夢は叶えるもの ターシャ・テューダー 人生の軌跡展

“夢は叶えるもの”ターシャ・テューダー展 @仙台藤崎

〜ターシャが教えてくれる「人生を豊かにする方法」〜


11月26日(水)より仙台藤崎本館で開催されている「夢は叶えるもの ターシャ・テューダー 人生の軌跡展」に行ってきました。

ターシャ・テューダーの”夢は叶えるもの“という言葉は、何度聞いても胸に響きます。

彼女は他にも素敵な名言をたくさん残しています。
ターシャの言葉と生き方は、歳を重ねることを恐れず、自分らしく輝き続けたいと願う私にとって、まさに心の栄養です。



ターシャ・テューダーってどんな人?

彼女については、知る人ぞ知る魅力の深さを持った人ですが、「ターシャ・テューダー」という名前を初めて知る人もいるかもしれませんので、簡単に記述しますね。

ターシャ・テューダーTasha Tudorは、1915年8月28日にマサチューセッツ州ボストンで生まれ、57歳の時にバーモント州南部のマールボロという田舎に移り住み自給自足の生活を営みました。
思う存分庭造りや自分の愛する時間を楽しみ、その自宅で2008年6月18日に92歳で亡くなった女性です。

彼女は、アメリカを代表する絵本作家でありながら、同時に「究極のスローライフ」を実践したライフスタイルの先駆者です。

彼女が田舎に移り住んだのは1972年、今から50年程度前のことですから、現代ほどのIT技術はなかったものの既に開発されていた時代。
そんな中で、あえてアメリカ・バーモント州の山奥で、電気も水道もないような18世紀風の暮らしを送り、広大な庭で花や野菜を育て、動物たちと暮らしながら創作を続けました。
彼女の絵本に描かれる世界は、まさに彼女自身の生活そのものなのです。

今回の展覧会は、そんなターシャの約90年にも及ぶ人生を辿る、素敵な機会でした。

夢は叶えるもの ターシャ・テューダー 人生の軌跡展(会場:仙台藤崎本館)チラシ(画像クリックでPDF画面が開きます)
展覧会レポート 〜なぜ、この小さな展示に心を奪われたのか〜

大きな美術展ではありませんでしたが、ターシャの「心の充足」に満ちた世界を、じっくりと感じることができたように思います。

ー 絶筆の絵本原画から伝わる魂 ー

ターシャは92歳で亡くなるまで、生涯現役で絵を描き続けました。
展示されていた絶筆の原画には、年齢を感じさせない力強さと、創作への純粋な情熱が溢れていました。

実は、私自身、子供の頃は絵を描くのが好きであるとともに、画家だった祖父が大好きだったこともあり、自分も画家になりたいという夢を持っていました。
しかし、成長するとともにその想いは薄れ、気がつくとつまらないサラリーマンに・・・
(この辺のことは過去ブログにも記述してます)

そんな「画家になる夢を追わなかった」と虚しく立ち止まる私に、ターシャから、「形は変わったとしても、あなたの情熱が向かう先があるんじゃない?」と問いかけ、そして励まされているように感じたのです。

ー 暮らしの道具とアンティークドレス

展覧会では、彼女が日々の生活で愛用していたアンティークのドレスや、手作りの道具、食器などが数多く展示されていました。
どの品も丁寧に使い込まれ、愛着に満ちています。

私にとってこれらは、日本画家だった祖父の絵筆や、または美容師を生業とし裁縫なども堪能だった祖母のハサミから伝わる手仕事の温もりと同じ。
ターシャにとって、絵を描くことと、家事をすること、庭仕事はすべて、人生を創る手仕事として繋がっていたのだと感じました。

鑑賞アドバイス…? 〜平日だから良かったのかはわからないけど〜

私が行ったのは平日だったこともあるかと思のですが、会場は混雑しておらず、非常に静かでした。
男性の来場者は全く見当たらず、数人の女性のみ。

大きな企画展のような賑わいはありませんでしたが、それが逆に私にとっては、ターシャの穏やかな世界観に浸るには心地よくありがたい環境でした。

「混雑が苦手だけど、ターシャの世界をじっくり味わいたい」という方には、穴場と言えるかもしれません。
また、女性に限らず忙しい日々を送る男性の方にも、彼女の生きる哲学や美しい手仕事に触れると、何か気がつくことがあるかもしれないです。
ご興味があれば、この機会に是非。

ターシャの名言 〜夢を追う私やあなたへのエール〜

この展覧会で再認識したのは、彼女の言葉の強さです。
改めて、ターシャ・テューダーについてのこれまで読んだ本や映画などで知った言葉も含め、彼女の名言に励まされました。

特に、今の私に響いた名言を、英語原文とともに紹介させていただきますね。

「夢は叶えるものよ。語るものではないわ」
“Dreams are what you make them, not what you talk about.”

「今は、人生でいちばんいい時よ」
“Now is the best time.”

「人生は短いから、不幸になってる暇なんてないのよ」
“Life is short, no time to waste on unhappiness.”

年齢や環境を言い訳にせず、この瞬間を楽しみ、自ら喜びを創り出していく。
彼女はそうして、私たちに生き方という最高のアートを見せてくれたのだと思います。

今回の展覧会は、私にとって単なる美術鑑賞ではなく、人生の設計図を見直す時間となりました。

画家になる夢を追わないでしまったという過去を悔やむのではなく、ターシャの言葉を胸に、今、グラフィックデザイナーとして、私なりの「心の充足」を追求した作品を創り、夢を叶えていきます。

私の尊敬してやまない、画家だった祖父と美容師だった祖母のように、「手仕事」や「生き方」を大切にする人でありたい。
この展覧会は、私のそんなルーツと現在の夢を繋ぎ直してくれる、貴重な時間となりました。

「夢は叶えるもの ターシャ・テューダー 人生の軌跡展」日程など

さて、この「夢は叶えるもの ターシャ・テューダー 人生の軌跡展」、仙台での開催は12月9日(火)までと、残りわずかです!

場所:藤崎 本館7階 催事場 (仙台市青葉区一番町)

会期:2025年11月26日(水)〜 12月9日(火)

入場時間:10:00〜閉場時間の30分前まで
(金曜・土曜日は午後7時30分閉場、最終日は午後5時まで)

入場料:一般(大学生含む)当日券税込1,200円
※高校生以下無料
※「障がい者手帳」をお持ちの方は、本人様と同伴者1名に限り入場無料
※Fカード会員特典本人限り当日券を100円引き(会場受付にてFカード提示。オンライン会員は、スマホからマイページを提示)



ターシャの世界に触れるその他の方法

残念ながら展覧会に行けなかった方でも、ターシャの世界に触れる手段はあります。

彼女の晩年の暮らしを記録したドキュメンタリー映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』(2017年公開)は、彼女の言葉と美しい四季が映像で描かれており、展覧会で感じた感動をより深くしてくれる内容です。

DVD/Blu-rayや、各種動画配信サービスでも視聴可能です。

映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』予告編

「自分らしく生きたい」「夢への一歩を踏み出したい」と願うすべての人に、ターシャ・テューダーの世界は深く響くことと思います。

一度きりの人生、心豊かに生きていきましょうね。


あなたにとって
豊かな人生とは
どんな感じですか?


映画「落下の王国(The Fall)」デジタル4Kリマスター, 映画レビュー

念願成就!映画『落下の王国』4Kリマスター版を映画館にて!

〜およそ20年越し、大好きな映画を美しく蘇った映像で大画面で観る感動〜


数年前、大好きな映画『落下の王国(原題:The Fall)』について、ロケ地となった世界遺産とともに紹介する記事をしたためた私。

↑当時の記事については、リンク切れを起こしていた箇所など修正し更新しました

なんとこの映画が4Kデジタルリマスター版として蘇り、今年、日本全国の映画館で上映されると知った時はどれだけ心が躍ったことか。

映画落下の王国 4Kデジタルリマスター2025年11月21日(金)より全国公開。
しかも、”オリジナルの劇場公開版でカットされたシーンが新たに追加され、より濃密な没入体験を実現”された”完全版”とのこと。

映画落下の王国 4Kデジタルリマスター公式ホームページ:https://rakkanooukoku4k.jp/


長年のファンとして、この上映日をどれだけ待ち望んだことでしょう・・・

というわけで、その公開初日、ついに映画『落下の王国(The Fall)』の4Kデジタルリマスター版を映画館で鑑賞してきました。
仙台市在住の私が訪れた劇場はフォーラム仙台でしたが、平日の昼間にもかかわらず、劇場は満席。
(上映されている劇場一覧はこちら→https://theaterlist.jp/?dir=rakka4k
制作されてからおよそ20年(2026年制作、2028年日本公開)が経った今でも、この映画が持つ力の大きさを改めて感じ、胸が熱くなりました。

私自身、世界遺産やアート、そして映画をこよなく愛する者として、この作品は特別な意味を持っています。
なぜなら、これは単なるファンタジー映画ではなく、まさに「動く美術書」!!
そして「世界を巡る壮大な旅」!!だから。

映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』予告編


さて、ここから先は少しネタバレ的なことも述べていこうかと思いますので、まだ一度も映画『落下の王国(The Fall)』を観たことがなく、これから観るのだという方は、ご留意くださいね。



まず、『落下の王国(The Fall)』を語る上で欠かせないのは、その息をのむような映像美です。

ターセム・シンTarsem Singh監督は、インド、ナミビア、中国、イタリアなど、20カ国以上でロケを敢行されたとのこと。
4Kリマスターによって大スクリーンに映し出されたその光景は、もはや現実のものとは思えないほどの色彩と質感でした。

誰もが感動するのは、CGに頼らず、世界遺産を含む実在のロケ地を最大限に活かして創り上げられた映像の迫力です。

壮大な万里の長城や、タージ・マハルの前に建つ赤い砦。

砂漠(ナミビア)の絵画的な構図。

インドのジャンタル・マンタル(ジャイプル)の巨大な建造物が、物語の登場人物の背景として機能する瞬間。

一つ一つのショットが、まるで緻密に計算された絵画のようでもあり、劇場で鑑賞することは、世界の美術館を巡るような素敵な体験でした。
これまで小さな画面でしか観たことがなかった方も、ぜひこの機会に劇場の暗闇で、監督が追い求めた「本物の美」に触れ、私が味わったような感覚を得られたなら嬉しいです。

映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』チラシ(表)(画像クリックでPDF画面が開きます)

この映画が、私のような世界遺産好きの心を掴んで離さないのは、ファンタジーの物語が、地球上に実在する最も美しい場所の数々によって支えられている点ではないでしょうか。

病室で語られる物語は、病気の少女アレクサンドリアの無垢な視点と、語り手ロイの絶望や希望が混ざり合いながら進んでいきます。
そのストーリーテリングの中で、世界遺産世界各地の絶景は、単なる背景ではなく、物語の感情を表現する重要な役割を果たしています。

例えば、美しい砂漠(ナミビア ナミブ砂漠)や、青い街(インド ジョードプル)の風景は、旅のキャラクターたちが感じる孤独や、自由への渇望を象徴しているようにも感じられます。

そして、それは私たちが世界遺産に感じる「人類の残すべき遺産」という価値観と深く響き合うのです。

映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』チラシ(裏)(画像クリックでPDF画面が開きます)

最後に、タイトル『落下の王国(The Fall)』に隠された多層的な意味について考えてみたいと思います。

映画の原題である『The Fall』は、邦題として『落下の王国』とされました。
これには様々な解釈が込められているのだと感じます。
この言葉が指し示すものは、現実と物語の世界で、登場人物たちに起こる複数の「落ちる」または「落ち込む」という状態ではないでしょうか。

1. Royの現実:絶望への「転落」

主人公であるスタントマンのロイは、撮影中の事故により再起不能の怪我を負い、恋人にも裏切られ、精神的に深い絶望へと「落ち込んで」います。

物理的な落下として、彼がスタントマンとして経験した「落下」(事故)そのもの。

精神的な崩壊として、絶望から自死を考えるほど、人生のどん底へと「転落」した状態。

物語の終焉において、彼は物語の中で、キャラクターたちを次々と死(あるいは絶望)へと「落とす」ことで、自身の苦しみを表現しようとします。

2. Alexandriaの成長:無邪気な時代からの「脱却」

一方、少女アレクサンドリアは、純粋で無垢な視点を持っていますが、ロイの物語を聞くことで、死や裏切り、悲劇といった現実世界の暗い部分に直面していきます。

アレクサンドリア自身も、オレンジの収穫中に木から「落ちて」腕を骨折して入院しロイに出会った。

ロイを救おうとして病院内で再び「落下」して大怪我を負ってしまう。

わずか5歳の少女アレクサンドリアの無垢からの脱却
→人間が成長する過程で経験する、無邪気な世界から現実の世界へと「落ちていく」過程を象徴

3. 神話的な解釈:「失楽園」のテーマ

The Fall」という言葉は、キリスト教の神話において、アダムとイブがエデンの園を追放された「堕罪(Fall of Man)」を連想させます。

ロイが語る物語は、復讐と裏切りに満ちたダークファンタジーです。
これは、かつて美しい世界(楽園)があったにもかかわらず、人間が悪意や過ちによってそこから「失墜」した状態を描いていると考えられるのではないでしょうか。

映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』の初回限定パンフレットと鑑賞先着プレゼントの復刻版B5チラシ

落下の王国(The Fall)』という、絶望、成長、そして神話的な失墜を表現するタイトル。
こうして考えてみると、笑える部分も大いにある作品でありながら、結構なダークな部分を示唆し、私たちに改めて人生の問いかけをしてくれるような物語だなと感じました。
だからこそ、この映画は単なる映像美だけでなく、深い悲哀と、そこから立ち上がろうとする人間の強さという感動を、観る者に与えるのかもしれません。

長年のファンの方も、今回初めて観る方も、この4Kデジタルリマスター版により、きっと新たな感動と発見を得られると思います。
スクリーンに広がる夢のような世界で、あなた自身の「落下の王国」を見つけてくださいね。

映画落下の王国 4Kデジタルリマスター公式ホームページ:https://rakkanooukoku4k.jp/


映画『落下の王国(The Fall)』ロケ地となった世界遺産について知りたい方はこちら(映画「ザ・フォール 落下の王国」に見る世界遺産)をご覧くださいませ✨


あなたにとって
心に残るシーンは
どこですか?


今年の海外旅先チュニジア

〜北アフリカで世界遺産を多数保有する国へ!〜


今年、友人が北アフリカのチュニジアへ赴任しました。
実は、その友人からチュニジアで働くかも、という話を聞いたのは昨年のこと・・・

これまでのブログでも綴っていますが、私、昨年は仕事による心労からプライベートで人に会うのもしんどく、唯一会った友達はというと、フランスで生活する友人が一時帰国した時と、宮城県内に住む一組の友人夫婦のみでして。


そう、私は、フランスで生活していた友人が昨年の9月に一時帰国した時点で、「翌年はこれまでとは違う生活になるかもしれない、チュニジアに行くかも」という話を聞いて、「親友の新しい人生は応援したいし、彼女がチュニジアにいるうちに私も絶対に行く!」と心に決めたのでした。

ただ、その時点ではまだ2024年の9月。
私自身は仕事に苦しんでいたさなかです。
でも、親友との再会で励まされたし、今思えば、彼女からの話を聞いたから故の「私もチュニジアに行ってみたい!」という思いも、「いくら仕事のストレスによる適応障害との診断を受けたところで、辞めるわけにはいかないのでは」という気持ちを抱えていた私だったのに、「自分が望んでやりたいことや幸せだと思えることをできない人生なんて、生きている意味ある?!」と改めて思い出すことができ、仕事を辞める決断をする原動力となった理由の一つだったのかもしれません。

だって、彼女からの話を受けるまで、チュニジアへの旅を思いつくこともなかったですし、あのまま仕事を続けていたら、今年中に海外旅行するための長期休暇なんて確保できなかったでしょうから。
(同じ職場でも一昨年にフランスに行けたのは、コロナ明けは絶対にフランス行きは実行すると決めていたことと当時の職場の体制が異なっていたこともあり、半ば強引に休暇を取ったためで、退職時の体制ではそれは無理であったろうと思われます)


というわけで、東京からドバイ経由でのチュニス行き航空チケットを購入いたしました!!
今年(2025年)の秋にチュニジア旅を決行します!!


ところで、北アフリカの国、チュニジア🇹🇳
この国について詳しい方はいらっしゃいますでしょうか?


私はといいますと、ごめんなさい・・・
白状しますが、友人から聞くまでは意識することなどなかった国です。

しかし、これを機に行くとなれば、当然、よく知りたいわけで。
インターネット上にいくらか情報はあるとはいえど(それら全てが正しくは無いのがネット社会)、まずは信頼する「地球の歩き方」で情報を得たいところでしたが、チュニジアについては2020-21年版が最新、その後の刊行予定は現在なしとのこと。涙
私自身は流行とか人気の場所などには興味ない人間なので、むしろ、チュニジアはそれだけレアな国なのだろうと、それはそれで訪問する意欲は増すので良いのですけどね。苦笑


なので、チュニジアへの旅経験のある方、知っておくべき知識などありましたら是非ともお教えいただきたいです。

そうそう、ちょうど次の日曜(2025年8月17日)に放映されるTBSの『世界遺産では、チュニジアの「カルタゴの考古遺跡」と「エルジェムの円形闘技場」が取り上げられるとのことです!
ナイスタイミング!絶対見なきゃ。





さて、本日は8月15日。明日までがお盆です。
あなたはご先祖様へのお参り済ませましたか?

私の亡くなった家族たちには、芸術に縁のある人たちが多いです。
故に私も、その影響を受けているのかなと感じ、それを嬉しく想っています。
そして私は、彼らから受け継いだ命を大切に、生きているうちに美術や世界遺産という芸術に少しでも多く触れたい。
自分の命に感謝すると共に、そんなことを、ご先祖へお伝えしてきたところです。

今年決行するチュニジアへの旅。
北アフリカでも世界遺産を多数保有する国ということなので、これから予習します。


あなたは
どんな旅の予習が
楽しいですか?

映画館で感動体験♪映画音楽の巨匠ハンス・ジマーのライブ ×ドキュメンタリー

〜特別料金にも納得!映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』〜


TOHOシネマズ仙台にて、映画館ではたったの1週間のみの(2025年7月11日(金)〜17日(木))限定公開である映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』(原題『Hans Zimmer & Friends: Diamond in the Desert』)を観てきました。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer

それはまさに、期待をはるかに超える感動体験でした。
決して大袈裟に言っているわけではなく、映画、音楽、アート全般を愛する私にとっては、本当に価値ある映画だと心底感じ、ぜひ記録しておきたいと思ったので、今こうして綴っています。

なおこの映画は、残念ながらパンフレットが制作されていません。
そんなこともあり、私なりにしっかり記録しておきたく、以下から少々詳しめの内容(ネタバレ)になるかと思います。
私自身は初見の映画は、事前にはあまり余計な情報を入れないで観て楽しみたいタイプなので、申し添えておきますが、映画をまだご覧になっていない方は、その点ご留意くださいね。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』のチラシ
(画像をクリックするとPDF画面が開き、拡大できます)

さて、この映画、一般 2,700円という特別料金。
TOHOシネマズでIMAXでもDOLBY ATMOSでもないのにこの料金で、いかなる割引も適用不可とのこと。

それで、私としては、過日のハンス・ジマー 初来日公演「Hans Zimmer Live in Japan(2025年5月、横浜および名古屋にて開催)に行けなかったけれども、これで大好きな映画音楽をライブ映像として映画館の大画面と大音量で楽しめるのであれば良いだろう、特別料金なのもそれなりの理由があるのだろうし…くらいの気持ちで映画館へ足を運んだのでした。

が、しかし、これは単なるコンサートフィルムではありませんでした。

ハンス・ジマー(Hans Zimmer)という稀代の作曲家が、いかにしてあの壮大な音楽を生み出しているのかに迫る、深遠なドキュメンタリー映画と言えます。
彼の音楽に対する情熱、創作のプロセス、そして彼を支える素晴らしいアーティストたちとの揺るぎない絆が、スクリーンからひしひしと伝わってくるのです。

まさしく、『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』というタイトル通り。
ハンス・ジマーと彼の素晴らしいフレンズたちが織りなすサウンドとストーリーは、まるで砂漠の中に突如現れきらめくダイヤモンドのように、私の心に深く響き渡りました。
(ちなみに、デザートは食べるデザート(dessert)ではなく、砂漠のデザート(desert)ですよ。笑)

次の動画はこの映画の予告編です。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』予告編

先ほど、単なるコンサートフィルムではないと述べましたが、ライブ会場ではなくとも、スクリーンによって観客が十分に楽しめるような映画として、構成をとても考えられた作品だと感じました。

映画は、タイトルを象徴した砂漠の砂丘で歌うロワール・コトラー(Loire Cotler)によって幕が切られます。
そう、砂漠といえば、ハンス・ジマーが生んだ名曲を代表する『DUNE/デューン 砂の惑星』(原題『Dune』)を想像するのに難くないでしょう。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星(Part 1)』予告編


また、演奏される音楽の間には、ハンス・ジマーと彼に関わる映画監督、俳優、ミュージシャンといったアーティスト達との対談が組み込まれていて、ハンス・ジマーが創り出してきた楽曲のバックグラウンドを知ることができます。

例えば、『DUNE/デューン 砂の惑星』の監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴ(Denis Villeneuve)、主演のティモシー・シャラメ(Timothée Hal Chalamet)ゼンデイヤ(Zendaya Maree Stoermer Coleman)との対談もあり、それぞれ全てが非常に興味深かったです。
個人的には、今年観た映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で、ティモシー・シャラメが伝説のシンガーであるボブ・ディランとして素晴らしい演技を披露したのも、この対談を観て妙に頷けました。

そして、コンサートツアーの会場からこの映画用に使われたのは、アラブ首長国連邦ドバイコカ・コーラ・アリーナでのライブ風景。
アラビアの豪華なスポットの一つだからということもあるでしょうけれど、やはり砂漠に面することも理由にあるのではと。

オープニングに続いての音楽と映像は、ドバイコカ・コーラ・アリーナで演奏された『インセプション』(原題『Inception』)の曲でした。

映画『インセプション』予告編


今や鬼才として映画界に君臨する方をこんな風に言うのも恐れ多いことですが、私はこの作品で、監督を務めたクリストファー・ノーラン(Sir Christopher Nolan)の名をしっかりと覚え意識するようになったと記憶してます。
もちろんクリストファー・ノーランの作品はそれ以前のものも観たし、どれも面白いのですが、私には『インセプション』がとりわけ衝撃的だったのです。
その世界観が大好きで、DVDでも繰り返し観ているので、この音楽が映画館の大音量で楽しめて大興奮しました。

さてその次は、『ワンダーウーマン 1984』(原題『Wonder Woman 1984』)です。
強く美しくかっこいい女性に憧れる私は、当然この『ワンダーウーマン』シリーズも大好きなので、興奮冷めやらず。

映画『ワンダーウーマン 1984』予告編


ちなみに、『ワンダーウーマン』は2017年に1作目が公開されていて、『ワンダーウーマン 1984』はシリーズの2作目です。
いずれも監督はパティ・ジェンキンスですが、ハンス・ジマーが音楽を担当したのは『ワンダーウーマン 1984』の方。
シリーズものの映画は、監督や俳優が変われば、作風にも違いが現れますが、音楽も然りで。
観る人の好みによっても変わってくるわけですが、その辺の違いも比べてみるのも、映画の面白さですよね。

次は『マン・オブ・スティール』(原題『Man of Steel』)の曲でした。
スーパーマン』シリーズの一つですが、私は今のところ、これが一番好き♡
音楽がハンス・ジマーであるところに、前述したクリストファー・ノーランが製作・原案を担当し、好きな俳優の一人であるヘンリー・カヴィルが主人公のクラーク/スーパーマンを演じたこと、そして実話をもとにした名作で私も感銘を受けた『アンタッチャブル』(原題:The Untouchables)で主演を務めたケビン・コスナーがクラークの父親を演じた点で私には特に響いているのだろうと思います。

映画『マン・オブ・スティール』予告編


ところで、このブログにはハンス・ジマーが請け負った映画がどんなものだったかを把握していただけるように、その映画予告をYouTubeより転載させていただいてますが、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』では単純にそれらの映像が映し出されるというものではありません。

先に述べたように、ドバイコカ・コーラ・アリーナでのライブ風景が軸とはなっていますが、曲間には別撮りした対談の様子があったり、ロケ撮影による演奏風景などと共に構成されています。
しかし、ここに挙げている動画のような、それぞれの映画のシーンと感動が、ハンス・ジマーとその素晴らしい仲間たちによる壮大なパフォーマンス興味深いトークよって新たな感動として呼び起こされるのです。

マン・オブ・スティール』演奏直前にも対談が組み込まれていたのですが、そこでハンス・ジマーが「スーパーマンに相応しいのは見栄えのいいグランドピアノなんかじゃない。ヒーローである一方で、孤独を感じ、農場での生活を大切にする彼のイメージには素朴なアップライトピアノがいい。」といったことを話し、その後場面が切り替わり、コンサート会場のステージ上で中央に置かれたアンティークなアップライトピアノによる演奏が始まったシーンは印象的でした。

この次は、『グラディエーター』(原題『Gladiator』)より。
古代ローマを舞台にした歴史アクション映画で、アカデミー賞では作品賞など5部門を受賞し、ゴールデングローブ賞では最優秀作品賞を受賞した名作で、ハンス・ジマーが担当した音楽も、ゴールデングローブ賞では最優秀作曲賞を受賞し、アカデミー賞ではノミネートを果たしています。

映画『グラディエーター』予告編


これも砂漠(モロッコ)でロケが行われている作品でしたが、『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』でも、『グラディエーター』のパートは砂漠(アラビア)でのロケ撮影によるものでした。

今までハンス・ジマーの音楽は幾度と耳にしても、彼自身が演奏したり語る姿はほとんど目にしたことがなかったので知りませんでしたが、この映画を観て、ハンス・ジマーは瞳がとってもキレイな人なんだと気がつきまして。
特に、この『グラディエーター』の演奏風景では、目の輝き度合いが半端なくて、本当に音楽を愛してる人なんだろうな、こんな少年みたいで情熱的な人だから、こんな素晴らしい音楽を生み出すのだろうな、と感じました。

そして次の、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(原題『Pirates of the Caribbean』)では、あの誰もが聞き覚えある曲の部分で、コンサート会場の盛り上がりも最高潮に。
こちらは、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』の公式ホームページにもアップされている動画をシェアさせていただきますね。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』より「パイレーツ・オブ・カリビアン」演奏シーン

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer


で、この高揚感ある盛り上がりの後は『ダークナイト』(原題『The Dark Knight』)ときまして。
これは、光と闇の音のコントラストとでも言えるでしょうか…

映画『ダークナイト』予告編


パイレーツ・オブ・カリビアン』に打って変わって漂う、深く暗い緊張感。
あの重厚な低音と、心臓を叩かれるかのような不穏なリズムは、聴く者の心をざわつかせ、まるでゴッサムシティの暗闇に迷い込んだかのような感覚に陥れられます。
ライブで迫ってくるその鋭利で研ぎ澄まされた音の塊が、単純な盛り上がりとは違う、ゾクゾクするような興奮と、静かに心を揺さぶられる美しさを伴うものでした。

そんなダークな楽曲に続くのは『X-MEN:ダーク・フェニックス』(原題『Dark Phoenix』)。

映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』予告編

マーベル・コミックスの『X-MEN』もシリーズ化されている映画ですが、実は私、『X-MEN』といえばウルヴァリン、そしてそれを演じるヒュー・ジャックマンと思っていたため、彼がが出ていないこの『X-MEN:ダーク・フェニックス』は未見でして。

でもこの『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』でのハンス・ジマーらのパフォーマンスを観たことをきっかけにこの予告編を観たら、もう気になってしょうがない。
こんな理由からでも、この映画も絶対観たい!って気持ちにさせるミュージシャンの存在って、本当にすごい。

そしてこの後も、『ダンケルク』(原題『Dunkirk』)とダークな感じが続きます。

映画『ダンケルク』予告編


ダンケルク』は、第二次世界大戦のダンケルク大撤退を描いた映画で、これまでハンス・ジマーとタッグを組んで数々の名作を産んできたクリストファー・ノーランにとっては初の実話に基づいた映画。
第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、美術賞、撮影賞、編集賞、音響編集賞、録音賞、作曲賞の8部門にノミネートされ、編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞した名作です。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』では、クリストファー・ノーランの姿がなかなか出てこなかったのでいつ出てくるんだろうと思っていましたが、クライマックスに差し掛かる後半で、彼らの含蓄ある対談シーンがありました。
名監督クリストファー・ノーランと名音楽家のハンス・ジマーがタッグを組んだ映画から、彼らはまさに、単なる仕事上のパートナーシップを超えて深い信頼と友情で結ばれている、そんなことを感じつつありましたが、この『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』を鑑賞して、それを確信。

そして次も、彼らがタッグして創られた素晴らしい作品の代表作の一つ『インターステラー』(原題『Interstellar』)の楽曲。

映画『インターステラー』予告編


神秘に満ちた宇宙を描いた『インターステラー』の曲を、世界最大の360度プロジェクションドームとしての機能を持つアル・ワスル・プラザ・ドームエキスポ・シティ・ドバイ内)にて演奏収録された映像は、私たちが未知の、美しく壮大な世界観が表現されていて、もううっとり。

こちらも、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』の公式ホームページにライブ風景がアップされていますので、シェアさせていただきます。

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』より「インターステラー」演奏シーン

映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/hanszimmer

そんな神秘に包まれた後に続いたのは『ライオン・キング』(原題『The Lion King』)。
終盤にこれを持ってきたのは、1994年に、音楽部門でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞受賞を受賞した、ハンス・ジマーにとっても非常に輝かしい作品の一つだからゆえでしょう。

映画『ライオン・キング(1994)』予告編


なんと、この作品が公開されたのは、30年以上も前になるんですね。
実は、私の手元には、このサウンドトラックCDがあるのですが、今は亡き父が購入していたものを、勝手に奪った代物でして。
女優ゼンデイヤとの対談で、ハンス・ジマーが「6才の頃に父を亡くした自分が、娘のためにこの映画への参画を決めた」ということを語っていたシーンでは、私の映画や音楽好きは父の影響もあるので、思いもがけず、涙してしまいました。

このCDもずっと聴いていませんでしたが、思い出して、いそいそとiTunesにアップロードしています。


こんな私の個人的な思い出はどうでもいいでしょうが(私のブログなのでお許しくださいませ)、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』での『ライオン・キング』ライブ風景は、また凄かったです。
会場中に太鼓隊が現れて、ハンス・ジマーら演奏者とともにパフォーマンスを繰り広げるのです。
あの場に自分もいることができたら、どんなに楽しかったか…
コンサートに行った方を羨む気持ちもありますが、大画面と大音量の映画館でこの映画を観たことで、その臨場感を味わうことができたので、本当に良かったです。

さてここまで、相当長くなってしまいましたので、この他にも演奏、対談があるのですが、自分の想いも含めて記述しているとキリがないので、この辺で。
いずれにせよ、映画『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』は歴史に残る作品となるだろうなと感じています。

TOHOシネマズ仙台では、通常会場で特別料金2,700円での上映でしたが、そこに追加料金払ってでもいいからDOLBY ATMOS(+200円)で観たかった!と思える素晴らしい映画でした。

ハンス・ジマーファンはもちろんのこと、映画音楽に興味がある方、ライブパフォーマンスの素晴らしさを体験したい方、そしてアートが持つ力に触れたいすべての人におすすめしたい作品です。


あなたが得た
感動体験って
どんなものですか?

華麗なるフランスの世界遺産 ヴェルサイユ宮殿と庭園

〜黄金の時代を刻んだ、芸術の殿堂へ〜


ブルゴーニュでの3日間を経てからのパリ滞在もいよいよ3日目。
(前回までのパリ滞在記録はこちら↓)


翌日の朝には帰路に就くことになるので、実質フランスでの滞在最終日となる日です。
この日の目的地はヴェルサイユ宮殿(Palais de Versailles)ルーヴル美術館(Musée du Louvre)
そしてその移動経路として、エッフェル塔(La tour Eiffel)界隈を歩くことを決めていました。


1日でヴェルサイユルーヴル美術館とは少々無謀ではと思われるかもしれませんが、パリ滞在の最終日であると共に、ちょうどこの日は金曜日で、ルーヴル美術館の開館時間が21時45分まで延長される日だったため(2023年10月時点)、多少疲れるのも覚悟の上でそのような予定を組んだのです。

さてまずは、ホテルを出てヴェルサイユ宮殿へと直行します。
まだほの暗い朝8時、宿泊先ホテル最寄りの地下鉄へ。


宿泊先最寄りの地下鉄駅であるグラン・ブールヴァール(Grands Boulevards)駅から10分内の場所に位置する、複数の路線が乗り入れるアンヴァリッド(Invalides)駅にて下車。


同じくアンヴァリッド(Invalides)駅よりRER(エール・ウー・エール/高速郊外鉄道)C5線ヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ(Versailles Château Rive Gauche)行きに乗り換えて30分強で、ヴェルサイユ宮殿の最寄駅であるヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュに到着します。


ちなみに、ヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュRERC5線の終点駅となるので、行き先さえ間違わずに乗れば、乗り過ごしてしまう心配がありません。

*フランス国鉄(SNCF) Transilien公式サイトによるRER C線の詳細→https://www.transilien.com/fr/page-lignes/ligne-c

なのですが、ここでもまた自分の思い込みによるプチハプニングがありました。
地下鉄からRERに乗り換えて向かう場合、地下鉄のみの駅でもヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ行きの切符を選択することが可能なのですが、私はこの時、アンヴァリッド(Invalides)駅で地下鉄を降りたら、改めてRERの切符を買わなければならない、要するに、ヴェルサイユ行きの切符は地下鉄駅では買えないと思い込んでいました。
パリのメトロとRERの運行会社は異なるので、日本では例えば、JRから地下鉄に乗り換える場合には切符を地下鉄改札前で買い直さなければならないから、そのイメージでいたのです。

ところが、アンヴァリッド駅の改札内には切符販売機が見当たりません。
駅員さんに、「この切符ではヴェルサイユまでは行けませんよね?どうしたら良いですか?」と尋ねると、「あの階段を登った先の改札を出た所に自動券売機があるから、一旦改札を出てヴェルサイユ行きの切符を買って」と(英語で)教えてもらいました。


販売機の画面は地下鉄に乗る時と一緒で、(フランス語はわからないため英語画面に切り替えて)よくよく見たら「Ticket for Paris region(パリ地域(郊外)行きチケット)」という選択肢があり、そこをタッチして操作を進めることでヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ行きの往復券を買うことができました。

せっかく地下鉄でRERC5線も通っているアンヴァリッド駅で乗り換えをすることにしていたのに、広いアンヴァリッド駅内でわざわざ一旦改札を出て改めてRERC5線ヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ行きの切符を買うこととなり、オロオロしつつでまた無駄な時間がかかってしまいました・・・

それでも、なんとか無事にヴェルサイユへ到着。


なお、私は「パリミュージアムパス」を利用してヴェルサイユ宮殿を訪れることにしていたので切符の購入を選択しましたが、交通機関の乗り換えがスムーズにできるパスも数種類あるので、そちらを利用するのも一つです。

ヴェルサイユ宮殿の所在地はヴェルサイユであり、パリではありませんが、「パリミュージアムパス」が活用できます↓


さて、ヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュから徒歩でおよそ10分、並木道の先に宮殿の姿が見えてきました。


フランスに行ったら絶対に訪れたいと思っていた世界遺産「ヴェルサイユ宮殿と庭園(Palace and Park of Versailles/Palais et parc de Versailles)」を目の前に、ワクワク感が高まります。

宮殿前の広場にて、堂々と佇むのはルイ14世の騎馬像です。
到着したばかりの時はあいにくの曇り空で、イマイチの写真ですが、訪れる人々を最初に出迎え、宮殿の顔として、来訪者に強い印象を与えます。


ルイ14世(Louis XIV、1638-1715)はフランス絶対王政の頂点に君臨し、「太陽王(Sun King/le Roi Soleil)」と呼ばれました。
ヴェルサイユ宮殿(Palais de Versailles)を建設し、まさにたくさんの客人を招き入れ、フランス文化を世界に広めたのです。

ルイ14世の騎馬像の後方にある、入り口の1箇所目となる簡単なセキュリティを通過し、いよいよ宮殿の敷地内へ。


ヴェルサイユ宮殿は9時開館です。
私は10時の入館をネット予約しており(ヴェルサイユ宮殿は事前予約が必須)、9時30分頃到着しましたが、既にすごい人の群れ。

人の多さに圧倒されつつ、まず目が釘付けになったのは、宮殿を取り囲む黄金に輝く柵でした。


この黄金に輝く柵はヴェルサイユ宮殿正門で17世紀後半に建設されたものではなく、2008年に復元されたもの。
当初は純粋な金で作られていたけれど、フランス革命時に取り壊され、復元された門は本物の金に代わり、10万枚の金箔で装飾されているそうです。

復元製かつ純粋な金ではないとはいえ、ヴェルサイユ宮殿の華やかさと豪華さを象徴する存在となっていて、写真スポットとして記念撮影する人が絶えません。


で、私どもは、この黄金の門からは入場できません。
門に向かって左手がエントランスAで、右手側がエントランスBとなっています。


Aが一般入場門で、Bが団体入場門、というわけで、私はAに並びます。


長い列でしたが、割と時間通り入場することができました。
荷物検査などもあるセキュリティを通過し、遂に宮殿内へ。

まずは、黄金の柵の奥に広がっていた「王の中庭」へと足を踏み入れます。


私、写真を撮り損なってしまったのですが、下図の写真のずっと奥の床が大理石となっていて、ここは「大理石の内庭」とも呼ばれています(この写真の見えている部分は石畳です)。


次の写真で写っていない真下部分が大理石の敷き詰められた床となっています。
白と黒の幾何学的なデザインが素敵だったのですが、人が多すぎたこともあり、良いアングルが捉えられず撮影を諦めてしまったことを悔やみます・・・


建物の中へと進んでみると、意外とシンプルな装飾箇所もありました。
私には、こういう雰囲気の方が落ち着くような気がします。


こちらはシンプルと豪華さが融合した空間となっている「王室礼拝堂」です。


この礼拝堂内部には入れず、狭い戸口からしか拝観することができずだっため、私のような見学者がたくさんいるところを必死の思いで撮影しました。

お次もご覧いただいての通り、すごい人。
王の小居殿や内殿である「王の正殿」の中でも、最も見どころと言われる「ヘラクレスの間」です。


そこはまさに、王の権威と富を象徴する一室。
天井には、フランスの宮廷画家として活躍し、ロココ美術を代表する画家として知られるフランソワ・ルモワーヌ(François Lemoyne、1688-1737)による神話絵画「ヘラクレスの神格化(The Apotheosis of Hercules)」が描かれ、壁には、ティツィアーノやティントレットと並んで、ルネサンス後期のヴェネツィアを代表する画家として評価されるパオロ・ヴェロネーゼ(Paolo Veronese、1528-1588)作の「パリサイ人シモン家の晩餐(The Feast in the House of Simon the Pharisee)」が飾られています。

そしてやはり、いろんな意味で一番圧倒されたのが、ヴェルサイユ宮殿の最も有名な空間の一つである「鏡の間」です。


一面に鏡が張られ、太陽の光を反射して輝く唯一無二の回廊は、王の絶対的な権力を象徴しています。

ご多聞に洩れず、私もここを特に楽しみにしていた一人ですが、宮殿内一番の混雑場所で、大勢の人にも装飾の凄さにも大いに圧倒されたのでした。


それから、ドイツと連合国との戦争状態を終わらせて第一次世界大戦を終結に導いた重要な平和条約である「ヴェルサイユ条約」が、1919年6月28日にこの「鏡の間」で調印されたことは、日本人としても覚えておきたいことですね。

鏡の間」に続いて宮廷内の大きな回廊である「戦史の回廊」も、歴史や絵画好きには必見です。


人出は「鏡の間」に比べてだいぶ少なかったですが、「戦史の回廊」には、フランスの歴史的な出来事を描いた絵画がずらりと並び、勝利をテーマにした絵画や、英雄たちの胸像が飾られ、フランスの武勇を称える壮大な空間となっています。

宮殿の内部は、ここに挙げられないほどたくさんの見どころがあり、煌びやかな箇所に人が集まっている印象でしたが、個人的にはやはり静かな場所が好きでして・・・


探索していると、人っこ一人いないような場所にも稀に出くわすのですが、それはそれで、その美しさに感動する反面、ちょっと怖くも感じてしまうのでした。


さて、改めまして、世界遺産の名称は「ヴェルサイユ宮殿と庭園(Palace and Park of Versailles/Palais et parc de Versailles)」です。

しかしながら、通常無料であるヴェルサイユ宮殿の庭園は、訪れるタイミングによっては別料金となってしまうのです。
私はそれをつゆ知らず、私自身が訪れたのは「音楽の庭園」というイベントが開催される日だったため、10ユーロ程度(状況によって異なるようですが、私の場合€9.9)が別途必要でした。
残念ながらミュージアムパスも使うことはできないとのこと。
しかし、ここでケチるわけにはいきません。


レーンに並び(それほど混雑していませんでした)、支払いを済ませ、いざ庭園へ。


それは、やはり価値ある光景でした。

敷地の南側に、宮殿より低い位置にあり、緑のデザインが美しい「オランジュリーとスイス人の池」は、広大な庭園の中でも、私が最も惹かれた場所です。


ヴェルサイユ宮殿の「オランジュリー(オレンジなどの柑橘類のための温室)」は、地下に埋め込まれた特殊な構造になっているのですが、南向きで二重窓のおかげで冬でも5〜8℃と気温が安定しているのだそうです。


ここはまた、ブルゴーニュ観光の記録(2023 フランスブルゴーニュ 1日目 その2)でも触れた建築家のジュール・アルドゥアン=マンサール(Jules Hardouin-Mansart、1646-1708)が才能を発揮した場所の一つとされています。


マンサールルイ14世の首席建築家として、ヴェルサイユ宮殿の拡張計画の中心人物でした。
彼の貢献により、ヴェルサイユ宮殿は単なる王の居城から、フランスの絶対王政の象徴となる壮大な宮殿へと生まれ変わったとされています。
彼の洗練されたスタイルは、フランス後期のバロック建築に大きな影響を与え、その名声はヨーロッパ中に広まったということです。

一方、造園家としてヴェルサイユ宮殿の庭園全体の設計を任されたのは、フランス式庭園の様式を完成させたと言われるアンドレ・ル・ノートル(André Le Nôtre、1613-1700)です。
ル・ノートルは、パリの1日目の記録(パリの美術館巡り1 翌朝も再びセーヌ川へと向かって)でも記述した通りチュイルリー庭園(Jardin des Tuileries)も手がけた人物です。


次の写真は庭園の西側で、手前が「ラトナの泉水」で、奥に小さく見えるのが「アポロンの泉水」、さらに「大運河」が広がっています。


この日のイベントは「音楽の庭園」ということで、バロック音楽が流れる中で広大な庭園内を散策、というわけなのですが、オーケストラで生演奏しているわけでもなくスピーカーから流れ出ている音楽(大音響で広大な広場に流しているので音質が微妙)なので、音楽好きな私ですが、個人的には静かな中で散策したかったところ。


しかし、これらのイベント時には、普段は一般公開されていない樹木庭園に入ることができるとのことで、その点は良かったです。


とはいえ広い敷地内、一人で鬱蒼とした木立ちに入るには迷いそうだしちょっと怖かったので、あまり深くは入り込みませんでしたが・・・


それにしても、想像を絶する圧倒的スケールでした。
太陽王ルイ14世の野望がいかに凄いものだったかを目の当たりにしました。

芸術的と言えば聞こえは良いけれど、華麗すぎる絶対王政時代の宮廷世界。
貴族の贅沢が最終的に市民の反感を買うことになったのは致し方ないと思います。

でも、フランス革命(マリー・アントワネットを妻にしたルイ16世の時代に市民の怒りが爆発して起きた)の後、王政が崩壊して、一時的に荒廃したこのヴェルサイユ宮殿が、その後、国家の象徴として再建されて、こうして残されているのは素晴らしいことですね。

建築であれ、絵画や彫刻であれ、庭園であれ、芸術として価値あるものに触れ、そして我々の祖先が生きた時代の歴史を学ぶことは、教養を養うとともに心を豊かにしてくれます。


この広大かつ壮大なヴェルサイユ宮殿をくまなく巡るには、やはり一日でも足りないくらいですが、時間が限られている私、午後にはパリへと戻ります。


再びヴェルサイユ・シャトー・リヴ・ゴーシュ(Versailles Château Rive Gauche)へ。
先述しました通り、この駅はRER(エール・ウー・エール/高速郊外鉄道)C5線の終着駅なので、ここからパリへ戻るのは難しくありません。


往路と同様にアンヴァリッド(Invalides)駅にて下車します。
ただ、往路と異なり、ここで乗り換えはしません。


ここからの予定はエッフェル塔界隈の散策とルーブル美術館見学ですので、駅の外へと出ます。

約半日ぶりのパリ市内の地上。
いざ、エッフェル塔を目指して歩きます。




ヴェルサイユ宮殿
Château de Versailles

住所:Place d’Armes, 78000 Versailles, France
Webサイト:https://www.chateauversailles.fr/




あなたは
宮廷の世界について
どう考えますか?

パリの美術館巡り3 元駅舎のオルセー美術館

〜建築物の美しさにも酔いしれるパリ3大美術館の一つ〜


海外女一人旅、地元の仙台空港から出国し台湾経由でたどり着いたフランス、パリ美術館巡りの初日、印象派の巨匠クロード・モネの「睡蓮」シリーズが展示されていることで有名なオランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)の次に向かうのは、オルセー美術館(Musée d’Orsay)です。

セーヌ川の右岸に位置するオランジュリー美術館に対し、オルセー美術館はセーヌ川の左岸に位置します。
オランジュリー美術館の正面玄関前に広がるコンコルド広場(Place de la Concorde)から対岸へと架けられた、コンコルド橋(Pont de la Concorde)を渡って向かうこととしました。

コンコルド橋
Pont de la Concorde

住所:Pont de la Concorde, 75007 Paris, France


コンコルド橋から眺めるエッフェル塔も風情あり。


コンコルド橋を渡った先に幽玄と佇み、まるでギリシャ神殿を思わせる建物は、ブルボン宮殿(Assemblée nationale – Palais Bourbon)


ブルボン宮殿は、フランス国民議会(Assemblée nationale)の議事堂として使用されている歴史的な建物です。


1722年にルイ14世の孫娘であるルイーズ・フランソワーズ・ド・ブルボンによって建設され、フランス革命後、1795年にフランス政府に接収されて、1798年から国民議会の議事堂として使用されるようになりました。

ブルボン宮殿
Assemblée nationale – Palais Bourbon

住所:126 Rue de l’Université, 75007 Paris, France
Webサイト:https://www.assemblee-nationale.fr/


コンコルド橋を渡り、ブルボン宮殿に向かって左折した先に見えてくるのが、私にとってこの日2番目のメイン目的地であるオルセー美術館(Musée d’Orsay)


パリの3大美術館の一つとされているオルセー美術館は、建物自体がアートの一部です。
その素晴らしい建築物のシンボルである大時計が見えてきて、胸が高鳴ります。


オルセー美術館の建物が、元々1900年のパリ万博のために建てられた駅舎(旧オルセー駅/Gare du Quai d’Orsay)だったことは、この美術館を語る上では外せない重要な話。

かつての駅の時代に旅人に正確な時間を知らせるために機能していたこの時計塔は、現在では、美術館の歴史と現代の文化的役割を象徴しています。
クラシックなデザインは時代を超えた優美さを保ち、その存在はまるで、時間の流れとともに変化してきたオルセー美術館のストーリーを語っているかのよう。


と、建物の外観を眺めるだけでもうっとりし夢見心地な気分になりますが、一旦現実に戻って、入場を待つ人の列に並びます。

時間が限られている旅行で、パリの主要美術館を訪れるなら、チケットの事前購入は必須です。
時間が読めなかったことと、少し割高になるので入館時間の予約まではしていなかったのですが、ミュージアムパスを利用したことで、比較的すんなり入場できました。


今回の旅で重宝したパリミュージアムパスについてはこちら↓に記述しています。


さて、入館セキュリティーを通過し、さらに次の扉へと進みます。


扉を抜けて、目の前に広がる景色に圧倒されました。
まさに駅舎であったことを窺い知ることができるその風貌。


旧オルセー駅は、1900年5月に運行を開始しましたが、1939年に長距離列車の運行を停止しました。
これは、ホームの長さが新しく登場した列車の長大化には不足していたためなのだそう。
以降、オルセー駅は主にパリ近郊の列車用の駅として使用されましたが、次第にその役割も縮小し、駅としての機能を徐々に失っていきました。

その後、駅は様々な用途に利用されましたが、次第に放置されるようになり、1970年代には取り壊しの計画もあったとのこと。
しかし、歴史的建造物としての価値が見直され、最終的に美術館として生まれ変わることが決定されました。
そして、1986年にオルセー美術館として正式に開館したのです。

かつてのプラットフォームだったメインホールは、その広がりと空間の高さが際立ち、ガラス屋根からの自然光が内部に満ちています。
鉄骨のフレームやガラス張りの屋根が印象的な建物のデザインは、この時代特有のアール・ヌーヴォーの影響によるもの。
線路が敷かれていた場所が現在では彫刻ギャラリーとなり、その両脇のプラットフォームであった場所は絵画などの展示スペースとなっています。


このメインホールにも、駅の名残を思わせる大時計が輝いています。
建物の外壁の時計も内部にあるこちらの時計も、修繕や整備はされてきましたが、旧オルセー駅当時からのものなのだそうです。


素晴らしい装飾が施された時計に釘付けになる私の頭の中に「おーおーきなのっぽの古時計〜♪」の歌がよぎりました。
しかし、この歌詞にある100年休まず動いてきた古時計は最後には動かなくなってしまうわけですが、オルセー美術館のシンボルであるこれらの大時計はゆうに100年を超え、今もなお時を刻み続けているのです。

金色に輝く時計の圧倒的な存在感と美しさに見惚れつつ、嬉しいことも悲しいことも、いろいろ見てきたんだろうなぁ、と感慨にふけってしまいました。

この歴史的建造物として価値あるオルセー美術館の建物自体は6階建ですが、作品が展示されているスペースは地上階(0階)、中階(2階)、最上階(5階)の3フロアで構成されています。
建物の両端にはエスカレーターが設置されていて、好きな所どこからでも見て回れるようになっています。

私はまず最上階まで行ってから降りてゆく形で美術作品を見ることにしました。

エスカレーターを上り切った所の通路は静かなものだったのですが・・・


通路を出た先にあるカフェのなんと賑やかなこと!

最上階(5階)にあるカフェ カンパナ(Café Campana)は外壁に設置された大時計の場所に位置していることもあり、私が通りかかった時間がお昼時ということもあったのかも分かりませんが、とても人気のようです。


このカフェの先に続くのが、マネモネルノワールシスレースーラなどなどの、主に印象派の作品の展示。
相変わらず人は多い中ですが、素晴らしい作品の数々に感動のため息が出ます。


さぁ、このまま進んで辿り着いたこの建物の逆サイド。
こちら側にはカフェはなく、大時計だけを堪能できる素敵スポットがあります。

とはいえ、現代のSNS社会において、そこは要するにまさに”映える”場所。
ここはここで、人が絶えない・・・


それでも私もなんとか少しでも絵になる写真を撮りたい!

人のいない静かな情景を撮影することが願望でしたが、この状況では致し方なく、これで我慢。


人混みが苦手な私は、相変わらず増え続ける人の波に押され、中階(2階)へと移動しました。

さてこちらは、オルセー美術館の建築様式にも影響を与えたアール・ヌーヴォーをテーマとした展示室。


先ほどまでの状況から一転し、怖くなるほど人がいない静かな場所でしたが、おかげで素晴らしい展示品を静寂の中で堪能することができました。

と、私はここで喧騒に逃れたことは嬉しかったものの、反面、ここはこの美術館の歴史的な建築要素が見られる場所であるのにこの静けさ、やはりほとんどの人は流行りだとかSNSによる情報に流されやすいということなのだろうか・・・となんだか寂しくも感じたりした瞬間でもありました。

…が、そんなことを想いつつもこの中階(2階)のテラスに出れば、光がさんさんと降り注ぐ魅惑的な空間に、大勢の人々の姿に圧倒されつつも、厳かな情景に感動を覚えます。


パリ3大美術館の一つオルセー美術館は、その壮大な建築と豊富なコレクションにより、パリを訪れる芸術愛好家にとって必見のスポットであることに違いありません。

歴史と芸術が融合したこの素晴らしい空間で、19世紀から20世紀の美術の変遷を感じながら、優雅な時間を過ごすことができるものと思います。

オルセー美術館
Musée d’Orsay

住所:1Esplanade Valéry Giscard d’Estaing, 75007 Paris, France
Webサイト:https://www.musee-orsay.fr/fr


あなたは
建築物の役目の返還について
考えたことがありますか?

オランジュリー美術館(Orangerie Museum/Musée de l'Orangerie)

パリの美術館巡り2 オランジュリー美術館

〜元オレンジ温室で堪能するモネの大作『睡蓮』〜


アート好き女子一人旅で訪れた、初めてのパリ滞在での美術館巡りの初日は、オランジュリー美術館(Orangerie Museum/Musée de l’Orangerie)からスタートしました。


こちらがオランジュリー美術館の正面玄関です。
この角度から見た限りでは、中世のお城をイメージするかもしれませんが・・・


次の視点から見た感じ、お城にしてはちょっと地味な感じがしませんか?


オレンジはフランス語でオランジュ、そしてオランジュリーとはオレンジ畑オレンジ温室を意味するのですが、オランジュリー美術館はその名の通り、オレンジの木を保護するための温室だったのだそうです。


次の視点からだと、確かに温室っぽい!と感じていただけるのではないでしょうか?


19世紀にナポレオン3世によって造られた大きなオレンジ温室は、その後、資材置き場や試験会場、召集兵士宿舎などとして使われたり、スポーツや音楽、国家行事などの多目的施設としての経緯を経て、1921年に美術行政に割当てられ、政治家でクロード・モネの友人でもあったジュルジュ・クレマンソーの提案によってモネの作品『睡蓮』が収められることとなり、改修工事ののち、1927年オランジュリー美術館としてオープンしたとのこと。

更にその後、6年間にも及ぶ改修工事を経て2006年にリニューアル・オープンし、モダンな美術館へと変貌しました。


天井から自然光がさんさんと降り注ぐ楕円形の白い空間の2室は、いずれもモネの大作『睡蓮』のための展示室となっていて、これを見るために訪れる人が絶えません。
もちろん私も、この部屋に足を踏み入れることをずっと切望していました。


壁いっぱいに広がる幻想的な絵画によって得られる没入感。


そして、モネのタッチによるマチエールに魅了され。

素晴らしいアートにうっとりするこの感覚。
いつもブログを見てくださる皆さまに少しでも伝えられたらな、という思いで撮影してはいるのですが、私めなどの写真による画像では伝えきれないのがもどかしい・・・
アートは、やはり実物を体感するのが一番ですね。


ちょうど私が訪れた時は「Modigliani : un peintre et son marchand(モディリアーニ:画家とそのディーラー)」と題してモディリアーニ展が開催されていたのも嬉しいポイントでした。


オランジュリー美術館ではモディリアーニの作品は、下図の『ポール・ギヨームの肖像』など5点所蔵していますが、それ以外の絵画に加え素描や彫刻なども展示されており、見応えがありました。

オランジュリー美術館所蔵品:アメデオ・モディリアーニポール・ギヨームの肖像』(Amedeo ModiglianiPaul Guillaume.Nova Pilota

最後に、オランジュリー美術館の場所について、世界遺産情報と共に補足します。
前回の記事(https://calm-smile-chain.com/paris-museum-1/)にも記した通り、オランジュリー美術館ルーブル宮殿(Palais du Louvre)の敷地西側に広がるチュイルリー庭園(Jardin des Tuileries)の西端にあります。

オランジュリー美術館
Musée de l’Orangerie

住所:Jardin des Tuileries, 75001 Paris, France
Webサイト:https://www.musee-orangerie.fr/


そのすぐ西隣にある広場がコンコルド広場(Place de la Concorde)
こちらも世界遺産パリのセーヌ河岸(Paris, Banks of the Seine)」の構成資産の一つです。

フランス語でコンコルド(Concorde)協調共和という意味ですが、フランス革命時代(1789〜1799年)には「革命広場」と呼ばれたこの場所で、ルイ16世やマリー・アントワネットなど貴族や一般庶民たちがギロチン台で処刑されたという、暗い過去を持つ場所。
そんな陰惨な記憶を払拭するため、後にコンコルド広場との名称がついたのだそうです。

コンコルド広場の中心部には、1836年にエジプト政府からフランスへの親善の証として寄贈されたルクソール神殿(エジプトの世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」)のオベリスク(四角柱)が堂々とそびえ立っているのですが、この周辺は開催が迫っている2024年パリオリンピックの会場の一つとなるため、私が訪れた時にはその準備が進められていました。

中央に見える塔がルクソール神殿のオベリスク

厳かな歴史を持つこの場所が、なんだかゴタゴタした様子になりつつあるのが個人的にはちょっと残念な感じもしましたが、オリンピックで盛り上がるのも、世界人類共通の楽しみの一つですものね。
このために尽力してる方々がいるんだなと思うと、頭が下がります。

コンコルド広場
Place de la Concorde

住所:〒75008 Paris, France
Webサイト:https://parisjetaime.com/transport/place-de-la-concorde-p1981


そしてこの場所からだと、こちらもまた世界遺産パリのセーヌ河岸」の構成資産であるエッフェル塔もこのくらい見えて、改めて、パリにいるんだなぁー、と感慨深い気持ちになりました。


私にとって初めての貴重なパリ滞在。
このままここで感慨に浸っていたかったものの、残された時間はわずかなので、次の目的地であるオルセー美術館へと足早に向かいます。


あなたは
美術館における建築の歴史に
興味はありますか?


美しい大時計がシンボルとして有名なオルセー美術館(Musée d'Orsay)

アート好き必携 “パリミュージアムパス”の備忘録

〜買って良かったパリのアートスポット観光パス〜


2023年10月25日(水)、パリ滞在初日は、夜のパリを1人で2時間ほど歩き回りました。


そして20時半ごろホテルに戻り、ブルゴーニュからドタバタの移動の後でもあったので、すぐに寝てしまいたいくらいの疲れもありましたが、私には眠る前にしなければならないことがありました。

それはパリで巡りたいアートスポットの入館予約。

旅先ではアートをテーマに観光する私にとって、パリ市内・郊外にある50以上の美術館・博物館に入場することができる観光パス「パリミュージアムパス(Paris Museum Pass)」は必須のアイテムと考え、この2日(48時間)券を、日本を出る前にネットで抜かりなくゲット済みでしたが、このパスで訪れることができるいくつかの施設は予め入館時間を予約しなければならないのです。

と、そのような制約は多少ありますが、「パリミュージアムパス」を実際に購入して使用してみて大正解、買って良かった!と思えたので、このパスについて簡単に記録しておきます。

下図が、「パリミュージアムパス」のオフィシャルサイトで購入後、メールで届けられたパスです。


これを、紙に印刷したものか、スマホやタブレットの画面で表示させ、入場可能な施設の入り口で提示すれば、現地での支払い手続きなく入館することができます。

パスには、2日(48時間)、4日(96時間)、6日(144時間)券の3つがあり、例えば私が選択した2日券の場合、最初にパスのバーコードをスキャンされて入場した時から48時間が有効ということになります。

各チケットの料金は以下の通りです(2024年3月末日現在)。
■2日券(48時間):€62(10,141.46円)
■4日券(96時間):€77(12,595.04円)
■6日券(144時間):€92(15,048.62円)

また、インターネットで購入する場合は手数料もかかり、その金額はチケットの種類と枚数によって変わってきます。
2日券1枚の場合の手数料は、2.48ユーロで、この金額は私が購入した時(2023年10月15日)と変わりありません。
が、私が使用したパスの画像でお気づきかと思いますが、手数料込みで57.48ユーロ、パス自体は55ユーロでした。
値上がりしてます!
しかも、2024年3月末日現在の1ユーロは163.57円!!

私がパリへ行った時は、1ユーロは158円台でした。
その時でも、ユーロ高すぎ、フランス何もかもが高すぎ(涙)と思っていましたが、昨年のうちに行っておいて、本当に良かった・・・

この「パリミュージアムパス(Paris Museum Pass)」を購入できるオフィシャルサイトはこちらです。
https://www.parismuseumpass.fr/
(オフィシャルサイト以外にも、日本人向けの購入サイトもいくつかありますが、どれも割高になるのでここでは省きます。それらはキャンペーンなどで一見お得に見える時もありますが、最終的にはやはりオフィシャルサイトが一番と感じています。)

私は現地での時間を節約できるだろうと思いネットで購入しておきましたが、パリで購入することもできますし、その場合は手数料もかかりません。

パリミュージアムパス」の販売店は以下の通り(2024年3月末日現在)。
■パリの各美術館
■パリ シャルル・ド・ゴール空港、パリ オルリー空港内の観光案内所
■ギャラリー・ラファイエット(パリの人気百貨店)の観光案内所
■ディズニーランド・パリの観光案内所

奥に見える建物がフランスの老舗百貨店「ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)」
奥に見える建物がフランスの老舗百貨店「ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)


そして話は戻りますが、「パリミュージアムパス」で訪れることができる施設の中でも、予め入館時間を予約しなければならない所がいくつかあります。
予約必須施設は、以下の8施設です(2024年3月末日現在)。
シテ建築遺産博物館(Cité de l’architecture et du patrimoine)
コンシェルジュリー(Conciergerie)
オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ(Hôtel de la Marine)
ユダヤ歴史美術館(usée d’art et d’histoire du Judaïsme)
オランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)
ルーヴル美術館(Musée du Louvre)
サント・シャペル教会(Sainte-Chapelle)
ヴェルサイユ宮殿(Châteaux de Versailles et de Trianon)

この中から私は、オランジュリー美術館ルーヴル美術館サント・シャペル教会ヴェルサイユ宮殿は必ず予定に組み込みたいと思っていました。
それで翌日の朝イチで、パリ最古で最も美しいステンドグラスで知られるサント・シャペル教会へ行こうと考えていたのですが、いざネットで予約しようと試みると、どの時間もすでに予約がいっぱいで取ることができませんでした(泣)。
前日の予約でも、平日だし大丈夫だろうと、たかをくくっていたのが甘かった・・・

サント・シャペル教会(Sainte-Chapelle)に並ぶ長蛇の列
その翌日に私が実際に見たサント・シャペル教会(Sainte-Chapelle)に並ぶ長蛇の列


焦って、他の施設をチェック。
翌日(パリ2日目)の朝イチに訪れるのはオランジュリー美術館へと計画変更し、3日目には、元々考えていた通り、ヴェルサイユ宮殿ルーヴル美術館を無事予約することができました。

ヴェルサイユ宮殿ルーヴル美術館を同日にする?!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この日はちょうど金曜日でして。
ルーヴル美術館の開館時間は通常9時〜18時ですが、金曜のみ21時45分まで開館しているので、朝にホテルを出てヴェルサイユへ行き、夕方にパリへ戻ってきて夜にかけてルーヴル美術館を見学しようと考え、体力を要するのは覚悟の上で、そのような計画を立てたのです。

さて、これらの通常の入館料を確認してみましょう。
オランジュリー美術館:€12.5
ルーヴル美術館:€15
ヴェルサイユ宮殿:€24

以上で合計51.5ユーロです(それぞれネット購入すればさらに手数料がかかります)。
私は、加えて、オランジュリー美術館の後に、オルセー美術館(Musée d’Orsay)に行くことを計画していまして、こちらが14ユーロなので、合計65.6ユーロ。

美しい大時計がシンボルとして有名なオルセー美術館(Musée d'Orsay)
美しい大時計がシンボルとして有名なオルセー美術館(Musée d’Orsay)


というわけで、「パリミュージアムパス(Paris Museum Pass)」の元がしっかりと取れました〜♪

実を言うと、お高いユーロの昨今、ちょっとでも経費削減しようかとパリでのパス購入を検討した時もありましたが、経費削減と言ってもネット購入手数料は2.48ユーロ(400円くらい)、現地での時間節約の点も含めて結果的に、オフィシャルサイトからインターネット購入しておいて良かったと思っています。

なお、「パリミュージアムパス」を利用して、予約済みの施設に入館する時は、パスと、施設の予約チケットの両方を提示する必要があります。
なので私は、パスを印刷した用紙と、予約した施設はスマホの画面で、一緒に提示するという方法を取り、スムーズに通過することができたので、その点においても満足してます。

というわけで、「パリミュージアムパス」については、結論として、買って良かったと思えたということなのですが、パリ滞在初日のホテルで、このパリアート巡りのための検索と予約作業をしていたらあっという間に23時を回ってしまい、翌日に備え体力を温存しなければと、慌ててシャワーを浴び、ベッドに滑り込んだのでした。





当ブログをご覧になってくださっている皆さまへ。
いつも当サイトを訪問してくださり、本当にありがとうございます。
言い訳になってしまいますが、現在、過渡期にある保育園のマネジメントを担う私の、今ここで果たすべき使命がありまして、ブログアップのタイムラグが増して申し訳なく感じています。
しかしながら、そんな現実を過ごす私にとって、旅の記録は豊かな人生を歩む糧の一つなので、続けていきたいと思っています。
次回こそ、写真と共にパリでのアート巡りをアップしますので、よろしければ引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。
相変わらず牛歩ですが、どうぞよろしくお願いいたします。


あなたが旅行地で重宝する
⚪︎⚪︎パスには
どんなものがありますか?

2023 フランスブルゴーニュ 3日目(最終日)

〜ユネスコ世界遺産「フォントネーのシトー会修道院」〜


ブルゴーニュの友達の家に2泊させていただき、いよいよ最終日となる3日目。
初めてのフランス。
その1日目そして2日目とブルゴーニュの世界遺産を楽しみましたが、この日も飽きることなく、世界遺産!
基本的にいつも旅のテーマは「アート(芸術)」である私にとって、世界遺産に触れることはアートに触れることでもあり、価値ある世界遺産を連日訪れることができ、本当に幸せな毎日でした。


ブルゴーニュ滞在最終日に訪れた世界遺産は「フォントネーのシトー会修道院(Cistercian Abbey of Fontenay/Abbaye cistercienne de Fontenay)」です。


友達の家から北部へと車で1時間半ほど、モンバール(Montbard)という小さな町にあります。
川が流れる森に囲まれ、漂うのは静寂感のみ。


フォントネーのシトー会修道院(Cistercian Abbey of Fontenay/Abbaye cistercienne de Fontenay)」については、ユネスコHPの見出し説明では下記のように述べられています。

この素朴なブルゴーニュ修道院は、1119 年に聖ベルナール(ベルナルド/バーナード)によって設立されました。教会、回廊、食堂、寝室、パン工房、製鉄所があり、初期のシトー会修道士達が実践していた自給自足の理想をよく表しています。

https://whc.unesco.org/en/list/165/


設立年については、フォントネー修道院(Abbaye de Fontenay)の公式HP(https://www.abbayedefontenay.com/ja/)によると1118年とされているので、この1年の違いがなんなのかよくわかりませんが、いずれにせよ、現存する世界で最古のシトー会修道士の大修道院なのだそうです。


さて、お気づきでしょうか?
ここでも出てきましたね、聖ベルナール(St Bernard)
前日に訪れた世界遺産「ヴェズレーの教会と丘(Vézelay, Church and Hill/Basilique et colline de Vézelay)」に関わった人物で、ユネスコHPでも説明されていた聖人の名前です。
(ブログにも記載したのでこちらも併せてどうぞ→https://calm-smile-chain.com/heritage-vezelay/


1090年、フランスブルゴーニュで、騎士である父と貴族出身で信仰心ある母のもとに生まれたベルナールは、彼が幼い頃に亡くなってしまった母の影響もあり、修道士になったといいます。

一方、シトー会(Cistercians)とは、カトリック教会最古の修道会であるベネディクト会(Benedictine Order)から派生したのですが、同じくベネディクト会から派生したクリュニー会(Cluny)の強大な資産と権力による贅沢な振る舞いに反発して、1098年に発足し、修道士としての清貧を守ってきたのだそうです。


ベルナールは、1112年、23歳の時に自身にとって理想的であったシトー会へ入門を果たすことができました。
そして、1118年にこのフォントネー修道院(Abbaye de Fontenay)を創設したのです。
(もしかしたら、ベルナールがこの修道院を作ることに着手したのが1118年で、正式に完成したのが1119年ということでしょうか…)


シトー会修道士は、華美なクリュニー会とは異なり、染料を用いない白い修道服を着たことから「白い修道士」とも呼ばれているそうですが、フォントネー修道院も華やかな装飾というものがなく、そのおよそ究極とも言える地味さが、むしろ厳かさを際立たせているように思います。


この質素ながらも厳かな大修道院教会の一角に佇む聖母子像の、幼子イエスと聖母マリアが笑顔で見つめ合ったその表情が、とても優しく愛情豊かに表現されており、ベルナールの想いを伝えているように感じます。
(ベルナールについては後半で改めて述べます)


教会に直接繋がっている建物の2階には、共同寝室があります。
多い時では300人ほどの修道士のための寝室となったそうですが、木造の連続アーチによる天井の作りは圧巻で、船底をひっくり返したような設計が、なんとなくノアの方舟を彷彿とさせます。


修道士達が写本の作成や、革や織物の加工をしたという修道士部屋も、ロマネスク様式の特徴である半円筒型の二重アーチと支えとなる分厚い壁や柱からなり、その簡素なデザインが美しい。


中庭を囲んだ回廊も必見です。
正にシンプル・イズ・ベスト。シンプルゆえに際立つ美しさ。


修道士達は、ここを聖書を読みながら歩き、瞑想していたのでありましょう。


私たちもここをゆっくりと一周しましたが、映画でも見たことがあるようなシーンを、ありありと思い描くことができました。



外に広がる庭園も壮観でした。
綺麗に整えられた緑に癒されます。


次の建物は鍛冶場(製鉄所)。


当時の様子が再現された博物館となっています。


ブルゴーニュ観光の1日目に訪れた、世界遺産「ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ(The Climats, terroirs of Burgundy/Les Climats du vignoble de Bourgogne」の構成資産地域内にある「シャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョ(Château du Clos de Vougeot)」もシトー会によるもので、そちらはワインが修道院の財源でしたが(https://calm-smile-chain.com/climats-burgundy/)、ここフォントネー修道院では、近隣で採れる鉱物を用いた冶金業が重要な財源だったのだそう。


上の写真の燃える石炭は流石に模型ですが、実際に動かされている風車の姿は、再現とはいえ、迫力がありました。


サン=ベルナール渓谷とフォントネー川の合流点地点に位置するフォントネー修道院は、その川の流れを利用し、水力で鉄を打っていたのだそうです。


いくら静かに生きたいと言っても、神に祈るだけとか、単なる布教活動だけでは食べていけませんものね。
質素な修道士達がいかに工夫を凝らして生活していたかがよくわかりました。


最後に、聖ベルナール(St Bernard)のことがとても興味深く思えたので、もう少し彼について記しておきたいと思います。

観想的生活を送りたいというのが本音であったベルナールでしたが、その彼の実直な人格が、名声を高め、シトー会における影響力を増し、否応なく世俗的世界へと巻き込まれていくこととなりました。
静かに過ごしたかったベルナールの想いとは裏腹に、教会の争いの中で陣頭を取ることになり、晩年には十字軍の勧誘演説(1146年:ヴェズレーでの説教)をし絶大な支持を得ますが、1148年に十字軍は惨敗してしまいました。

しかし、この時で第2回十字軍。
この後も十字軍による遠征は何度も何年も続いたのは歴史上有名なことです。
その長い宗教争いの中では初期にあたりますが、第2回十字軍が敗北した時点でベルナールは、

主はわたしたちの罪を怒られて、そのあわれみによってではなく、その正義によって、すぐさまわたしたちを裁かれました。主は、ご自分の民を甘やかさず、主の名声さえ惜しいとは思われなかったのです。教外者は、おまえたちの神は今どこにいるのか、と言っているのではありませんか。そしてだれが、それを怪しみましょう。教会の中堅信者と呼ばれる者が荒れ野で行き倒れ、刃で切られ、飢饉のために滅ぼされたのです。喜びの福音を伝え、平和を述べ伝える者の足は、どんなに迷うことでしょう。わたしたちは『落ち着きなさい』と言っても、落ち着かないのです。わたしたちは、幸運を約束したのに、災難をまのあたりに見たのです。

引用:池田敏雄「聖ベルナルド」(アルバ文庫) p.103

と、十字軍の罪を認め反省しています。
でもその後も争いが続いたということは、残念ながら、この時の彼の想いに関しては理解が集まらなかったということでしょう。

ベルナールは1153年に、クレルヴォー修道院(Clairvaux Abbey:1115年に創設されベルナールが初代院長となった修道院で当時の建物は廃墟となり現在の建物は1708年のもの)にて生涯を閉じ、死後に聖人に加えられ聖ベルナールと呼ばれるようになりました。

神への祈りそして労働を手段として人々に奉仕するシトー会の主要人物ベルナールについて深掘りしていたら、なぜ、人は争う時には団結するのに、平和のために団結できないのだろうと、今も昔も変わらない人間の在り方というものを感じ、切なくなりました。

ただ、このフォントネー修道院が現在も当時とほとんど変わらないままひっそりと残されているのは、ベルナールの想いが生き続けているという光の側面なのかもしれません。

フォントネー修道院
Abbaye de Fontenay
住所:21500 Montbard, France
Webサイト:http://www.abbayedefontenay.com/


静寂の中にあるユネスコ世界遺産「フォントネーのシトー会修道院(Cistercian Abbey of Fontenay/Abbaye cistercienne de Fontenay)」を後に、慎ましく謙虚な心を持って生きてゆかねばと思いつつ、いよいよ花の都パリへと向かいます。


あなたが
瞑想にふけるのは
どんな時ですか?



映画「ミッドナイト・イン・パリ」で巡る名所旧跡

名作映画で知るパリの名所 ーそれは世界遺産やアートの学び


アート好き、そして、SF映画(特にタイムトラベル系)が好きな私にとって、愛してやまない名作映画「ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)」。

2回にわたってその概要と登場する偉大なアーティスト達についてレポートしてきましたが、念願だったフランスへの一人旅を目前に、最後は、主人公ギルが立ち寄った名所について、ほんの少しの雑学を交えつつ記述しておきたいと思います。

モネの家と庭園(Maison et jardins Claude Monet)

フランスのノルマンディー地方、パリから西へ70kmほどのジヴェルニー(Giverny)という小さな村にモネの家と庭園があります。
印象派の巨匠クロード・モネ(Claude Monet、1840-1926)はここで43歳から86歳で亡くなる時までを過ごし、大作「睡蓮(Les Nymphéas)」を生み出しました。
映画「ミッドナイト・イン・パリ」は、舞台のほとんどがフランスの首都パリですが、パリ郊外も一部登場します。
先のブログ(https://calm-smile-chain.com/midnight-in-paris/)で概要を記述した通り、映画はジャズ名曲「Si Tu Vois Ma Mère」に乗せて流れる現代の何気ないパリの日常の映像というオープニングで始まるのですが、曲の終了と同時に、物語はこの美しいモネの庭を舞台に幕を開けます。

エッフェル塔(Tour Eiffel)

パリといえばコレ、ですね。
行ったことがなくても、興味がなくても、知らない人はほとんどいないでしょう。
世界遺産「パリのセーヌ河岸(Paris, Banks of the Seine)」の構成資産の一つでもあります。
324mもの高さを誇るこの巨大で芸術的な鉄の塔が、パリの象徴として映画に幾度も現れます。

シャンゼリゼ通り(Champs-Élysées)

シャンゼリゼ通りもまた世界遺産「パリのセーヌ河岸」の構成資産の一つで、その名称は誰もが知るであろう有名な大通り。
エトワール凱旋門(Arc de triomphe de l’Étoile)からコンコルド広場(Place de la Concorde)まで全長約2.5kmに渡る緩やかな坂道の美しいマロニエ並木からなる通りで、老舗ブティックやレストラン、カフェなどで賑わっています。
なお、コンコルド広場は世界遺産「パリのセーヌ河岸」の構成資産であるものの、エトワール凱旋門は構成資産となっていません。
凱旋門”といえば、エトワール凱旋門からコンコルド広場を挟んで対極に位置するカルーゼル凱旋門(Arc de triomphe du Carrousel)が「パリのセーヌ河岸」の構成資産となっています。

ヴェルサイユ宮殿(Château de Versailles)

パリから約20km南西に位置するフランス北部のイル=ド=フランス地域圏(Île-de-France)のコミューン(基礎自治体)であるヴェルサイユにある壮麗な宮殿で、世界遺産「ヴェルサイユの宮殿と庭園(Palace and Park of Versailles)」として登録されています。
映画の前半で、主人公のギルとフィアンセのイネズ、そしてたまたまパリで会った友人夫婦が、4人で連れ立ってヴェルサイユ宮殿の庭園を歩くシーンがあり、その広大さと美しさを見て取ることができます。

ロダン美術館 (Musée Rodin)

その名の通り、かの有名な彫刻家オーギュスト・ロダン(Auguste Rodin、1840-1917)の作品を一堂に展示している美術館で、ロダンが1908年から亡くなる1917年までを過ごしたという館でもあります。
誰もが知る名作のブロンズ像「考える人(Le Penseur)」が置かれた庭園はバラの名所としても知られており、映画ではギルたちがその美しい庭園を散策するシーンなどが撮影されています。

サンテティエンヌ・デュ・モン教会(Église Saint-Étienne-du-Mont)

セーヌ川を背にパリ5区に位置する聖ジュヌヴィエーヴの丘(Montagne Sainte-Geneviève)に建つ、ゴシック様式とルネサンス様式の要素が組み合った教会。
特に美しい装飾が施されたファサードが印象的で、パリのランドマークであるとともに、静寂で神聖な雰囲気に包まれた内部は、訪れる人々に穏やかな安らぎをもたらします。
映画ではこの場所がギルがタイムスリップするための起点となっているのですが、聖ジュヌヴィエーヴパリの守護聖女だそうで、彼女の墓を収めたのがこの教会とのことで、なんだか優しく守ってくれそうな気配が、物語も映画の観客である私たちも幸せになれそうな予感がしますね。

ポリドール (Polidor)

1845年にオープンした歴史のあるレストランで、作家アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway、1899-1961)が通った店としても知られています。
映画の中では、ギルが過去にタイムスリップしてヘミングウェイと出会う場所で、ギルが現代に戻るとコインランドリーになってしまいます。
しかし実際(映画ではない私たちの現実世界)は、今も昔から変わらぬ所で、ヘミングウェイに愛された時と同様、19世紀半ばの世界を思わせる雰囲気のままに営業している人気のレストランで、フランスの家庭料理を味わうことができるのだそうですよ。

サン・トゥアンの蚤の市(Marché aux Puces de Saint-Ouen クリニャンクールの蚤の市)

100年以上の歴史を持つパリ最大級のアンティークマーケットで、掘り出し物の宝庫と言われ、世界各地からスタイリストやデザイナーなど、インテリアの業界人が大勢訪れています。
映画では、広大なマーケットの敷地を散策していたギルが、聴こえてきたコール・ポーター(Cole Porter、1891-1964)の音楽に魅かれて入った骨董品店で、物語の鍵の一人である女性ガブリエルと出会うことになります。

オランジュリー美術館 (Musée de l’Orangerie)

モネセザンヌルノワールマティスピカソモディリアーニなどの、印象派やポスト印象派の作品で知らる美術館。
「オランジュリー」とは、フランス語で「オレンジ畑」「オレンジ温室」の意味で、もともとはチュイルリー宮殿(かつてルーヴルの西側にあった宮殿で、その庭が現在は「チュイルリー公園(Jardin des Tuileries)」として人々の憩いの場となっている)のオレンジ温室だったことから名付けられました。
モネの名作「睡蓮」が所蔵されていることでも有名で別名として「モネ美術館」とも呼ばれています。
映画の中では、ギルとイネズその友人夫婦が一緒に、その大作が掲げられている大きな円形の展示室を訪れる場面が描かれています。
なお、ここも世界遺産「パリのセーヌ河岸」の構成資産です。

縁日博物館(Musée des Arts Forains

19世紀の当初はワインの貯蔵庫として使用されていましたが、その後、所有者のジャン=ポール・ファヴァン(Jean-Paul Favand)氏によってコレクションされたメリーゴーランドの乗り物やアーケードゲームなど、遊園地のオブジェを集めた私立博物館としてオープンしました。
映画ではギルが過去の時代へと3度目にタイムスリップする場所で、F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald、1896-1940)が主催するパーティー会場として描かれていますが、今も見学可能で100年以上前の遊具を体験することができるという大人も遊んで楽しめる博物館です。

サクレ・クール寺院(Sacré-Cœur Basilica)

モンマルトルの丘の頂上に位置し、パリの美しい景色を一望することができるロマネスク様式とビサンチン様式が融合した白亜の美しい教会です。
映画では、この寺院の裏手の階段を、ギルが過去の世界で一目惚れしたアドリアナと語り合いながら降りるシーンがあります。

セーヌ川(La Seine)

フランスを代表する美しい川で、全長777キロメートルに及び首都パリを流れます。
セーヌ川の河岸のうち、シュリー橋(Pont de Sully)からイエナ橋(Pont d’Iéna)までのおよそ8kmほどが、すでに述べている通りの世界遺産「パリのセーヌ河岸(Paris, Banks of the Seine)」として登録対象とされています。
映画には何度も登場するのですが、パリの美しい街並みを反映する鏡のような存在であるこの河岸が、映画の終盤で夜にライトアップされて映し出された景色が特に幻想的です。

ラ・トゥルネル通り(Quai de la Tournelle)

セーヌ川の南岸に位置し、パリ5区と12区の境界に沿った通り。
映画ではこの河岸のブキニスト(セーヌ河岸に沿って屋台のスタイルで営業する古本屋)で、ギルがアドリアナが書いた日記を購入します。

ノートルダム寺院(Cathédrale Notre-Dame de Paris)

“パリ発祥の地”とも称されるシテ島(Île de la Cité)に建つゴシック様式の大聖堂で、その美しい建築や彫刻、ステンドグラスなどから美術史上でも重要な位置付けとされています。
世界遺産「パリのセーヌ河岸(Paris, Banks of the Seine)」の構成資産の一つでもありますが、2019年の4月に火災が発生し尖塔が焼け落ちた事件は記憶に新しく、今も修復が続けられています。
映画「ミッドナイト・イン・パリ」が制作されたのは2011年のこと。当時の姿を拝見してみたかったものです。

ジャン23世公園(Square Jean XXIII)

その名称は、教皇ヨハネ23世Jean XXIII)の名にちなんでつけられ、シテ島の上流部分、ノートルダム大聖堂裏手にある公園で、訪れる人々に癒しとくつろぎを与える空間です。
映画では、ギルがロダン美術館で出会ったガイドとこの公園のベンチで腰掛け、アドリアナがフランス語で書いた日記を英語へ翻訳して聞かせてもらいます。

デロール(Deyrolle)

1831年に創業し、昆虫や貝殻、あらゆる種類の動物の立派な標本や剥製が並ぶ専門店で、今も多くの人が訪れる場所。
映画では、1920年代のパリのこの場所でパーティが行われており、ギルがアドリアナと再会し連れ出します。

ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge)

ムーラン・ルージュはフランス語で「赤い風車」という意味で、パリ北部のモンマルトルにある世界的に有名なカバレット劇場(キャバレー)です。
1889年に開業し、特にモダンなカンカンダンスのショーで知られ、見事なエンターテイメントで多くの人々を魅了してきました。
映画では、ギルがアドリアナと一緒に1920年代からさらにさかのぼってベル・エッポクの時代へとタイムスリップすることとなり、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec、1864-1901)とここで出会います。

シェイクスピア・アンド・カンパニー書店(Shakespeare and Company)

1919年に創設され、パリにおける英米文学とモダニズム文学の殿堂として由緒ある書店。
映画にも登場したアーネスト・ヘミングウェイスコット・フィッツジェラルドガートルード・スタインマン・レイなどもこの書店で多くの時を過ごしたといいます。
映画の終盤で、主人公のギルがこの書店から出るシーンがあります。

アレクサンドル3世橋(Pont Alexandre III)

1900年のパリ万国博覧会に際して建設されたセーヌ川に架かる橋で、世界遺産「パリのセーヌ河岸(Paris, Banks of the Seine)」の構成資産の一つです。
映画のラストシーンで登場するのがこの橋で、ギルがとある女性と再会します。
雨が滴りキラキラと輝く情緒あるパリの風景、物語の流れにも思わず頷いてしまうシチュエーションで、ホッと和むエンディングに静かで穏やかな感動を覚えます。

ここまでざっと挙げてみましたが、正確には、映画「ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)」ロケーションとなった場所は他にもあるんですよね・・・


そして、私にとっては初のフランスへの一人旅、念願のパリ滞在、といってもほんの短時間。
ここに挙げたどれだけを訪れることができるのか。

次は、自分で撮影する写真とともに、さらに楽しんでレポートしたいと思っています。

サラリーウーマンでありながら、自由とは言い切れないこのご時世に、ほんの数日とはいえ日本から海外へ旅に出られることに心から感謝して・・・
本当に、ありがとうございます。
行ってまいります。


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