映画館で感動体験♪映画音楽の巨匠ハンス・ジマーのライブ✖️ドキュメンタリー

〜特別料金にも納得!映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』〜


TOHOシネマズ仙台にて、映画館ではたったの1週間のみの(2025年7月11日(金)〜17日(木))限定公開である映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』(原題『Hans Zimmer & Friends: Diamond in the Desert』)を観てきました。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer

それはまさに、期待をはるかに超える感動体験でした。
決して大袈裟に言っているわけではなく、映画、音楽、アート全般を愛する私にとっては、本当に価値ある映画だと心底感じ、ぜひ記録しておきたいと思ったので、今こうして綴っています。

なおこの映画は、残念ながらパンフレットが制作されていません。
そんなこともあり、私なりにしっかり記録しておきたく、以下から少々詳しめの内容(ネタバレ)になるかと思います。
私自身は初見の映画は、事前にはあまり余計な情報を入れないで観て楽しみたいタイプなので、申し添えておきますが、映画をまだご覧になっていない方は、その点ご留意くださいね。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』のチラシ
(画像をクリックするとPDF画面が開き、拡大できます)

さて、この映画、一般 2,700円という特別料金。
TOHOシネマズでIMAXでもDOLBY ATMOSでもないのにこの料金で、いかなる割引も適用不可とのこと。

それで、私としては、過日のハンス・ジマー 初来日公演「Hans Zimmer Live in Japan(2025年5月、横浜および名古屋にて開催)に行けなかったけれども、これで大好きな映画音楽をライブ映像として映画館の大画面と大音量で楽しめるのであれば良いだろう、特別料金なのもそれなりの理由があるのだろうし…くらいの気持ちで映画館へ足を運んだのでした。

が、しかし、これは単なるコンサートフィルムではありませんでした。

ハンス・ジマー(Hans Zimmer)という稀代の作曲家が、いかにしてあの壮大な音楽を生み出しているのかに迫る、深遠なドキュメンタリー映画と言えます。
彼の音楽に対する情熱、創作のプロセス、そして彼を支える素晴らしいアーティストたちとの揺るぎない絆が、スクリーンからひしひしと伝わってくるのです。

まさしく、『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』というタイトル通り。
ハンス・ジマーと彼の素晴らしいフレンズたちが織りなすサウンドとストーリーは、まるで砂漠の中に突如現れきらめくダイヤモンドのように、私の心に深く響き渡りました。
(ちなみに、デザートは食べるデザート(dessert)ではなく、砂漠のデザート(desert)ですよ。笑)

次の動画はこの映画の予告編です。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』予告編

先ほど、単なるコンサートフィルムではないと述べましたが、ライブ会場ではなくとも、スクリーンによって観客が十分に楽しめるような映画として、構成をとても考えられた作品だと感じました。

映画は、タイトルを象徴した砂漠の砂丘で歌うロワール・コトラー(Loire Cotler)によって幕が切られます。
そう、砂漠といえば、ハンス・ジマーが生んだ名曲を代表する『DUNE/デューン 砂の惑星』(原題『Dune』)を想像するのに難くないでしょう。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星(Part 1)』予告編


また、演奏される音楽の間には、ハンス・ジマーと彼に関わる映画監督、俳優、ミュージシャンといったアーティスト達との対談が組み込まれていて、ハンス・ジマーが創り出してきた楽曲のバックグラウンドを知ることができます。

DUNE/デューン 砂の惑星』の監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴ(Denis Villeneuve)、主演のティモシー・シャラメ(Timothée Hal Chalamet)ゼンデイヤ(Zendaya Maree Stoermer Coleman)との対談もあり、それぞれが非常に興味深かったです。
個人的には、今年観た映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で、ティモシー・シャラメが伝説のシンガーであるボブ・ディランとして素晴らしい演技を披露したのも、この対談を観て妙に頷けました。

そして、コンサートツアーの会場からこの映画用に使われたのは、アラブ首長国連邦ドバイコカ・コーラ・アリーナでのライブ風景。
アラビアの豪華なスポットの一つだからということもあるでしょうけれど、やはり砂漠に面することも理由にあるのではと。

オープニングに続いての音楽と映像は、ドバイコカ・コーラ・アリーナで演奏された『インセプション』(原題『Inception』)の曲でした。

映画『インセプション』予告編


今や鬼才として映画界に君臨する方をこんな風に言うのも恐れ多いことですが、私はこの作品で、監督を務めたクリストファー・ノーラン(Sir Christopher Nolan)の名をしっかりと覚え意識するようになったと記憶してます。
もちろんクリストファー・ノーランの作品はそれ以前のものも観たし、どれも面白いのですが、私には『インセプション』がとりわけ衝撃的だったのです。
その世界観が大好きで、DVDでも繰り返し観ているので、この音楽が映画館の大音量で楽しめて大興奮しました。

さてその次は、『ワンダーウーマン 1984』(原題『Wonder Woman 1984』)です。
強く美しくかっこいい女性に憧れる私は、当然この『ワンダーウーマン』シリーズも大好きなので、興奮冷めやらず。

映画『ワンダーウーマン 1984』予告編


ちなみに、『ワンダーウーマン』は2017年に1作目が公開されていて、『ワンダーウーマン 1984』はシリーズの2作目です。
いずれも監督はパティ・ジェンキンスですが、ハンス・ジマーが音楽を担当したのは『ワンダーウーマン 1984』の方。
シリーズものの映画は、監督や俳優が変われば、作風にも違いが現れますが、音楽も然りで。
観る人の好みによっても変わってくるわけですが、その辺の違いも比べてみるのも、映画の面白さですよね。

次は『マン・オブ・スティール』(原題『Man of Steel』)の曲でした。
スーパーマン』シリーズの一つですが、私は今のところ、これが一番好き♡
音楽がハンス・ジマーであるところに、前述したクリストファー・ノーランが製作・原案を担当し、好きな俳優の一人であるヘンリー・カヴィルが主人公のクラーク/スーパーマンを演じたこと、そして実話をもとにした名作で私も感銘を受けた『アンタッチャブル』(原題:The Untouchables)で主演を務めたケビン・コスナーがクラークの父親を演じた点で私には特に響いているのだろうと思います。

映画『マン・オブ・スティール』予告編


ところで、このブログにはハンス・ジマーが請け負った映画がどんなものだったかを把握していただけるように、その映画予告をYouTubeより転載させていただいてますが、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』では単純にそれらの映像が映し出されるというものではありません。

先に述べたように、ドバイコカ・コーラ・アリーナでのライブ風景が軸とはなっていますが、曲間には別撮りした対談の様子があったり、ロケ撮影による演奏風景などと共に構成されています。
しかし、ここに挙げている動画のような、それぞれの映画のシーンと感動が、ハンス・ジマーとその素晴らしい仲間たちによる壮大なパフォーマンス興味深いトークよって新たな感動として呼び起こされるのです。

マン・オブ・スティール』演奏直前にも対談が組み込まれていたのですが、そこでハンス・ジマーが「スーパーマンに相応しいのは見栄えのいいグランドピアノなんかじゃない。ヒーローである一方で、孤独で農場での生活を営む彼のイメージには素朴なアップライトピアノがいい。」といったことを話し、その後場面が切り替わり、コンサート会場のステージ上で中央に置かれたアンティークなアップライトピアノによる演奏が始まったシーンは印象的でした。

この次は、『グラディエーター』(原題『Gladiator』)より。
古代ローマを舞台にした歴史アクション映画で、アカデミー賞では作品賞など5部門を受賞し、ゴールデングローブ賞では最優秀作品賞を受賞した名作で、ハンス・ジマーが担当した音楽も、ゴールデングローブ賞では最優秀作曲賞を受賞し、アカデミー賞ではノミネートを果たしています。

映画『グラディエーター』予告編


これも砂漠(モロッコ)でロケが行われている作品でしたが、『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』でも、『グラディエーター』のパートは砂漠でのロケ撮影によるものでした。

今までハンス・ジマーの音楽は幾度と耳にしても、彼自身が演奏したり語る姿はほとんど目にしたことがなかったので知りませんでしたが、この映画を観て、ハンス・ジマーは瞳がとってもキレイな人なんだと気がつきまして。
特に、この『グラディエーター』の演奏風景では、目の輝き度合いが半端なくて、本当に音楽を愛してる人なんだろうな、こんな少年みたいで情熱的な人だから、こんな素晴らしい音楽を生み出すのだろうな、と感じました。

そして次の、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(原題『Pirates of the Caribbean』)では、あの誰もが聞き覚えある曲の部分で、コンサート会場の盛り上がりも最高潮に。
こちらは、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』の公式ホームページにもアップされている動画をシェアさせていただきますね。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』より「パイレーツ・オブ・カリビアン」演奏シーン

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer


で、この高揚感ある盛り上がりの後は『ダークナイト』(原題『The Dark Knight』)ときまして。
これは、光と闇の音のコントラストとでも言えるでしょうか…

映画『ダークナイト』予告編


パイレーツ・オブ・カリビアン』に打って変わって漂う、深く暗い緊張感。
あの重厚な低音と、心臓を叩かれるかのような不穏なリズムは、聴く者の心をざわつかせ、まるでゴッサムシティの暗闇に迷い込んだかのような感覚に陥れられます。
ライブで迫ってくるその鋭利で研ぎ澄まされた音の塊が、単純な盛り上がりとは違う、ゾクゾクするような興奮と、静かに心を揺さぶられる美しさを伴うものでした。

そんなダークな楽曲に続くのは『X-MEN:ダーク・フェニックス』(原題『Dark Phoenix』)。

映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』予告編

マーベル・コミックスの『X-MEN』もシリーズ化されている映画ですが、実は私、『X-MEN』といえばウルヴァリン、そしてそれを演じるヒュー・ジャックマンと思っていたため、彼がが出ていないこの『X-MEN:ダーク・フェニックス』は未見でして。

でもこの『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』でのハンス・ジマーらのパフォーマンスを見たことをきっかけにこの予告編を観たら、もう気になってしょうがない。
こんな理由からでも、この映画も絶対観たい!って気持ちにさせるミュージシャンの存在って、本当にすごい。

そしてこの後も、『ダンケルク』(原題『Dunkirk』)とダークな感じが続きます。

映画『ダンケルク』予告編


ダンケルク』は、第二次世界大戦のダンケルク大撤退を描いた映画で、これまでハンス・ジマーとタッグを組んで数々の名作を産んできたクリストファー・ノーランにとっては初の実話に基づいた映画。
第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、美術賞、撮影賞、編集賞、音響編集賞、録音賞、作曲賞の8部門にノミネートされ、編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞した名作です。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』では、クリストファー・ノーランの姿がなかなか出てこなかったのでいつ出てくるんだろうと思っていましたが、クライマックスに差し掛かる後半で、彼らの含蓄ある対談シーンがありました。
名監督クリストファー・ノーランと名音楽家のハンス・ジマーがタッグを組んだ映画から、彼らはまさに、単なる仕事上のパートナーシップを超えて深い信頼と友情で結ばれている、そんなことを感じつつありましたが、この『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』を鑑賞して、それを確信。

そして次も、彼らがタッグして創られた素晴らしい作品の代表作の一つ『インターステラー』(原題『Interstellar』)の楽曲。

映画『インターステラー』予告編


神秘に満ちた宇宙を描いた『インターステラー』の曲を、世界最大の360度プロジェクションドームとしての機能を持つアル・ワスル・プラザ・ドームエキスポ・シティ・ドバイ内)にて演奏収録された映像は、私たちが未知の、美しく壮大な世界観が表現されていて、もううっとり。

こちらも、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』の公式ホームページにライブ風景がアップされていますので、シェアさせていただきます。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』より「インターステラー」演奏シーン

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer

そんな神秘に包まれた後に続いたのは『ライオン・キング』(原題『The Lion King』)。
終盤にこれを持ってきたのは、1994年に、音楽部門でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞受賞を受賞した、ハンス・ジマーにとっても非常に輝かしい作品の一つだからゆえでしょう。

映画『ライオン・キング(1994)』予告編


なんと、この作品が公開されたのは、30年以上も前になるんですね。
実は、私の手元には、このサウンドトラックCDがあるのですが、今は亡き父が購入していたものを、勝手に奪った代物でして。
女優ゼンデイヤとの対談で、ハンス・ジマーが「6才の頃に父を亡くした自分が、娘のためにこの映画への参画を決めた」ということを語っていたシーンでは、私の映画や音楽好きは父の影響もあるので、思いもがけず、涙してしまいました。

このCDもずっと聴いていませんでしたが、思い出して、いそいそとiTunesにアップロードしています。


こんな私の個人的な思い出はどうでもいいでしょうが(私のブログなのでお許しくださいませ)、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』での『ライオン・キング』ライブ風景は、また凄かったです。
会場中に太鼓隊が現れて、ハンス・ジマーら演奏者とともにパフォーマンスを繰り広げるのです。
あの場に自分もいることができたら、どんなに楽しかったか…
コンサートに行った方を羨む気持ちもありますが、大画面と大音量の映画館でこの映画を観たことで、その臨場感を味わうことができたので、本当に良かったです。

さてここまで、相当長くなってしまいましたので、この他にも演奏、対談があるのですが、自分の想いも含めて記述しているとキリがないので、この辺で。
いずれにせよ、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』は歴史に残る作品となるだろうなと感じています。

TOHOシネマズ仙台では、通常会場で特別料金2,700円での上映でしたが、そこに追加料金払ってでもいいからDOLBY ATMOS(+200円)で観たかった!と思える素晴らしい映画でした。

ハンス・ジマーファンはもちろんのこと、映画音楽に興味がある方、ライブパフォーマンスの素晴らしさを体験したい方、そしてアートが持つ力に触れたいすべての人におすすめしたい作品です。


あなたが得た
感動体験って
どんなものですか?

パリの美術館巡り3 元駅舎のオルセー美術館

〜建築物の美しさにも酔いしれるパリ3大美術館の一つ〜


海外女一人旅、地元の仙台空港から出国し台湾経由でたどり着いたフランス、パリ美術館巡りの初日、印象派の巨匠クロード・モネの「睡蓮」シリーズが展示されていることで有名なオランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)の次に向かうのは、オルセー美術館(Musée d’Orsay)です。

セーヌ川の右岸に位置するオランジュリー美術館に対し、オルセー美術館はセーヌ川の左岸に位置します。
オランジュリー美術館の正面玄関前に広がるコンコルド広場(Place de la Concorde)から対岸へと架けられた、コンコルド橋(Pont de la Concorde)を渡って向かうこととしました。

コンコルド橋
Pont de la Concorde

住所:Pont de la Concorde, 75007 Paris, France


コンコルド橋から眺めるエッフェル塔も風情あり。


コンコルド橋を渡った先に幽玄と佇み、まるでギリシャ神殿を思わせる建物は、ブルボン宮殿(Assemblée nationale – Palais Bourbon)


ブルボン宮殿は、フランス国民議会(Assemblée nationale)の議事堂として使用されている歴史的な建物です。


1722年にルイ14世の孫娘であるルイーズ・フランソワーズ・ド・ブルボンによって建設され、フランス革命後、1795年にフランス政府に接収されて、1798年から国民議会の議事堂として使用されるようになりました。

ブルボン宮殿
Assemblée nationale – Palais Bourbon

住所:126 Rue de l’Université, 75007 Paris, France
Webサイト:https://www.assemblee-nationale.fr/


コンコルド橋を渡り、ブルボン宮殿に向かって左折した先に見えてくるのが、私にとってこの日2番目のメイン目的地であるオルセー美術館(Musée d’Orsay)


パリの3大美術館の一つとされているオルセー美術館は、建物自体がアートの一部です。
その素晴らしい建築物のシンボルである大時計が見えてきて、胸が高鳴ります。


オルセー美術館の建物が、元々1900年のパリ万博のために建てられた駅舎(旧オルセー駅/Gare du Quai d’Orsay)だったことは、この美術館を語る上では外せない重要な話。

かつての駅の時代に旅人に正確な時間を知らせるために機能していたこの時計塔は、現在では、美術館の歴史と現代の文化的役割を象徴しています。
クラシックなデザインは時代を超えた優美さを保ち、その存在はまるで、時間の流れとともに変化してきたオルセー美術館のストーリーを語っているかのよう。


と、建物の外観を眺めるだけでもうっとりし夢見心地な気分になりますが、一旦現実に戻って、入場を待つ人の列に並びます。

時間が限られている旅行で、パリの主要美術館を訪れるなら、チケットの事前購入は必須です。
時間が読めなかったことと、少し割高になるので入館時間の予約まではしていなかったのですが、ミュージアムパスを利用したことで、比較的すんなり入場できました。


今回の旅で重宝したパリミュージアムパスについてはこちら↓に記述しています。


さて、入館セキュリティーを通過し、さらに次の扉へと進みます。


扉を抜けて、目の前に広がる景色に圧倒されました。
まさに駅舎であったことを窺い知ることができるその風貌。


旧オルセー駅は、1900年5月に運行を開始しましたが、1939年に長距離列車の運行を停止しました。
これは、ホームの長さが新しく登場した列車の長大化には不足していたためなのだそう。
以降、オルセー駅は主にパリ近郊の列車用の駅として使用されましたが、次第にその役割も縮小し、駅としての機能を徐々に失っていきました。

その後、駅は様々な用途に利用されましたが、次第に放置されるようになり、1970年代には取り壊しの計画もあったとのこと。
しかし、歴史的建造物としての価値が見直され、最終的に美術館として生まれ変わることが決定されました。
そして、1986年にオルセー美術館として正式に開館したのです。

かつてのプラットフォームだったメインホールは、その広がりと空間の高さが際立ち、ガラス屋根からの自然光が内部に満ちています。
鉄骨のフレームやガラス張りの屋根が印象的な建物のデザインは、この時代特有のアール・ヌーヴォーの影響によるもの。
線路が敷かれていた場所が現在では彫刻ギャラリーとなり、その両脇のプラットフォームであった場所は絵画などの展示スペースとなっています。


このメインホールにも、駅の名残を思わせる大時計が輝いています。
建物の外壁の時計も内部にあるこちらの時計も、修繕や整備はされてきましたが、旧オルセー駅当時からのものなのだそうです。


素晴らしい装飾が施された時計に釘付けになる私の頭の中に「おーおーきなのっぽの古時計〜♪」の歌がよぎりました。
しかし、この歌詞にある100年休まず動いてきた古時計は最後には動かなくなってしまうわけですが、オルセー美術館のシンボルであるこれらの大時計はゆうに100年を超え、今もなお時を刻み続けているのです。

金色に輝く時計の圧倒的な存在感と美しさに見惚れつつ、嬉しいことも悲しいことも、いろいろ見てきたんだろうなぁ、と感慨にふけってしまいました。

この歴史的建造物として価値あるオルセー美術館の建物自体は6階建ですが、作品が展示されているスペースは地上階(0階)、中階(2階)、最上階(5階)の3フロアで構成されています。
建物の両端にはエスカレーターが設置されていて、好きな所どこからでも見て回れるようになっています。

私はまず最上階まで行ってから降りてゆく形で美術作品を見ることにしました。

エスカレーターを上り切った所の通路は静かなものだったのですが・・・


通路を出た先にあるカフェのなんと賑やかなこと!

最上階(5階)にあるカフェ カンパナ(Café Campana)は外壁に設置された大時計の場所に位置していることもあり、私が通りかかった時間がお昼時ということもあったのかも分かりませんが、とても人気のようです。


このカフェの先に続くのが、マネモネルノワールシスレースーラなどなどの、主に印象派の作品の展示。
相変わらず人は多い中ですが、素晴らしい作品の数々に感動のため息が出ます。


さぁ、このまま進んで辿り着いたこの建物の逆サイド。
こちら側にはカフェはなく、大時計だけを堪能できる素敵スポットがあります。

とはいえ、現代のSNS社会において、そこは要するにまさに”映える”場所。
ここはここで、人が絶えない・・・


それでも私もなんとか少しでも絵になる写真を撮りたい!

人のいない静かな情景を撮影することが願望でしたが、この状況では致し方なく、これで我慢。


人混みが苦手な私は、相変わらず増え続ける人の波に押され、中階(2階)へと移動しました。

さてこちらは、オルセー美術館の建築様式にも影響を与えたアール・ヌーヴォーをテーマとした展示室。


先ほどまでの状況から一転し、怖くなるほど人がいない静かな場所でしたが、おかげで素晴らしい展示品を静寂の中で堪能することができました。

と、私はここで喧騒に逃れたことは嬉しかったものの、反面、ここはこの美術館の歴史的な建築要素が見られる場所であるのにこの静けさ、やはりほとんどの人は流行りだとかSNSによる情報に流されやすいということなのだろうか・・・となんだか寂しくも感じたりした瞬間でもありました。

…が、そんなことを想いつつもこの中階(2階)のテラスに出れば、光がさんさんと降り注ぐ魅惑的な空間に、大勢の人々の姿に圧倒されつつも、厳かな情景に感動を覚えます。


パリ3大美術館の一つオルセー美術館は、その壮大な建築と豊富なコレクションにより、パリを訪れる芸術愛好家にとって必見のスポットであることに違いありません。

歴史と芸術が融合したこの素晴らしい空間で、19世紀から20世紀の美術の変遷を感じながら、優雅な時間を過ごすことができるものと思います。

オルセー美術館
Musée d’Orsay

住所:1Esplanade Valéry Giscard d’Estaing, 75007 Paris, France
Webサイト:https://www.musee-orsay.fr/fr


あなたは
建築物の役目の返還について
考えたことがありますか?

映画「ミッドナイト・イン・パリ」に登場する偉大なアーティスト

名作映画で知る歴史に名を残した芸術家たち


前回は、大大大好きな映画「ミッドナイト・イン・パリMidnight in Paris)」について簡単にご紹介させていただきました。

この映画は、主人公であるハリウッドの売れっ子脚本家ギルが、2010年の夏、婚約者と訪れた憧れの街パリで、現代から黄金時代(ゴールデンエイジ)の1920年代へとタイムスリップし、当時のアーティスト達と夢のような時間を過ごして…という言わば大人のためのおとぎ話です。

尊敬する歴史上の偉大なアーティストに会えることができたら。。。

そんなことを夢見るのは、この映画の主人公ギルに限ったことではなく、私もそうですし、このブログを読んでくださっているあなたもそうかもしれませんね。


真夜中のパリ、午前0時を知らせる鐘の音とともに現れたクラシックカーに乗り込み、過去へとタイムスリップしてしまったギルでしたが、さまよいこんだのは芸術や文化が開花し、活気にあふれた1920年代のパリの社交場。
続々と登場する当時のアーティスト。
初めは困惑するも、脚本家から本格的な小説家への転身を願っていたギルにとって、敬愛してやまないアーティスト達との夢のような時間なわけで。
興奮しつつその幸せに素直に身を任せる彼の姿には共感できます。


さて、映画「ミッドナイト・イン・パリ」にはいかなる歴史的アーティストが登場するのか。
その人物達を登場順にご紹介します。
(なお、ポートレイトは全てWikipediaから転載させていただいています。写真をクリックするとWikipediaのページにリンクしますので、ご活用くださいませ)


コール・ポーター(Cole Porter、1891-1964)

アメリカの作曲家・作詞家で、1910年代後半から1920年代後半にかけてパリに在住していました。彼の曲は数多くのミュージカルや映画で使われ、ジャズのスタンダードとしても愛されています。
映画では、主人公ギルがタイムスリップしたばかりの場面で訪れたパーティー会場で、コール・ポーターがピアノを弾きながら名曲「Let’s Do it, Let’s Fall in Love」披露しています。

Cole Porter – Let’s Do It.(by renato reyes

ゼルダ・フィッツジェラルド(Zelda Fitzgerald、1900-1948)

アメリカアラバマ州生まれで、ハイスクールを卒業後、スコット・フィッツジェラルドと1920年に結婚。彼の作品に影響を与えたことで知られています。彼女自身も小説やエッセイを書いており、独自の創作活動を行い、自由奔放ながらも壮絶な人生を送りました。
映画では、ゼルダが困惑した表情のギルに「迷子みたいね」と声をかけます。英語で話しかけられたギルは同じアメリカ人かと安心し、自己紹介し作家であることを伝えたところで、夫のスコット・フィッツジェラルドに紹介されます。

F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald、1896-1940)

アメリカ文学の象徴的な作家で、ゼルダと結婚した同年の1920年に処女長編「楽園のこちら側」が全米ベストセラーになったことや、1974年にロバート・レッドフォード主演、2013年にはレオナルド・ディカプリオが主演で映画化された「華麗なるギャツビー」などの作品で知られています。1924年から1930年まで、ゼルダと娘とともにフランスに移住しました。
映画では、過去にタイムスリップしてしまったことにまだ気がつけていないギルが、F・スコット・フィッツジェラルドから「このパーティーのホストはジャンコ・クトーだ」と聞き、「冗談がきつい」と返すのですが、フィッツジェラルド夫妻はギルがつまらながっていると勘違いし、他の場所へと連れ出します。


ちなみに、ジャン・コクトーJean Cocteau、1889-1963)は映画監督、劇作家、詩人、小説家、画家として、フランスの多才な芸術家でした。
この映画ではここで名前が出てくるのみですが、彼が20世紀の芸術界で偉大な存在であるがゆえ、ギルが冗談かと思うのも頷けます。

ジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker、1906-1975)

アメリカ出身のダンサー、歌手、女優で、パリのミュージックホール「フォリー・ベルジュール」の看板スターとなり、フランスで人気を博した黒人アーティスト。
映画では、ギルがフィッツジェラルド夫妻らとともに訪れたバーで、ジョセフィン・ベイカーによるルンバ曲「La Conga Blicoti」のパフォーマンスを前に、初め驚きつつも次第に表情が和み、過去の時代に来てしまったということを徐々に受け入れていくさまが見て取れます。

Josephine Baker – La Conga Blicoti(by Roman Nep /Scene from “Midnight in Paris”)


アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway、1899-1961)

20世紀のアメリカ文学の巨星とも言われるほどの小説家で、1954年にノーベル文学賞を受賞しました。
1921年から1928年までパリに住み、文学的なサークルで多くの作家や芸術家と交流し、その体験が彼の創作に大きな影響を与えたとのことです。代表作としては「老人と海」「日はまた昇る」「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」など。
映画では、ジョセフィン・ベイカーが歌い踊るバーを出た後、フィッツジェラルド夫妻はギルをレストラン「ポリドール」に連れて行き、ヘミングウェイに紹介します。ギルは彼に大ファンだと言い、自分の作品を評価してもらうことを熱望します。


ファン・ベルモンテ(Juan Belmonte、1892−1962)

スペイン生まれの闘牛士で、20世紀初頭のスペインで最も偉大な闘牛士の一人とされています。闘牛技術の革新者であり、伝統的な闘牛のスタイルを大きく変えたことで有名です。ヘミングウェイとは親友で、「日はまた昇る」に実名で登場しています。
映画では、フィッツジェラルド夫妻ヘミングウェイとパリで楽しむ様子が描かれていますが、実際はパリに住んでいたことはなかったようです(この映画のように、旅行など短期滞在していた可能性はあるかもですね!)。

ガートルード・スタイン(Gertrude Stein1874-1946)

アメリカの作家であり詩人で、パリの文学界に影響を与えた女性。パリでサロンを主宰し、多くの芸術家や作家と交流した、近代芸術の擁護者的存在でした。ヘミングウェイにも文章指導をしており「言葉の料理人」と言われた人物です。
映画では、ギルから小説の評価を頼まれたヘミングウェイが作家はライバル同士だからとガートルード・スタインを紹介します。

パブロ・ピカソ(Pablo Picasso、1881-1973)

スペイン出身の画家でフランスに定住しました。フランスの画家ジョルジュ・ブラックらとキュビスムを創始し、その後もシュルレアリスム、抽象表現主義など、さまざまな芸術運動に影響を与えました。代表作には「ゲルニカ」や「アヴィニョンの娘たち」「海辺を走る二人の女」があります。
映画では、ヘミングウェイがギルを連れて行ったガートルード・スタインのサロンで登場します。ギルは美術的な視点からもインスピレーションを受けることになります。

ジューナ・バーンズ(Djuna Barnes、1892-1982)

アメリカの作家で、モダニズム文学の一翼を担った女性。彼女の代表作「夜の森」の出版にあたっては詩人のT.S.エリオットが多大な尽力をしたといいます。
映画では、遊園地で開かれたパーティーでギルとジューナ・バーンズが一緒にダンスしている様子が描かれています。


サルバドール・ダリ(Salvador Dalí、1904-1989)

スペインのシュルレアリスムを代表する画家で映画制作者。常識を破壊し新しいアートを創造した芸術家で、「偏執狂的批判的方法(ダブルイメージ、二重影像)」という技法でだまし絵的幻想画を描きました。パリでの滞在では多彩なアーティスト達と活動を共にしています。
映画では、ギルが3度目に訪れた1920年代のパリのレストランで、サルバドール・ダリに声をかけられ、ダリの作品のモチーフの一つでもあるサイについてやたらと語られるのが笑えます。

ルイス・ブニュエル(Luis Buñuel、1900-1983)

スペイン出身の映画監督で、シュルレアリスム運動の一員として知られています。ダリと共同でパリで制作した映画「アンダルシアの犬(Un Chien Andalou)」で注目されるようになりました。
映画では、ダリとギルが話しているところににルイス・ブニュエルと写真家のマン・レイが連れ立って現れます。脚本家であるギルが彼らとの出会いを喜ぶのは当然ですね。

マン・レイ(Man Ray、1890-1976)

アメリカの写真家で、画家や彫刻家としても活動している、シュルレアリストを代表する芸術家。フランスを代表するダダイストであるマルセル・デュシャンに感化されパリに渡り、ニューヨーク・ダダとヨーロッパのダダを同時並行的に進めました。
映画では、サルバドール・ダリルイス・ブニュエルそしてマン・レイという奇抜なアーティスト達を前に思わずギルが「自分は未来から来た」と打ち明けるのですが、マン・レイは「理にかなっている。君は2つの世界の住人。何ら不思議はない。」と疑問を抱かずで、ギルは「あなたはシュルレアリストだから」と納得しつつ身の上を話します。

T.S.エリオット(T.S. Eliot、1888-1965)

アメリカ生まれのイギリスの詩人で、モダニズム運動の代表的な人物の一人。ハーバード大学進学後、パリに留学しました。詩集「荒地」などが有名で、詩の中で精緻な言葉遊びを展開し、1948年にノーベル文学賞を受賞しました。また、子供向けの詩集である「キャッツ – ポッサムおじさんの猫とつき合う法」はミュージカル「キャッツ」の原作となっています。
映画では、ギルが4度目の過去へのトリップを図った際に現れた車に搭乗していたのがT.S.エリオットで、ギルはそこでエリオットの処女詩集「プルーフロックその他の観察」は自分の経典だと本人に伝えます。


アンリ・マティス(Henri Matisse、1869-1954)

フランスの画家で、印象派とフォーヴィズムの要素を取り入れた画風で知られています。色彩感覚と抽象的なアプローチが際立っており「色彩の魔術師」と言われました。
映画では、ガートルード・スタインのサロンを再訪したギルが、マティスの新作をスタインが500フランで買い取ろうとしているところに遭遇。現在500フランはおよそ82,000円。それは普通に考えれば一般人にとって大金ですが、マティスの本物の作品を現代で買うには安すぎなのでギルは自分も欲しいと言い放ちます。


さてここまでが、1920年代の場面でギルが出会ったアーティスト達ですが、物語ではさらなる展開があり、時代をさらに遡り、ギルは1890年代のパリまで旅することになります。
そこで出会うのが以下のアーティスト。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec、1864-1901)

フランスの画家で、ポスターアートの先駆者として知られ、モンマルトルのナイトライフやキャバレーのシーンを描きました。
映画では、ギルが1920年代のパリで出会った美しい女性アドリアナとともに、さらに過去のベル・エポック(良き時代、美しき時代)と言われる1890年代へとトリップし、訪れたモンマルトルのダンスホール「ムーラン・ルージュ」で2人はロートレックに出会い、声をかけます。
ちなみに、アドリアナはこの映画のヒロインの一人で架空の人物です。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックムーラン・ルージュの舞踏会Bal au Moulin Rouge 1890年)」

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック ポスター「ムーラン・ルージュのラ・グリュMoulin Rouge – La Goulue 1891年)」

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックフィンセント・ファン・ゴッホVincent van Gogh 1887年)」

(引用元:Wikipedia


ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin、1848-1903)

フランスの後期印象派で象徴主義の画家。南太平洋での滞在中に独自のスタイルを開発しました。彼の作品にはタヒチの風景やポリネシアの文化が描かれています。
映画では、ギルとアドリアナがロートレックと話している席にゴーギャンドガが共に現れます。ゴーギャンは、オートクチュールを職業にしているというアドリアナに、ドガの友人が新作バレエの衣装係を探していることを教えます。

ポール・ゴーギャンブルターニュの羊飼いLa bergère bretonne 1886年)」

ポール・ゴーギャン「タヒチの女(浜辺にて)(Femmes de Tahiti 1891年)」

ゴッホが描いた「ポール・ゴーギャン(赤いベレー帽の男)portrait of Paul Gauguin (Man in a Red Beret) 1888年)」

(引用元:Wikipedia

エドガー・ドガ(Edgar Degas、1834-1917)

フランスの印象派の画家で、特にバレエやダンサーをテーマにした作品で知られています。彼の描写は動きや瞬間を捉えたもので、美術史に重要な存在とされており、彫刻作品も秀逸です。
映画では、このベル・エポック期こそ黄金時代だと言うアドリアナに対し、ゴーギャンとともに「今よりルネサンス期こそが良い時代だ」と主張します。

エドガー・ドガ踊りの花形(エトワール、あるいは舞台の踊り子とも呼ばれる)(L’étoile de la danse (L’étoile ou danseuse sur scène) 1878年頃)」

エドガー・ドガ14歳の小さな踊り子(La Petite Danseuse de Quatorze Ans 1881年)」

エドガー・ドガオペラ座のオーケストラ(L’Orchestre de l’Opéra 1870年)」

(引用元:Wikipedia


以上が、映画「ミッドナイト・イン・パリ」で主人公のギル・ペンダーが出会ってきた歴史に名を残す偉大なアーティストたちです。

ここでは書ききれませんが、映画に登場したアーティスト達について、現実の世界でも実際に語られている姿が、本作内でも外見や言動からよく表現されていて、本当に面白い。
名優揃いの配役とはいえ、いかに俳優さんたちが努力をされたかということがうかがい知れます。
(是非このページに記載した実在したアーティスト達のポートレイトと、映画で演じる俳優さんたちの姿を見比べてみてください!!)


なお、この映画のDVDやチラシ等にはゴッホの名作「星月夜」が使われていますが、ゴッホは映画には登場しません。
パリを愛したアーティストとしてゴッホを外すわけにはいきませんよね。
しかしながら、フィンセント・ファン・ゴッホVincent van Goghがこの現実世界に生きたのは1853年から1890年で、「星月夜」が描かれたのは1889年、フランスのサン・レミ・ド・プロヴァンスにあるサン・ポール・ド・モゾル修道院病院で精神科治療を受けていたときのこと。
というわけで、この映画がフィクションであるものの、ギルが訪れた時代設定を考えるとゴッホ自身を登場させるのは難しかったからゆえと思いますが、名画だけでも登場させるというのが、また素敵です。

ゴッホ「星月夜」(引用元:Wikipedia


さて、ここまでだいぶネタバレ的なことを書いてしまいましたが、ウディ・アレンの脚本はさすがで、BGMは始終ゆったりしているものの、展開からは目を離せず、中身の濃いあっという間な鑑賞時間に充実感を覚えます。


というわけで、登場人物だけでまた長くなってしまいましたので、映画「ミッドナイト・イン・パリ」で主人公ギルが訪れたパリの名所については次回に。


あなたが尊敬する
歴史上の人物は
誰ですか?

アート好きにはたまらないラブコメ「ミッドナイト・イン・パリ」

2012年アカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞 最優秀脚本賞W受賞の名作


本日取り上げますのは映画「ミッドナイト・イン・パリ(原題:Midnight in Paris)」。
映画界の巨匠ウディ・アレンが脚本と監督を務め、2011年に全編パリで撮影されました。
2012年のアカデミー賞ゴールデングローブ賞でどちらも最優秀脚本賞を受賞し、その他の数々の賞にもノミネートし受賞しています。

もう、私も大大大好きな映画です!
2012年に日本で公開された当初は映画館で観て、期待していた以上の面白さに感動し、DVDも即買いしました。

映画「ミッドナイト・イン・パリ」のパフレットとDVD


ブログを綴り始めた頃はこの映画について必ず書こうと思っていたのですが、大大大好きだと言いながらも、そのうちすっかり失念。
しかし、初めてのフランス旅を目前に、今こそ綴っておかなければと思い出しました。

ミッドナイト・イン・パリ」のDVDのジャケットおよびチラシのイメージを見て、アート好きならもちろん、そうでなくとも多くの人がアートに関わる映画なのかな?と察しがつくかと思います。

そう、このイメージに使われているのは、天才画家ゴッホによって描かれた名画「星月夜」。
アーティスティックな映画であることを予感できますよね。

映画「ミッドナイト・イン・パリ」のチラシ(表)
(画像をクリックするとPDF画面が開き、拡大できます)

映画「ミッドナイト・イン・パリ」のチラシ(裏)

更には、この映画のキャッチフレーズに

天才ウディ・アレンが真夜中のパリに魔法をかけた!
誰しもをめくるめくおとぎ話の世界へトリップさせる至福のロマンティック・コメディ

とあるように、ラブコメ要素あり、SFファンタジー要素もありで、見応え抜群です。

映画『ミッドナイト・イン・パリ』予告編(by 映画配給会社ロングライド


この映画の内容について私流に一文でまとめると、
あまたのアーティストたちが愛し、誰もが憧れてやまない魅惑の都市パリへ、お嬢様育ちの婚約者との婚前旅行にやってきた、ハリウッドの売れっ子脚本家から本格的な小説家への転身を夢見る主人公ギル・ペンダー(オーウェル・ウィルソン)が、パリの黄金時代へとタイムスリップし、当時のアーティストたちと出会い夢のような時間を過ごす中で、自分の内面に気がつき、言い換えれば、現実と向き合い本当の自分に戻り、そして最終的に自分にとって本当に必要な人に巡り会う物語、
という感じでしょうか。

私事ですが、この映画を観た前年は2011年、東日本大震災で私自身も大きなダメージを受けた年です。
震災後という点で初めて映画館で観たのがこの「ミッドナイト・イン・パリ」でした。

過去のブログにも書きましたが、私は震災のおかげで、命のありがたさを感じ、それまで忘れかけていたアートへの想いが復活したので、そのタイミングでこの素晴らしい映画を観ることができたのには因縁のようなものを感じましたし、映画館で映画を観ることができる幸せを噛みしめ、大好きなアートに関連する物語で楽しく現実逃避しつつも、命ある現実に感謝する気持ちになれたこの映画は私の宝物の一つです。

さて話がそれましたが、映画「ミッドナイト・イン・パリ」はオープニングがまた良いのです。
シドニー・ベシェのジャズ名曲「Si Tu Vois Ma Mère」をBGMに、現代の何気ないパリの日常の映像が映し出されます。
何気ないといっても、そこはパリ。
美しい名所の数々をおよそ3分の曲分いっぱい堪能することができます。

この部分では全く俳優さんたちは出てきませんし、なんの装飾もされていないパリの日常風景の記録動画という感じですので、何も知らないでこれだけを見ると、まさかロマンティック・コメディ映画の一部とは気がつかないかもしれません。
けど、そんなオープニングで始まる映画だからこそ、むしろこのシンプルさが、パリというそれだけで素晴らしい空間で、素敵な物語が展開されるのかもと胸が高鳴るのです。

なんと!その、映画「ミッドナイト・イン・パリ」のオープニングだけを切り取られた動画がYouTubeで観ることができますので、こちらも是非♪

Si Tu Vois Ma Mère – Midnight in Paris (2011)(by Alex Wang


ちなみに、このゆったりした曲を奏でるシドニー・ベシェ(Sidney Bechet、1897年5月14日 – 1959年5月14日)は、アメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のクラリネットおよびソプラノ・サックスのジャズ・ミュージシャンで、フランスへは1949年に移住したそうです。

曲名の「Si Tu Vois Ma Mère」はフランス語で、「もしもあなたが私の母を見たら」という意味で、1930年代にフランスの歌手Lucienne Delyleによって歌われ、その後も多くのアーティストによってカバーされてきました。

この曲が映画「ミッドナイト・イン・パリ」にピッタリなのも納得ですね。
他にも、古き良き時代の名曲によって心地よく物語が展開されます。

以上、ここまで簡単にまとめましたが、フランス・パリへの一人旅を控えている私なので、本当は、この映画に登場する歴史上のアーティストや舞台になった観光スポットも述べたかったのです。
しかしながら、それでは長くなってしまいそうですので、それらについてはまたの機会に投稿しようと思います。


あなたの好きな
アカデミー賞受賞作といえば
なんですか?

画家としての一面を持つフジコ・ヘミング

奇跡のピアニストが描く優しい絵画


前回、世界的ピアニストであるフジコ・ヘミング氏のコンサートについて記述したのですが、彼女の画家としての側面を持っていることについては、ファンなら知ることであれど、一般的にはあまり知られていないことのようですね。

そこで、今回は改めて、フジコ・ヘミングさんの画家としての一面についてを投稿しようと思います。

さてこちら、前回アップした写真ですが、ご存知ない方にはピンとこないようだったので、再掲します。


先月(2023年6月)仙台で開催された、フジコ・ヘミング ピアノソロ コンサートの会場で購入した物品ですが、これらCDやDVDの挿絵も含めイラストは全てフジコ・ヘミングさんによるものなのです。

フジコ・ヘミングさんのご両親は彼女が幼い頃に離婚していますが、ピアニストであった母親(日本人)と、画家で建築家だった父親(スウェーデン人)の元に生まれ、正に受け継がれた才能は類い稀なもの。
幼少期からピアノの技術を研鑽するとともに、絵を描くのが好きで、これまでたくさん描きためてこられ、それらの絵画作品がCDなどのジャケットにも使われているのです。
デザインや装丁もご本人のこだわりによることも多いそうです。

フジコ・ヘミング ピアノコンサートで購入した絵はがきのセット

絵本の挿絵も手がけられています。
素晴らしい作家さんとのコラボレーションによる作品は、子どもにはもちろん大人の心潤す逸品としても本当に素敵です。

フジコ・ヘミング氏の挿絵による絵本「ねことワルツを」と「青い玉」
フジコ・ヘミングさんの挿絵による絵本「ねことワルツを」と「青い玉」

ところで、描かれている絵には猫が多いことにお気づきでしょうか?
これもファンなら知ることですが、フジコ・ヘミングさんは大の猫好きで、たくさんの保護猫と暮らしています。
収入を得るのは、猫ちゃんたちのためでもあるそうです。
この2冊の絵本も猫との暮らしがテーマになっています。猫好きさんへのプレゼントとしても喜ばれそう。

ねことワルツを」(出版:福音館書店)の文を手がけるのは詩人石津ちひろさん。

韻を踏んだ軽快な表現の文章が楽しく、中には早口言葉のようなものもあり、子どもと一緒に楽しみながら読めることうけあいです。

このタイトルにもなっている「ねことワルツを」は、フジコさんの幼い頃の体験に基づいていて、お父さんと踊る別れのワルツを楽しくも儚い詩として綴られていて、グッときます。

青い玉」(出版:文化出版局)の文は沓沢小波(クツザワサナミ)さんによるもので、一人暮らしのおばあさんと一匹の猫の幻想的な物語です。

日英対訳版として発行されていて、海外の方にも読まれており、この収益金は、フジコさん沓沢さんのお二人によって、動物愛護団体に寄付されるそうです。


私、先日のコンサートでこの「青い玉」を購入して初めて知ったのですが、沓沢小波さんは、ここ宮城県ご出身の元幼稚園教諭でいらして、柴田町にて工芸家としてご活動されてきたそうです。

共に猫好きというご縁らしいですが、古布工芸家としてフジコ・ヘミングさんの舞台衣装も手がけてもいらっしゃるそうで、単なるいちファンながら、お二人の相性が良いであろうことは想像に難くなく、そのお二人による絵本が素敵なのも、頷けます。

それにしても、自分の地元である宮城県にこんな素晴らしい方がいらしたなんて。
知るのが遅かったのは悔やまれますが、同じ県内に住む誇れる方の存在を知り、とても嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

それでは、最後にフジコ・ヘミングさんの公式HP及びYouTubeチャンネルより、心が安らぐ動画を。
飾らないフジコさんの短い語りと、素晴らしい演奏がギュッと詰まった価値ある5分間です。
曲はショパンの『エオリアンハープ』。猫にも癒されます。

2020年6月、コロナ禍の中、ご自宅からフジコ・ヘミングさんが送られたメッセージ

この動画は、東京のご自宅で撮影されたそうですが、パリにもお住まいがあるフジコさん。
そうそうたる画家やピアニストが過ごしたパリにご自身も住めるのがとても幸せなのだそうです。
そして今年、いよいよ私もようやくパリ・フランスへ旅ができます。
私の場合、滞在期間はほんの数日だけど、航空券は取得済み、コロナ禍があけたらまずはフランスへ行くんだという願いの現実も目前です。
パリのフジコさんのお気に入りの場所に行ってみたいな、など、もはや現実可能な想像をするだけでもハッピーです。
私の幸せ感度を上げてくれるアーティストの皆さんの存在に感謝します。




あなたが
優しさで満たされる
絵本はなんですか?


感動のフジコ・ヘミング ピアノソロコンサート

1年延期の待ちわびた公演に涙


昨年(2022年)3月16日に起きた大地震の影響により公演延期となってしまった、そのおよそ2ヶ月半後の6月5日にここ仙台で開催されるはずだったフジコ・ヘミング ピアノソロコンサート

チケットを購入し心から楽しみにしていた私は、延期とわかった当初は、ただでさえ残念でならない気持ちでしたし、丸々1年ほど延期ということで、フジコ・ヘミング氏の年齢等考えると1年後に間違いなく開催されるだろうかと少し不安もよぎってしまいました。

”延期公演決定”と明記された「フジコ・ヘミング ピアノソロコンサート」の看板


でしたが、先日、無事開催されまして。
1年待ちわびたこの時。
もう、心が震えてたまりませんでした。

2023年6月11日(日)、会場は東京エレクトロンホール宮城、15時の開演予定時間を数分過ぎ、コンサートホールがライトダウンされ、いよいよかと胸が高鳴るところ、ステージの裾からまず見えたのは手押し車。
そう、フジコ・ヘミング氏は御年90歳の現役ピアニスト・・・
独特の風貌は健在ながら、その姿を見ただけで、よくぞはるばる仙台までいらしてくださいましたと涙が出てきてしまいました。

ピアノの前の椅子に腰掛け、指を軽く揉んだ後、始まった演奏の一曲目はシューベルト即効曲変ト長調
優しく叙情的な音色にたちまち引き込まれ。
会場の所々から、鼻をすする音も聞こえ、目頭を押さえる姿もあり、涙ながらに感動している人が私以外にもたくさんいるのだということも感じました。

第1部で9曲目、一言だけマイクで話す時もはさみましたが、およそ40分間ピアノを弾き続け、20分の休憩後の第2部では、予定されていた5曲に加え1曲プラスの6曲目。
そのフィナーレはもちろんフジコ・ヘミングの名を知らしめしたリストラ・カンパネラ

その演奏が終わった時には当然のごとく多くの拍手がありました。
一般的にはそこで一旦奏者が幕に戻った後、再度ステージ上に現れてされるアンコール演奏ですが、彼女の弱ってしまった足の都合上でしょう、そのままマイクを持って「たくさんの拍手をありがとうございます。それではアンコールにベートーベン月光を弾きます」と述べられ、今度こそ本当に最後の演奏。
静かで美しい旋律に包まれ、感動もクライマックス。


私はフジコ・ヘミング氏のコンサートは、過去にも1度だけ行ったことがあるのですが、それはもう10年以上も前のことでした。
彼女は遅咲きのピアニスト、その時でも既に70代、ピアノを愛でるように柔らかに奏でる中にも時に情熱から生み出される力強さもあり、その表現は素晴らしくて大感動しましたが、さらに現在は90歳。
あの頃に比べてミスタッチもあり、力強さに欠けるのも当然のことだろうと予測はしていた通りではありましたが、今回演奏された全部で16曲目、どれもが究極のテクニックを必要とする名曲尽くしで、それらを弾き切った体力と精神力に驚くとともに、『私の前に姿を見せてくれて、演奏を聴かせてくれて、素晴らしい時間を本当にありがとうございます』と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

アンコール演奏も終わって、拍手喝采。
ここは日本で特にシャイな人種で知られる東北地方仙台なので会場の全員がそうではない中でも、もちろんスタンディングオベーションを送る人は大勢。
手押し車を使ってステージを去るフジコ・ヘミング氏が立ち止まって笑顔で手を振る姿に、私も思わず「かわいい!ありがとう!」とつぶやき、手を振りました。

ちなみに、私は一人で行ったのですが、私の両隣もそれぞれ一人の女性客で。
どちらの方も瞳に涙を浮かべ、「良かったですね」「素晴らしかったですね」と私に声をかけてくださって、見知らぬ人同士で互いに感動を分かち合うというひと時も持てて、本当に豊かな時間でした。
今思い返すだけでも泣けてくるほどに・・・

しかも、混雑や人の列に並ぶようなことは苦手なこともあり、基本的にコンサートグッズというものはほとんど買わない私なのですが、この時ばかりはそれを苦とは思わず、1万円以上購入してしまいました(笑)


フジコ・ヘミング氏については、衣装を自分で作ることでも有名ですが、幼少の頃からピアノを弾くこととともに絵を描くのも好きだったという彼女のその唯一無二のアートセンスも素晴らしくて、本当に大好きです。


私はと言えば、このところしばらく仕事に追われていて体調も崩しがち、よく眠れない日も続いており、このコンサート翌日も朝8時前からの通常勤務に18時半から会議と長丁場になる予定の日だったのですが、おかげで力をもらえ、『自分が生きてたからこそこんなに素晴らしい体験ができるのだ、やっぱり私は生かされているんだな、感謝して生きなければ。明日からも頑張ろう』と思えることができ、穏やかな気持ちで眠りにつけ、朝は目覚めよく、良い週のスタートを切ることができました。

モノにはあらず(グッズ買ったけど)、演奏をするコトそのいっときだけで人に感動と力を与えるアーティストって本当にすごい。
その存在に感謝、自分の命があることにも感謝。
ありがとうが溢れる気持ちに、心から感謝です。


関連記事:画家としての一面を持つフジコ・ヘミング


あなたは
最近どんなことに
感動しましたか?

アトリエ虹色たまごさんによる臨床美術作品展

東北電力グリーンプラザにて開催


絵を描く、オブジェを作るといった創作活動そのものを楽しむプロセスを通して、認知症の予防や改善、心の解放や意欲の向上、なんらかの問題をかかえた子供たちの回復を目指して開発された臨床美術
日本の医師、美術家、ファミリーケア・アドバイザーがチームとなって始まった臨床美術の研究と実践は1996年がスタートとその歴史はまだ浅いですが、現在では日本全国(わずかながら海外でも)に点在する臨床美術士さんが人々の幸せ、あたたかい世界の広がりを願って活躍されています。

臨床美術士の資格を持つ私自身はというと、ここしばらくはコロナや環境の変化などで臨床美術の活動が停滞していますが、先日久々に研修会に参加し、「スタンピングで描く藤の花」というプログラムを実践してきました。

春の風に揺れる藤の花のイメージが、およそ1時間程度で立派な絵画作品として完成しました。
ブドウにも見えなくもないかもしれませんが、それもご愛嬌で(笑)、いつも斬新な発想による技法に感心する臨床美術のプログラムですが、今回も身の回りの材料を用いてスタンピングで描くというプロセスによって、具象と抽象の合間と言えるような面白い作品として仕上がり、自己肯定感もアップするとともに、心身リフレッシュできました。

ちょうど間も無く、ここ仙台で、臨床美術の作品展が開催されるとのことですので、お知らせさせていただきますね。


一般社団法人アトリエ虹色たまごさん主催による
第5回作品展 児童~成人、高齢者、障がい者の臨床美術

個々の内なる力を信じて”をコンセプトに、14の参加施設、団体の賛同のもと開催。

児童館、視覚障がい者、生涯学習の一環から、地域活動、臨床美術士の方々他による120点~140点の作品が堂々展示されるそうです。

<日程>
2023年5月23日(火)~5月28日(日)
10:00~18:00 最終日は16:00

<場所>
東北電力グリーンプラザ アクアホール
(仙台市青葉区一番町3丁目7−1)

<入場料>
無料

展示見学の合間に楽しめるミニコンサートも企画されているとのこと。
《ミニコンサート(40分間)》
 5月27日(土)14時~ 竪琴
 5月28日(日)14時~ 琴と三味線

また、チラシには記載されていませんが、ワークショップも実施されるそうです。
《臨床美術ワークショップ》
 5月24日(水)・26日(木) 13:00~17:00
 *料金:無料 *持ち物:不要

ユニークなアイディアに富んだ臨床美術のアートプログラムは、アート制作が好きな方はもちろん、アートに苦手意識を持っている方でも、きっと楽しめると思いますので、興味のある方はお気軽に参加してみていただきたいです♪

なお、東北電力グリーンプラザは下図のとおりです。


あなたは
どんなアート制作を
楽しんだことがありますか?

挿絵画家としての佐藤忠良

宮城県美術館で開催中の「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展も終盤につき


丸一ヶ月ぶりのブログ更新なので、まずは私事ですが近況報告。
2023年も明けたと思ったらもう3月後半に差し掛かりました。
2022年度も終盤を迎え、私が勤める保育園も卒園と入園(保育園は卒園式後も卒園児が通います)、新たな職員体制、そして法人における予算決めやら役員の入れ替わりなどで、とーってもバタバタしております。
現在の職につくまでは毎年必ず行っていた地元の東日本大震災追悼も、昨年同様、今年も仕事のため行けずで(涙)。
各SNSもログアウト状態にし、仕事に集中しておりました。
貴重な自分の時間はというと、我が家をリノベーション購入したことで確定申告して節税せねばと必要書類の収集やら申告手続きなどで時間を割かねばならず。

ブログ更新されてない、SNSログインもされてない、で、気にかけていただいた皆さま、ご心配おかけし申し訳ありませんでした。
ちゃんと生きてます。

さて、前回記録したのは、ここ宮城県の出身で、日本を代表する彫刻家の一人である佐藤忠良氏の展覧会についてでした。

後期展覧も行くと述べていたのですが、あっという間に終了日(2023年3月26日)近付いてきてしまい、行けるかどうかの瀬戸際に・・・
皆さまはもう行かれましたでしょうか?

本当は後期展覧には3月上旬には行こうと思っていて、そうしたら改めて記事にしようと思っていたのですが、未だ行けておりませんので取り急ぎ、インスグラムへのポストをアーカイブしておくとともに、佐藤忠良氏の絵本挿絵画家としての側面と、同氏が挿し絵された、知る人ぞ知るかもしれないおすすめ文庫をご紹介したいと思います。

佐藤忠良氏の彫刻作品は、アート好きでも特別そうでなくとも、宮城県民の方は何気に目にしてご存知と思うのですが、しかし、その彫刻家さんが、日本人ならほとんどの方が知る絵本の名作「おおきなかぶ」の挿絵をされていたということについては、まだまだ知らない方もいらっしゃるようなので、ここでしっかり言及しておきたいと思いました。

インスタへもポストした通り「おおきなかぶ 」の挿絵原画は、今回の特別展で公開されていますので、是非多くの方々に、素晴らしい佐藤忠良氏の彫刻作品とともに楽しんでいただけたらなと思います。

その想いを込めまして、次にポストしたのがこちら。

小さな町の風景」は、主に児童図書の出版を手がける「偕成社」による文庫で、佐藤忠良氏が挿絵されている一冊なのですが、今回の美術展では取り上げられていませんし、杉みきこ氏による美しい文章の一部は多くの方が知るであろうものの、この文庫本に佐藤忠良氏が挿絵されていることはあまり知られていないだろうと思い、インスタグラムへポストさせていただきました。

それでは最後に、杉みきこ氏による美しい文章の一部を振り返ってみましょう。

「小さな町の風景」ー 第1章「坂のある風景」より
『あの坂をのぼれば』

—あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、朝から歩いていた。草いきれがむっとたちこめる山道である。
顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。

中略

—あの坂をのぼれば、海が見える。
のぼりきるまで、あと数歩。なかばかけだすようにして、少年はその頂に立つ。
しかし、見下ろすゆくては、またも波のように、くだってのぼって、そのさきの見えない、長い長い山道だった。

少年は、がくがくする足をふみしめて、もういちど気力を奮い起こす。

中略

—あの坂をのぼれば、海が見える。
少年はもういちど、力をこめてつぶやく。
しかし、そうでなくともよかった。
いまはたとえ、このあと三つの坂、四つの坂をこえることになろうとも、かならず海に行き着くことができる、行きついてみせる。
白い小さな羽根をてのひらにしっかりとくるんで、ゆっくりと坂をのぼってゆく少年の耳に —あるいは心の奥にか— かすかなしおざいのひびきが聞こえはじめていた。

「小さな町の風景」(偕成社出版/杉みき子著)p.18-21より


「おおきなかぶ」で内田莉莎子さんが表現された「うんとこしょ、どっこいしょ」のリズムの心地よさ同様に、反復される「あの坂をのぼれば、海が見える」の響き、記憶のある方は少なくないと思います。

私は、佐藤忠良さんを深掘りしている時に、杉みきこさんのこの文庫本の存在を知り、さらに懐かしくも美しい文章に触れ、喜びを感じました。
イメージをきっかけに素敵なテキストに出会うという感覚が私は好きです。
アートや文学を楽しむメソッドのひとつとしてもオススメです。


あなたは
絵本についての
記憶がありますか?

「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展

宮城県美術館にて待望の開催


先日訪れた今年初の宮城県美術館


待ちわびていた「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展が開催中です。
”待ちわびていた”ことにはいつもより特別な理由があります。
なぜなら、この特別展は、本来は昨年(2022年)の春に開催されるはずだったから。
昨年3月16日に起きた震度6強の福島県沖地震によって、宮城県での開催は延期となり、ようやく今年(2023年)2月4日(土)より開催されています。

それにしてもね。
昨年の秋に宮城県美術館で開催された「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の混み具合とは打って変わっての静けさ・・・

アート好きとしては、人けのないギャラリーでゆったりじっくりと作品を見ることができるのは嬉しいことではあるのですが、日本を代表する彫刻家の一人であり、宮城県出身の誇れるアーティストの一人である佐藤忠良氏の特別展、宮城県民の皆さんには是非見て欲しいなぁとしみじみ思います。

宮城県美術館生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展 チラシ(表)

例えば前述の激混みだった「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の場合、その話題性に飛びついて見に行った人が多かったようで、”フェルメールと聞いて見に行ったけどよく知らない作家の作品が多くて微妙だった”という声も聞きました。
アートに深い興味がない方の意見かと思いますが、そんな人にこそ、現在開催中の「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展を是非見てみて欲しい!

(「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」はもちろん私も見に行ったし、実際大変興味深かったけれども、あまりの人気ぶりで、レアなものに価値を感じてしまう私は、これはブログには綴らなくてもいいかなという気持ちになり、記録せずでした。。。)

宮城県美術館生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展 チラシ(裏)

佐藤忠良氏の彫刻作品は馴染みがあるからこそ、見れば見るほど彫刻の面白さを感じやすいのではないかと思うし、絵本挿絵画家としての佐藤忠良氏については有名なことだけど、意外と知らない人もいらっしゃるかと思うので、この機会に誰もが知る絵本の名作「おおきなかぶ」の原画の美しさに触れてほしい。

おおきなかぶ」と言えば、私は今回初めてそのレリーフを拝見し、感銘を受けました。
”レリーフ”とは浮き彫り細工のことで、絵本「おおきなかぶ」の名場面がブロンズ彫刻として制作されたもので、普段は佐川美術館に所蔵されている貴重な作品、大変見応えがありました。


特別展のチケットで、宮城県美術館併設の佐藤忠良記念館も観覧できるので、普段はそちらまで周らない方もこれを機にハシゴして、佐藤忠良の世界に浸るのはいかがでしょう。
記念館の方には動物の彫刻などもあり、親子で楽しめるギャラリーであることも知る人ぞ知るポイントだったりします。

また、美術館屋外にも佐藤忠良氏の作品はいくつかあるので、少しずつ春の訪れも感じる今日この頃、ゆっくりと散歩してみるのも良きです。
屋外だと、彫刻作品と、自然の光によって映し出される影とのコントラストを楽しむことができるのでオススメです♪

最後に、以下の写真は宮城県美術館の敷地内屋外で私もお気に入りな場所の一つ。
佐藤忠良氏と切磋琢磨の友であったと言われる舟越保武氏「りんごを持つ少年」が佇む一角です。


奥深い彫刻、美術の世界に浸る時間。
私にとっては、静かに心豊かになれるひととき。
混沌とした現世でも、生かしていただき、平和な時間を持つことができることに、深く、感謝します。


あなたは
カタチの面白さに
触れたことがありますか?


宇都宮 アート旅 Day 2

50周年記念展開催中「栃木県立美術館」それから日本遺産「大谷石文化」


今年訪れた宇都宮1日目「宇都宮 アート旅 Day 1(25周年記念展開催中「宇都宮美術館」と自然に癒される「うつのみや文化の森)」に続き、2日目は、お会いしたご夫妻のご提案で、栃木県立美術館大谷石資料館に行ってきました。

毎年お会いするご夫妻と、宇都宮駅東口で待ち合わせ

故人へのご焼香を済ませ、まず向かったのは栃木県立美術館

栃木県立美術館正面

栃木県立美術館はガラス張りで幾何学的な構成によるところが印象深い建物です。
美術館て、その建物自体がアートなので、そこを楽しむのも面白いですよね。

栃木県立美術館の屋外展示場にて

今年の宇都宮訪問1日目に行った宇都宮美術館は開館25周年記念展の開催中でしたが、こちら栃木県立美術館はちょうどその倍、50周年とのことで。

栃木県立美術館開館50周年記念として、「印象派との出会い~フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」展が開催されていました。

栃木県立美術館開館50周年記念展「印象派との出会い~フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」チラシ表 (画像をクリックするとPDF画面が開きます)
栃木県立美術館開館50周年記念展「印象派との出会い~フランス絵画の100年 ひろしま美術館コレクション」チラシ裏 (画像をクリックするとPDF画面が開きます)

ひろしま美術館が所蔵する国内有数のフランス近代美術コレクションより、モネルノワールなどの印象派の巨匠から、日本の洋画家レオナール・フジタ黒田清輝などの作品が展示され、見どころ満載な企画展。

有名なアーティストたちの、今まで見たことがなかった作品をたくさん見ることができました。
個人的には、新印象派のポール・シニャックアンリ・ル・シダネルの作品を見ることができて嬉しかったです。

今回展示されていたものではないですが、ご参考まで、ポール・シニャックアンリ・ル・シダネルの代表作を以下に。

ポール・シニャック七色に彩られた尺度と角度、色調と色相のリズミカルな背景のフェリックス・フェネオンの肖像」(Paul Signac, Public domain, via Wikimedia Commons)
アンリ・ル・シダネル青いテーブル」(Henri Le Sidaner, Public domain, via Wikimedia Commons)

彼らは、点描で表現するという共通点があります。
15年以上前に亡くなった私の父も趣味で絵を描く人でしたが、点描によって描くことが多かったので、私も心惹かれてしまうのかな・・・
点描で絵を描くなんて、根気のいることだけど、私もトライしてみたい。


さて、栃木県立美術館の後は、ランチタイム。
豆富と湯波懐石の割烹料理店である「月山」というお店でご馳走になりました。

美味しくてヘルシーで芸術的な和食。
後半に供された土鍋で炊かれたご飯、シンプルなのにすごく美味しかった。
多分、煎られた大豆に、昆布と塩が効いてるのかな? 私もやってみよう。

ご夫妻とたくさんお話ししつつ、お腹が満たされた後は、大谷石で知られる大谷町へ。

大谷(オオヤ)資料館敷地内

あいにくの曇り空になってしまったのですが、こちらも紅葉が美しかったです。

資料館の手前にあるミュージアムショップ&カフェ

大谷資料館

このプレハブな建物が資料館となっていて、大谷石採掘場である地下坑内への入り口もこちらに。

地下坑内入口

ちょっとにぎやかな入り口ですが、ここを入ると空間が一変します。

地下へと下る階段
昔、人力で採掘していた様子を人形で再現
現代アートとコラボしたコーナーもあり

とても幻想的かつ圧巻。
海外への旅、今年も叶わないでしまいそうで悲しんでいたところでしたが、異国にでも来たかのような気分になり、高揚感を得られて大満足。


江戸時代から採掘が始まり、最盛期には日本屈指の石の産地となった大谷。この歴史と文化が認められ2018年に日本遺産として認定された「大谷石文化」。
宇都宮に足を運ぶようになってからこのことを知り、気になっていた大谷資料館でしたが、まるで日本ではないどこかへ旅したような非日常を味わえるなんて、全く想像していませんでした。

また、大谷資料館からすぐ近くには、日本最古の石仏「大谷観音」および高さ27メートルの「平和観音」があります。
大谷観音大谷寺に拝観料を払う必要があり、この日はすでに閉まっていたので見ることができませんでしたが、平和観音は外側にあるため、ありがたく拝むことができました。

岩壁に掘られた高さ27メートルの大観音平和観音


こちらも壮観で、大谷を訪れたら絶対に見る価値ありですが、大谷資料館には人がいた割に、以外にも、こちらにはほとんど人がいませんでした。
私達が訪れたのが夕刻だったこともあるかと思いますが、SNS効果でしょうか、大谷資料館が目立って、こちらのことは意外に知られていないのかもです。

大谷寺には登山道があるとのことだし、日本最古の石仏である大谷観音も参拝したいし、大谷町には是非また行ってみたいです。

2022年の宇都宮での2日間。アートで満たされ、幸せでした。
今年も無事に出かけることができて良かったです。本当に、ありがとうございました。


あなたは
どんなアートに
興味がありますか?


栃木県立美術館

住所:
〒320-0043 栃木県宇都宮市桜4丁目2-7

開館時間:
午前9時30分~午後5時
(入館は午後4時30分まで)

休館日:
毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
祝日の翌日(土日、祝日の場合は開館)

WEBサイト:http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/index.html

豆富と湯波懐石 月山

住所:
〒320-0058 栃木県宇都宮市上戸祭4丁目6-13

営業時間:
午前11時〜午後9時30分

電話:028-625-0039

大谷資料館

住所:
〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町909

開館時間:
4~11月 9:00~17:00(最終入館16:30まで)
12~3月 9:30〜16:30 (最終入館16:00まで)

休館日:
4~11月無休
12~3月毎週火曜日休館(火曜日が祭日の場合翌日休館)

WEBサイト:http://www.oya909.co.jp/