映画「エジソンズ・ゲーム」未来を照らすのは、誰だ

今の電気の原点を決めることになった「電流戦争」


世界で最も有名な歴史的人物の一人、エジソンの、知られざる史実に基づく映画「エジソンズ・ゲーム」を観てきました。

エジソンズ・ゲーム チラシ(表)

私は小学低学年の頃、エジソンの伝記漫画を、とても面白く感じて、繰り返し読んだことを覚えています。
特に、小学校の先生に質問ばかりして先生を困らせていたとか、自分(人間の体温)で鳥の卵を孵化させようと小屋にこもったりした少年が、のちに電球を発明したという点で、やっぱりちょっとおかしいくらいの普通じゃない人が、すごい発明をするんだな、と子供ながらに感心したものでした。

さて、映画「エジソンズ・ゲーム」について。
原題は「The Current War」、直訳すると「電流戦争」です。

物語の中心となる人物は、実在した以下の4人です。

1880年〜90年代、アメリカにおいて、電力の普及を巡って、壮絶な争いがあったのだそうです。
直流方式を押す<頭脳で世界のトップにたつクリエイタートーマス・エジソンと、交流方式を推進する<戦略で支配を広げるカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスの戦いで、どちらの送電システムが選ばれるかでバトルした「電流戦争」です。

孤高の存在へと自らを追い詰めるエジソンと、周囲の人間の才能を伸ばしながら天下を取ろうとするウェスティングハウス、そして、この二人の対決の鍵を握る天才科学者ニコラ・テスラと、エジソンを支える腹心の秘書サミュエル・インサルたちの、知られざるビジネスバトル。

エジソンズ・ゲーム チラシ(裏)

中学の理科で習った、電流の「直流」と「交流」。懐かしいですね。
現代に生きる私たちが科学の知識として学び、そして、当たり前として使っている電気ですが、実は、およそ130年前のこんな物語が背景にあって、その恩恵を受けることができていたのかと、胸を打たれました。

また、あらゆる歴史の裏ではよくあることですが、プライドと情熱、エゴと野望にかられた天才たちの運命には悲壮感さえ漂い、いろいろ考えさせられる映画でした。

天才発明家  VS カリスマ実業家

直流  VS  交流

頭脳 VS 資金

ところで、エジソンの発明品といえば、撮った映像を観ることができる機械「キネトスコープKinetoscope)」があります。
これによって、映画が誕生しました。
この物語の一番最後、電流戦争を終えた後のエジソンが、映画館の席に腰掛けて、スクリーンを眺めているシーンがあるのですが、それが、「エジソンズ・ゲーム」を観ている私たちの方に視線が向かっているようにも見え、エジソンのダークな部分も描かれた物語でしたが、最後には感謝の念が湧いてきて、感慨深い気持ちになりました。

映画『エジソンズ・ゲーム』公式サイト

ちなみにこの映画、映画館で観て正解だと思いました。
なぜなら、予告編を観てお気づきの通り、電気が一般に普及する前の物語ですので、始終、画面は暗めなのです。
でも、その灯りが際立つ映像が美しかったですし、カメラワークもアーティスティックで幻想的な場面もあったりして見応えがあり、映画館のスクリーンで観ることをオススメしますが、私が行った映画館「フォーラム仙台」での上映は明日(2020年8月13日)まで・・・
ご自宅であれば、少しでも大きめの画面で観られるのが良いかと思います。
携帯画面はもってのほかで、できれば、プロジェクターなんかで観るのがベストかと。

iCODIS RD-813
私も愛用しているプロジェクター。小型で持ち運びにも便利、映像も結構綺麗で、コストパフォーマンス良いと思います。ご参考まで。

最後に、今回も購入したパンフレットについて、簡単にご紹介しますね。

エジソンズ・ゲーム パンフレット(表紙)

エジソンとステラのトリビアと語録のページもあったりして、楽しめます。

エジソンの著名な言葉といえば、
天才とは、1%のひらめきと99%の努力である
がよく知られていますが、
人はお金がいくらあっても幸せにはなれない
とも言ったそうです。
映画でも、お金よりも名誉を得るために必死だった部分がよく描かれていました。

対して、ステラは
あなたの憎しみを電気に変換してしまいなさい。そうすれば世界全体が明るくなる
という言葉を残しています。
また、このパンフレットには記されていませんでしたが、
愛とは与えるものです
とも述べたことで知られています。

電流戦争」という勝負の勝敗には、この辺の気の持ちようもだいぶ影響したのだろうなと感じ、自分自身の日頃の心のあり方についても改めて考えさせられました。


あなたは
電力の歴史
ご存知でしたか?

驚異と感動の実話 奇跡の脳 その2

脳卒中に倒れた脳科学者が語る、左脳と右脳


以前の投稿「驚異と感動の実話 奇跡の脳 その1」では、アメリカの脳科学者ジル・ボルト・テイラー氏による自叙伝の概要を紹介させていただきました。

テイラーさんは、自らが脳卒中という病に倒れ、左脳の機能を欠いたことで知ることができた、右脳の素晴らしさと、左脳も含めた脳機能の神秘についてを、この本で語っています。

今回は、そのテイラーさん自身が語る、左脳と右脳について、興味深いと思った点を、ご紹介いたします。

まず、左脳、右脳のそれぞれのユニークな特徴について、この本に書かれているほんの一部を抜粋し、箇条書きにしますね。

左脳と右脳のユニークな特徴


そして、テイラーさんは、このように述べています。

右脳と左脳はそれぞれユニークな特徴を持っており、ちがったやり方で情報を処理するわけですから、それが別々の価値体系となってあらわれ、結果的に非常に異なる人格が生じるのは、あたりまえかもしれません。

二つの性格のあいだの健全なバランスを生み出すことによって、初めて、変化に対して柔軟に対応できる(右脳)認知能力を持ちながら、同時に道を踏み外さず具体的に行動できるようになります。


与えられた認知能力を100パーセント大切にし、うまく使うことにより、まさに『生命の傑作』とも言えるわたしたちに見合った人生への道が開けます。


決意さえすれば、慈愛に満ちた世界を作つくることが可能なのです。


テイラーさんは、脳卒中に襲われたことで、頑固で傲慢で皮肉屋で、嫉妬深い性格が、傷ついた左脳の自我(エゴ)の中枢に存在することを知り、新しく発見した右脳マインドの純粋さを台無しにしないようにしようと考えたのだそうです。

何事もバランスが大事ですので、脳だって、左脳と右脳、バランス良く機能するに越したことはないでしょうけれども、実際は、どちらかに偏ってしまうのが現実でしょうか・・・?
自分がどっちよりなのか自覚して、うまくバランスをとっていくと、より生きやすくなるのかなと思います。
また、左脳と右脳の機能について知ることは、人を理解する上での助けにもなるかと思います。

なお、左脳と右脳については、臨床美術の記事でも書かせていただいております。ご興味のあるかたには、ご覧になっていただけましたら幸です。

あなたは、左脳派ですか?
それとも、右脳派ですか?

ノンフィクション 彼女が目覚めるその日まで

実話をもとにした感動の映画

邦題は「彼女が目覚めるその日まで
ある日、映画を観に行こうと思った時、このタイトルとアイキャッチ画像の印象は、若い男女のちょっとありがちな感動を誘う恋愛映画かな、でした。
なんとなく、その時はそういう気分ではなかったので、映画は観るつもりないけど、一応、予告編だけでも、と思いチェックしてみましたら、ありがちな恋愛映画でもなさそうで。

それで、原題を確認しましたら「Brain on Fire」なんです。
火の脳とか燃える脳ってことですね。
こっちの方がよっぽどしっくりくると感じました。
実話ということですし、結局、気になって観に行ったところ、非常に印象に残る映画となりました。

というわけで、今回も、脳つながりなのですが、脳に関わる病気と戦った女性と、その家族をはじめたとした彼女を支える人々の、実話にもとづく、衝撃的かつ感動的な映画について、ご紹介したいと思います。

さて、この映画、初めは書籍として出版されたものです。

2009年に「抗NMDA受容体脳炎」という病におかされた、ニューヨーク・ポスト紙の記者であるスザンナ・キャハランが、壮絶な闘病の日々を、医療記録や家族の日誌などから再現し、ノンフィクションとして発表しました。

それが、オスカー女優シャリーズ・セロンのプロデュースによって映画化され、日本では2016年に公開されました。

脳炎:脳内に白血球が入り込んで炎症を起こし、脳が害される病気。寄生虫といった病原体が脳に感染して起こる「感染性脳炎」と、自己免疫によって起こる「自己免疫性(免疫介在性)脳炎」とがあります。

抗NMDA受容体脳炎:自己免疫性脳炎で、若年女性に好発し、発症初期に不安、抑うつ、幻覚妄想などの精神症状を呈することが特徴であり、その後は意識障害、不随意運動(運動異常)、けいれん発作、中枢性低換気(呼吸障害)と重篤な経過をとることを特徴とする脳炎。

古い映画に「エクソシスト」という、悪魔に取り憑かれた少女のホラー映画がありますが、その主人公のモデルになった実在の少年が、実は、スザンナさんがかかった病気の典型的な症例だったと指摘されているのだそうです。
21世紀に入るまでは、精神の病や悪魔憑きと判定され、正しい治療を受けることが難しい病気だったとのこと。

スザンナさんも、発症した時は、医師からも原因不明と見放され、家族や恋人とともに、苦しい日々を送ることになります。

しかし、目覚めぬ娘を信じ続けた両親、絶対にあきらめないと誓った恋人、彼らに突き動かされた医師たちの、献身的な愛によって、希望の道が開かれることとなるのでした。

壮絶な物語なので、こんな現実があるのかと、思い知らされます。
スザンナさんを演じた女優クロエ・グレース・モレッツの迫真の演技も素晴らしく、ゆえに、観ていて辛くもなる一方、完全に引き込まれます。

胸が痛むシーンも多いですが、これは愛の物語です。
両親は離婚しそれぞれの生活があるにも関わらず、自分たちの娘のために力をあわせる姿、頼りない医師がいる一方で、患者のために必死になってくれる医師がいること、彼女が変わり果てても、耐え忍ぶ恋人や友人達。
そんなあたたかい愛に、感動します。

ちなみに、映画のエンディングではスザンナさん本人の写真も出てきます。
ご覧になるのであれば、是非、最後の最後まで♪

あなたも愛の映画で
癒されてみませんか?

脳に棲(す)む魔物 【本】

スザンナさんが執筆した原作です。
記者というだけあって、描写が細かいです。
ページ数も結構あるので、本が苦手な人にはきついかもしれませんが、
とても興味深い内容なので、本好きにはあっという間かもしれません。

驚異と感動の実話 奇跡の脳 その1

〜脳科学者の脳が壊れたとき〜


臨床美術を初体験した時の感動 その2」で、左脳と右脳について少し書きました。
今回は、その左脳と右脳に関わるお話として、私が心からお勧めしたいと思う、1冊の文庫をご紹介させていただきます。

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)、アメリカの脳科学者、ジル・ボルト・テイラー氏による、自叙伝です。

原題は「My Stroke of Insight」(マイ・ストローク・オブ・インサイト)で、この本の訳者である竹内薫氏による説明が、前半ページに記載されています。

「本書の原題は「My Stroke of Insight」であり、その元の意味は、『脳卒中』(stroke)と『一撃で生じた』(stroke of 〜)の掛け詞(ことば)になっている。insight(洞察)は、これまでになかった新たな発見、ひらめき、見抜く力のこと。
つまり、脳卒中によってテイラー博士は、劇的に、あることに気づいたのである。」

ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた女性、テイラーさんが、37歳の時に脳卒中に襲われてから回復するまで、そして、この体験によって自身が得ることのできた発見についてを語られた、大変興味深い本です。

「わたしは30代の半ばにあり、仕事も私生活も順風満帆でした。ところが一瞬にして、バラ色の人生と約束された未来は、泡のように消えてしまったのです。
1996年の12月10日の朝、目が覚めたとき、わたしは自分自身が脳障害になったことを発見しました。
脳卒中を起こしていたのです。
4時間という短い間に、自分の心が、感覚を通して入ってくるあらゆる刺激を処理する能力を完全に失ってしまうのを見つめていました。珍しいタイプの出血が、わたしを完全に無力にし、歩いたり、話したり、読んだり書いたり、そして、人生のどんな局面をも思い出すことができなくなってしまったのです。」

第1章でこのように述べられており、続く第2章から4章において、テイラーさんが、その朝、一人暮らしのアパートで目が覚めた時から、脳卒中を起こし、自ら助けを求めるまでの過程を詳細に書かれています。
それが、凄くて!
初めて読んだときは体がゾワゾワしました。
脳卒中、ですよ?
頭の中で大出血が起こっているという時の状況を、実況中継さながら綴られており、一気に読み進めました。
テイラーさんはその時の気持ちをこう述べています。

「ああ、なんてスゴイことなの!」
「そうよ、これまでなんにんのかがくしゃが、脳の機能とそれがうしなわれていくさまを、内がわから研究したことがあるっていうの?」
「おぼえていてね、体験してることをぜんぶ、どうか、おぼえていてね! こののうそっちゅうで、認知力がこわれていくことで、まったくあたらしい発見ができるように−−−」

(注:本文をそのまま記載しています。平仮名が多いのは、テイラーさんの意識が脳卒中によって犯され、認知力が失われていく過程で思い描かれたことなので、あえてそのように表現されているものです)

神経科学者魂とでも言うべきものを持ち合わせていた人だったから、起きた奇跡と幸運だったのかもしれません。

また、彼女は、「若い頃から、
物事が分類や区分けの面でどのように異なるか(=左脳)ということよりも、
物事がどのように直感的に関連しているのか(=右脳)ということのほうに興味を抱いていました。わたしの心は、
言葉で考える(=左脳)よりも
絵で考える(=右脳)ほうが好きなのです。」
と述べており、もしかしたら、そのおかげで、現代のプッシュ式の電話を視覚的パターンで押すことを記憶していたため、助けを呼ぶことに成功したのかもしれない、昔のダイヤル式電話だったら生き残れただろうか、と分析している点について、私は関心を持ちました。
左脳と右脳の機能の違い、が、人生に、何か、影響を及ぼす可能性・・・

この本についても、ちょっと一回では書ききれそうにありません。
テイラーさんが、この本の最後で、

「この本は、わたしが脳卒中で人間の脳の美しさと回復力を発見した物語です。
それは、左脳が衰え、ふたたび回復するのを体験するのがどんな感じか、一人の神経科学者の眼を通して見た、個人的な記録でもあります。
この本が、健康な脳と病気の脳の働きについて新しい発見(insight)を提供することを心から望んでいます。
この本は一般の読者向けに書いたものですが、できれば、脳の外傷から回復中の方や、そういった患者さんを看護する方々に、この本のことを教えてあげてください。」

と、おっしゃってますし、私も、テイラーさんのお気持ちに賛同しますので、多くの方が、この本を手に取ってくださったら良いなと思っています。

・・・とは言っても、活字が苦手なかたも多いと思いますので、せめてもの参考までに、また次回、テイラーさんの語る、左脳と右脳について、私が個人的に思う興味深いポイントについてを、お伝えさせていただきたいと思います。

この続きは、こちらです↓
驚異と感動の実話 奇跡の脳 その2


あなたは脳の奇跡
信じますか?

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫)