした。
もちろん曲自体は知っていましたが、その歌声の向こうに、幼いマイケルと家族の姿が見えるようになった今、それらの曲は以前とはまったく違う響きを持って聴こえます。

また、CDやレコードは海外の作品でも、日本盤にはライナーノーツ(解説文や歌詞の対訳など入った冊子)が同包されることが多く、ぜひそれも読んでみたいと感じたのです。
今回の解説は音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんによるもので、映画に関わる点から各楽曲についてまでかなり詳しく説明されていて、そこから得られる感動も多かったです。

映画『Michael/マイケル』サウンドトラックCD
映画『Michael/マイケル』サウンドトラックCD(モノクロの冊子が21ページにも及ぶライナーノーツ。最終ページにはジャクソンズマイケルのアルバムの一覧画像も掲載されてました)

そして何より驚いたのは、マイケルを演じたジェファー・ジャクソンJaafar Jeremiah Jacksonでした。
映画を観ている間、私は何度も「本当にマイケルを見ているようだ」と感じていましたが、映画を観終わった後にパンフレットを開くと、なんと彼は元々は俳優を目指していたわけでもなく、今回のオファーを受けて初めて演技をすることになったのだと知り、本当に驚きました。

誰がマイケルを演じるのだろうと思っていた本人が、結果としてその役を引き受けることになる。
しかも相手は、世界中の誰もが知る大スターマイケル・ジャクソン
比較されることも、批判されることも覚悟しなければならない役だったはずです。

それでも彼は、その重責を背負い、見事に演じ切りました。
私は単にダンスや歌の再現度に感動しただけではありません。
マイケルという存在への敬意と覚悟が、スクリーン越しに伝わってきたことに心を動かされたのです。

映画 Michael/マイケル チラシ(1)
映画『Michael/マイケル』チラシ(1)

ところでこの制作には、音楽伝記映画の記憶としてはまだ新しい、ロックバンド・クイーンを描いたボヘミアン・ラプソディでプロデューサーを務めたグレアム・キングGraham King)が携わっています。
『ボヘミアン・ラプソディ』のときは、主演のラミ・マレックの息遣いに加え、フレディ本人の音源、そして声が酷似した外部の歌手の歌声を巧みにパッチワークのように重ね合わせた、いわゆる「3部編成」での緻密な音響エンジニアリングが取られていました。

一方、今回の映画『Michael/マイケル』で取られたアプローチは、それよりもはるかにシンプルで、同時に奇跡的とも言えるものでした。
外部の「そっくりな声」を必要とせず、ただ二人の声だけで構成される「2部編成」。
それが可能だった理由は、主演を務めたジャファー・ジャクソンが、マイケルの実の甥であるという事実にあります。

映画のパフォーマンスシーンで私たちの耳に届いていたのは、マイケル本人のマスター音源(録音)と、ジャファーが撮影現場で実際に喉を枯らして歌った生歌を絶妙にブレンドした音声でした。

声というものは、骨格や声帯の形で決まると言います。
同じジャクソン家のDNAと骨格を受け継ぐジャファーの声は、ふと口ずさむような静かなシーンやアカペラにおいて、加工せずとも驚くほどおじであるマイケルの響きに似ているのです。
さらに、幼少期から身近にあった「ジャクソン・ファミリーのグルーヴやブレスの癖」が、彼の細胞レベルに染み付いていたことも大きかったのでしょう。

映画の中のジャファーは、ただ過去の音源に口の形を合わせる「口パク」をしていたわけではないのです。
マイケルがその声を出す瞬間の、首の筋の立て方、顎の角度、呼吸のタイミングまでを完全に身体にシンクロさせ、実際に歌いながら踊っていました。
だからこそ、私たちはスクリーンの中に「単なる模倣」ではない、本物の魂の実在感を感じ取ることができたのだと思います。

なお、販売されているサウンドトラックアルバムに収められているのは、映画の再現ではなく、100%「マイケル・ジャクソン本人のオリジナル音源」です。
スタジオで完璧に磨き上げられたおなじみの名曲から、彼がかつてツアーのステージで本当に響かせていた当時のライブ音源まで、混じり気のないキング・オブ・ポップの歌声が最高の音質で刻まれています。
映画館で、甥であるジャファーの血の滲むような肉体表現と融合した「新しい体験」としてのマイケルを観たからこそ、このサントラCDから流れる「本物の完全な歌声」を聴いたときの感動は、より深いものになります。

映画 Michael/マイケル チラシ(2外面)
映画『Michael/マイケル』チラシ(2外面)
映画 Michael/マイケル チラシ(2中面)
映画『Michael/マイケル』チラシ(2中面)

そして、映画『Michael/マイケル』にはもう一人、私の心に残った人物がいました。
マイケルの護衛を務めたビル・ブレイ(Bill Bray)です。
映画を観ている間、私は「この人の存在って初めて知ったけど、実はかなり重要な人物では?」と気になっていました。

派手な人物でも、決して目立つ存在でもありません。
けれど、マイケルが苦しい時、迷った時、ビルはいつもその傍にいました。

ジョセフが厳しさによってマイケルを導こうとした人物だとすれば、ビルは静かに見守る人物として描かれていたように思います。
実際のビルについて詳しい記録は多く残っていないようですが、彼が果たしていた役割は決して小さくなかっただろうと、この映画を観ただけでも感じとることができました。

才能は一人で花開くものではありません。
表舞台に立つ人がいる一方で、その人を支える存在もいる。
今回の映画を観ながら、私はそんなことを何度も考えていました。

そしてもう一つ、私の心に響いたものがあります。
それは映画の中でマイケルがノートに書き留めていた言葉です。

Be free to create.
創造するために自由であれ。

マイケルは世界で最も成功したエンターテイナーの一人でした。
けれど、その一方で、幼い頃から家族や世間の期待を背負い続けた人でもありました。

もし彼がもっと自由だったら。
もし彼がもっと自分らしく生きられていたら。

そんなことを考えずにはいられませんでした。
しかし同時に、その苦しみや葛藤があったからこそ生まれた作品もあったのかもしれません。
だから私は、この映画を観終わった後も簡単な答えを出すことができません。
ただ一つ思ったのは、創造することは、自由と深く結びついているということです。

音楽でも。
絵画でも。
文章でも。
そして人生そのものでも。

私たちは本当に自由に創造できているだろうか。
誰かの期待や評価ではなく、自分自身の心の声に耳を傾けながら生きられているだろうか。

映画『Michael/マイケル』は、そんな問いを私の中に残していきました・・・

✔️『Michael/マイケル』上映劇場一覧:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=michael

続編(Michael Part 2)の公開も既に計画されているとのこと。
待ち遠しいですね。


あなたは
自由に創造すること
できていますか?