挿絵画家としての佐藤忠良

宮城県美術館で開催中の「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展も終盤につき


丸一ヶ月ぶりのブログ更新なので、まずは私事ですが近況報告。
2023年も明けたと思ったらもう3月後半に差し掛かりました。
2022年度も終盤を迎え、私が勤める保育園も卒園と入園(保育園は卒園式後も卒園児が通います)、新たな職員体制、そして法人における予算決めやら役員の入れ替わりなどで、とーってもバタバタしております。
現在の職につくまでは毎年必ず行っていた地元の東日本大震災追悼も、昨年同様、今年も仕事のため行けずで(涙)。
各SNSもログアウト状態にし、仕事に集中しておりました。
貴重な自分の時間はというと、我が家をリノベーション購入したことで確定申告して節税せねばと必要書類の収集やら申告手続きなどで時間を割かねばならず。

ブログ更新されてない、SNSログインもされてない、で、気にかけていただいた皆さま、ご心配おかけし申し訳ありませんでした。
ちゃんと生きてます。

さて、前回記録したのは、ここ宮城県の出身で、日本を代表する彫刻家の一人である佐藤忠良氏の展覧会についてでした。

後期展覧も行くと述べていたのですが、あっという間に終了日(2023年3月26日)近付いてきてしまい、行けるかどうかの瀬戸際に・・・
皆さまはもう行かれましたでしょうか?

本当は後期展覧には3月上旬には行こうと思っていて、そうしたら改めて記事にしようと思っていたのですが、未だ行けておりませんので取り急ぎ、インスグラムへのポストをアーカイブしておくとともに、佐藤忠良氏の絵本挿絵画家としての側面と、同氏が挿し絵された、知る人ぞ知るかもしれないおすすめ文庫をご紹介したいと思います。

佐藤忠良氏の彫刻作品は、アート好きでも特別そうでなくとも、宮城県民の方は何気に目にしてご存知と思うのですが、しかし、その彫刻家さんが、日本人ならほとんどの方が知る絵本の名作「おおきなかぶ」の挿絵をされていたということについては、まだまだ知らない方もいらっしゃるようなので、ここでしっかり言及しておきたいと思いました。

インスタへもポストした通り「おおきなかぶ 」の挿絵原画は、今回の特別展で公開されていますので、是非多くの方々に、素晴らしい佐藤忠良氏の彫刻作品とともに楽しんでいただけたらなと思います。

その想いを込めまして、次にポストしたのがこちら。

小さな町の風景」は、主に児童図書の出版を手がける「偕成社」による文庫で、佐藤忠良氏が挿絵されている一冊なのですが、今回の美術展では取り上げられていませんし、杉みきこ氏による美しい文章の一部は多くの方が知るであろうものの、この文庫本に佐藤忠良氏が挿絵されていることはあまり知られていないだろうと思い、インスタグラムへポストさせていただきました。

それでは最後に、杉みきこ氏による美しい文章の一部を振り返ってみましょう。

「小さな町の風景」ー 第1章「坂のある風景」より
『あの坂をのぼれば』

—あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、朝から歩いていた。草いきれがむっとたちこめる山道である。
顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。

中略

—あの坂をのぼれば、海が見える。
のぼりきるまで、あと数歩。なかばかけだすようにして、少年はその頂に立つ。
しかし、見下ろすゆくては、またも波のように、くだってのぼって、そのさきの見えない、長い長い山道だった。

少年は、がくがくする足をふみしめて、もういちど気力を奮い起こす。

中略

—あの坂をのぼれば、海が見える。
少年はもういちど、力をこめてつぶやく。
しかし、そうでなくともよかった。
いまはたとえ、このあと三つの坂、四つの坂をこえることになろうとも、かならず海に行き着くことができる、行きついてみせる。
白い小さな羽根をてのひらにしっかりとくるんで、ゆっくりと坂をのぼってゆく少年の耳に —あるいは心の奥にか— かすかなしおざいのひびきが聞こえはじめていた。

「小さな町の風景」(偕成社出版/杉みき子著)p.18-21より


「おおきなかぶ」で内田莉莎子さんが表現された「うんとこしょ、どっこいしょ」のリズムの心地よさ同様に、反復される「あの坂をのぼれば、海が見える」の響き、記憶のある方は少なくないと思います。

私は、佐藤忠良さんを深掘りしている時に、杉みきこさんのこの文庫本の存在を知り、さらに懐かしくも美しい文章に触れ、喜びを感じました。
イメージをきっかけに素敵なテキストに出会うという感覚が私は好きです。
アートや文学を楽しむメソッドのひとつとしてもオススメです。


あなたは
絵本についての
記憶がありますか?

「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展

宮城県美術館にて待望の開催


先日訪れた今年初の宮城県美術館


待ちわびていた「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展が開催中です。
”待ちわびていた”ことにはいつもより特別な理由があります。
なぜなら、この特別展は、本来は昨年(2022年)の春に開催されるはずだったから。
昨年3月16日に起きた震度6強の福島県沖地震によって、宮城県での開催は延期となり、ようやく今年(2023年)2月4日(土)より開催されています。

それにしてもね。
昨年の秋に宮城県美術館で開催された「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の混み具合とは打って変わっての静けさ・・・

アート好きとしては、人けのないギャラリーでゆったりじっくりと作品を見ることができるのは嬉しいことではあるのですが、日本を代表する彫刻家の一人であり、宮城県出身の誇れるアーティストの一人である佐藤忠良氏の特別展、宮城県民の皆さんには是非見て欲しいなぁとしみじみ思います。

宮城県美術館生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展 チラシ(表)

例えば前述の激混みだった「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の場合、その話題性に飛びついて見に行った人が多かったようで、”フェルメールと聞いて見に行ったけどよく知らない作家の作品が多くて微妙だった”という声も聞きました。
アートに深い興味がない方の意見かと思いますが、そんな人にこそ、現在開催中の「生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展を是非見てみて欲しい!

(「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」はもちろん私も見に行ったし、実際大変興味深かったけれども、あまりの人気ぶりで、レアなものに価値を感じてしまう私は、これはブログには綴らなくてもいいかなという気持ちになり、記録せずでした。。。)

宮城県美術館生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良」展 チラシ(裏)

佐藤忠良氏の彫刻作品は馴染みがあるからこそ、見れば見るほど彫刻の面白さを感じやすいのではないかと思うし、絵本挿絵画家としての佐藤忠良氏については有名なことだけど、意外と知らない人もいらっしゃるかと思うので、この機会に誰もが知る絵本の名作「おおきなかぶ」の原画の美しさに触れてほしい。

おおきなかぶ」と言えば、私は今回初めてそのレリーフを拝見し、感銘を受けました。
”レリーフ”とは浮き彫り細工のことで、絵本「おおきなかぶ」の名場面がブロンズ彫刻として制作されたもので、普段は佐川美術館に所蔵されている貴重な作品、大変見応えがありました。


特別展のチケットで、宮城県美術館併設の佐藤忠良記念館も観覧できるので、普段はそちらまで周らない方もこれを機にハシゴして、佐藤忠良の世界に浸るのはいかがでしょう。
記念館の方には動物の彫刻などもあり、親子で楽しめるギャラリーであることも知る人ぞ知るポイントだったりします。

また、美術館屋外にも佐藤忠良氏の作品はいくつかあるので、少しずつ春の訪れも感じる今日この頃、ゆっくりと散歩してみるのも良きです。
屋外だと、彫刻作品と、自然の光によって映し出される影とのコントラストを楽しむことができるのでオススメです♪

最後に、以下の写真は宮城県美術館の敷地内屋外で私もお気に入りな場所の一つ。
佐藤忠良氏と切磋琢磨の友であったと言われる舟越保武氏「りんごを持つ少年」が佇む一角です。


奥深い彫刻、美術の世界に浸る時間。
私にとっては、静かに心豊かになれるひととき。
混沌とした現世でも、生かしていただき、平和な時間を持つことができることに、深く、感謝します。


あなたは
カタチの面白さに
触れたことがありますか?