心を健やかで穏やかに保つヒント集「上手な心の守り方」

枡野俊明住職による禅的心のセルフケア
「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」枡野俊明(著) 知的生きかた文庫

先日、尊敬するかたとしてご紹介させていただいた枡野俊明ご住職による本
上手な心の守り方 〜不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント〜
ですが、既に希少なようですね・・・
これも、ストレス社会と言われる現代のあらわれかと思います。

先日の記事↓
本当の幸せに繋がる枡野俊明住職の教え/まずは「上手な心の守り方」からご紹介




こちらの本は、全章において、右側のページに文言が一言書かれて、左側のページにその解説がなされ、見開き1ページで一つのポイントに絞られているので、活字が苦手なかたでも触れやすく、万人にとても親しみやすいものとして構成されています。
本好きなかたなら、スラスラ、一晩で読み終えてしまうと思います。

私の場合、本を読む時は、感銘を受けた部分や、自分の中で大切にしたいと感じた部分には、線を引いたり、付箋をつけたり、少なくとも端っこを折ったりして、後から見直した時にも印象に残った部分であったことをわかるようにしているのですが、この「上手な心の守り方」はこんな感じで、だいぶ折り目がついてしまっています。
この本を購入した時はまさに心が弱っている時だったので、なおさらだったのだろうと思います。

現在の私は回復しているので、今ならこれほど印はつかないと思いますが、調子がそれなりに良い時こそ、忘れてはならないなと感じる部分もたくさんあったりします。


さて今回は、頑張ってもうまくいかない自分に落ち込む時や、自分以外のできない誰かの言行にイライラしてしまうような時に、思い出したいメッセージからピックアップして、ご紹介させていただきますね。

1章 まず、自分を嫌わない
 〜「心を守る」ための絶対のルール
 より


不完全でよしとする



「完璧」なんて、世の中にない


すぐに「自分の努力不足のせい」にするのをやめよう


上手な心の守り方 p.20-21


禅では「完璧」「完全」という概念を否定する。
西洋では、寸分も狂いなく左右対称、これ以上の入れようがない形を「完全な美」とするのに対し、禅に立脚した美意識を持つ日本では、その完全を一度壊して、自身の思いや人間性などを加えていく。たとえば抹茶茶碗の形のゆがみや色ムラなどのあるものが「不完全の美」として尊重される。

「物事にはすべて完全・完璧はない

「どこまで行っても、その先に努力の世界が開けている」

努力に終わりはないのだから、常に努力が不足していて当たり前。
何かうまくいかないことがあるから「努力不足」なのではなく、うまくいこうがいくまいが、さらに努力する余地がある、ということ。
うまくいかないからと自分の努力不足のせいにして落ち込むことに意味はないと考え、「不完全の完全」を目指すことこそが尊いのだ。

そのように、枡野俊明ご住職は教えてくださっています。
努力に終わりはないのだから、常に努力が不足していて当たり前」という発想、目から鱗ですね。
そして、「不完全の美」から「不完全の完全」とは、深い哲学ですが、この禅的思考は素敵ですし、心の拠り所としたいです。


あなたは
完璧だけを
求めていませんか?


「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」枡野俊明(著) 知的生きかた文庫
「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」枡野俊明(著) 知的生きかた文庫

CAT ART展@石ノ森萬画館

東日本大震災から復興した石巻で楽しむ面白建築&アート+海の幸


この漫画大国日本では知っているかたも多いとは思いますが、宮城県の北に位置する石巻市には、日本マンガ界の巨匠・石ノ森章太郎の名がつく博物館「石ノ森萬画館」があり、地域を漫画の街として盛り上げています。

石巻駅構内にて

私は特に漫画ファンではないですが、石ノ森萬画館についてはずっと前からあの奇抜な形状の建物が気になっていました。

海に囲まれた島に佇む、宇宙船のような建物「石ノ森萬画館」

いつか行こうと思いつつも、これまで通り過ぎたことしかなかったのですが、面白そうな展示会がされてるからと友達が誘ってくれて、先日、ようやく訪れることができました。

石巻駅前
石巻駅の建物もそこかしこに石ノ森萬画キャラ
石巻駅の喫茶店も石ノ森萬画キャラ
石巻駅正面

石ノ森萬画にて開催されている特別企画展は「CAT ART展 ~シュー・ヤマモトの世界~」。
期間は2020年9月12日(土)〜11月29日(日)です。

アメリカを拠点に活動するイラストレーターSHU YAMAMOTOの、美術史を彩る絵画をモチーフにしたCAT ART(キャットアート)による、多くの人を笑顔にさせる面白可愛い展覧会です。

猫または漫画または美術好きには面白く、年齢層も幅広く楽しめる展示です。

猫・漫画・美術の3つとも好きなかたにはたまらない企画ではないでしょうか。

石ノ森萬画館の付近は散歩にも最高です
そこだけ近未来な感じの、石ノ森萬画館の風貌
石ノ森萬画館の正面玄関
石ノ森章太郎氏が「漫画」を「萬画」と表現したので、この表記なのだそう
漫画な世界が見えてきます・・・
石ノ森萬画館2階の展示室入口
展示は撮影可能
美術好きじゃなくても教科書とかで見たことのある親しみある絵がたくさん
グスタフ・クニャムト「アデーレ・ニャウアーの肖像」(元はグスタフ・クリムト「アデーレ・バウアーの肖像」)
それぞれに付いているタイトルとコメントが、ネコ目線で笑えます
抽象芸術までネコ化・・・

個人的に特に面白いと思ったのは、モンドリアンコンポジション(赤と青と黄色で構成されているアノ絵)までネコ化されていたところ。モンドリアンじゃなくて、ニャンドリアン作です(笑)

石巻は東日本大震災の被災地。被災当時から復興への様子も廊下に展示されていました。この奥に展望喫茶があります。
石ノ森萬画館3階の展望喫茶から見た景色
展望喫茶の窓の外にも石ノ森萬画のキャラクターが・・・
石ノ森萬画館のリーフレット
石ノ森章太郎萬画、現代のお子様にはあまり馴染みないでしょうが、老若男女に楽しんでもらいたいという思いが伝わる
いしのまき元気いちば」で新鮮な海の幸や宮城の食材を購入できる(この写真の右手)

萬画館のある場所の対岸側には「いしのまき元気いちば」というお土産とレストランの広い施設があります。
新鮮な海の幸がお得に購入できるので、お車のかたは是非、クーラーボックスご持参で!

私が訪れた時には、秋刀魚や牡蠣など、焼きたてを食べることができました♪

宮城県石巻市は東日本大震災の甚大な被害を受けた場所ですが、世界を誇る漫画と新鮮な海の幸で盛り上げようと、頑張っています。
石ノ森萬画館は、休日でもそんなに混まない意外な穴場かもしれませんので、今回のCAT ART展をきっかけに足を運んでみるのはいかがでしょうか・・・?

石ノ森萬画館
住所:〒986-0823 宮城県石巻市中瀬2−7
Webサイト:https://www.mangattan.jp/manga/



あなたは
萬画の国・いしのまき
をご存知でしたか?

郁子さんのやさしくてあたたかな絵画作品

仙台の「カフェ&ギャラリー ガレ」でほっとするひととき


芸術の秋。アート好きには嬉しい響き・・・
今回は、臨床美術ボランティアを通して親しくなった福井郁子さんからご案内をいただき、仙台立町の住宅地に佇むカフェ&ギャラリー ガレ(Galle)さんで開催されている絵画展に行って来ました。


「まど展」と題された宮城県の画家さん6人による絵画展。
2020年11月2日(月)〜11月14日(土)、絵を愛する人をあたたかく見守っていらっしゃるカフェ&ギャラリー ガレさんでの展示。


カフェの入り口。この素敵なドアを開けるのが好きです。


こぢんまりとして落ちく店内に画家さんたちの作品が展示されています。


6人の画家さんによる作品たち。
それぞれの個性ある表現を楽しませていただきました。


以下の3点はいずれも郁子さんの作品です。
今回は静物画を中心に展示されていました。


こちらの2点は、臨床美術プログラムによるオイルパステルで描かれた作品。


このような形で、何気に臨床美術の認知活動にも取り組まれていらっしゃいます。


美味しいコーヒーもご馳走になり、穏やかな時間を過ごさせていただきました。

ところで、今回私がお邪魔した際には、こちらのカフェが入ったマンションが外壁工事中でしたので、外観は、昨年夏に撮影させていただいたものをアップしますね。


いつも季節を感じる花々で彩られているのが素敵で、カメラのシャッターを切らずにはいられません。


こちらは、その時開催されていた、同じく郁子さんとお友達でいらっしゃる安伊子さんの二人展の様子です。


郁子さんは、ここカフェ&ギャラリー ガレさんで定期的に展示をされています。

さらに過去に遡って、こちらは2018年12月に開催された個展のお知らせ。
(残念ながらその時はカメラ持参せず)


郁子さんにお会いし、そのやさしさとあたたかさ溢れる作品たちを拝見させていただく度に、心が安らぐとともに、アート好きな人間として心地よい刺激を受けています。

ちなみに、郁子さんがよく表現技法として使われている塩水彩。
私も郁子さんにその手法を教わってから、時々楽しんでいます。


この水彩技法については以前詳しく記載した通りです。
当サイトの背景画像について/誰でも手軽に楽しめる♪ 塩を使った水彩技法

絵が苦手な人でも、誰にでも気軽に楽しんでいただける技法ですので、芸術の秋、よろしければお試しになってみてください♪

 

カフェ&ギャラリー ガレ(Galle)
住所:宮城県仙台市青葉区立町21
電話:022-265-7063
営業:
 月〜金 10:00~18:00
 土曜日 11:00〜18:00 
 日曜・祝日定休
 (展示会の最終日などは営業時間が短縮されます)
Webサイト:http://cafegallesendai.cocolog-nifty.com/blog/


あなたも
芸術の秋
楽しんでみませんか?


紅葉の秋保プチ旅

自然と美食と芸術を満喫する秋の一日


爽やかな朝を迎え、素敵な日になりそうな予感のした本日は、まさに充実の一日でした。

友達二人と、秋保(あきう)へのプチ旅。
午前9時30分に南仙台駅で待ち合わせで、友達が車で迎えに来てくれて、そこから秋保へ向かいました。

さて、秋保といえば、「秋保温泉」♪
温泉地として有名ですが、宮城県民の私たち、今回は温泉以外で楽しみます。

まず立ち寄ったのは、「アグリエの森」。
広場もあって、家族連れにはうってつけなロケーション。

ここは、お茶の井ヶ田が運営する施設なんですって。
おなじみのお茶の井ヶ田のお土産のほか、地元から県外の様々な製品や、新鮮なお野菜や生花など、広い館内にたくさん並んでました。

次に向かったのは、「万華鏡美術館」。

1999年にオープンしたこの施設、実は世界初の万華鏡専門の美術館なんだそうです。
出身県に‘世界初’があるって、誇りですね。

ちょっとシュールなゾウさんがお出迎え。
(ボタンを押すと)シャボン玉を吹いてくれます。
入ってすぐのところに大きな万華鏡が置いてありました。
お花が飾られた台を回しながら覗くととっても綺麗!早速心を掴まれます。
カメラで撮影すると・・・
展示の一部は撮影が可能です。
これも万華鏡。
鏡のマジック。面白い♪
友達に向こう側に行ってもらうと・・・
ウケる・・・
ちょっと何やってるかわかりませんが・・・
これも、ローマの真実の口を模したユニークな万華鏡。

想像以上に楽しめました。
万華鏡って奥が深いんですね。綺麗だし、色々感動。

次に向かったのは、「秋保・里センター」。
カラフルな植物で彩られていました。

ここには、名取が本店でハンバーグが有名な「HACHI(ハチ)」が入っているので、こちらで昼食にしようと思ったのですが、ちょうどぴったりお昼時だったこともあり、とっても混んでました・・・

そこで、昼食はずらして、先に進もうということになり、次に向かったのは、勝負の神様として知られる「秋保神社」。

立派なイチョウの木と立ち並ぶ願掛けの旗。
神様のいるところって、なぜだか神秘的な雰囲気です・・・

それぞれの人生に勝つことをお祈りしたら、次に向かったのは秋保でとっても有名という豆腐屋さん「太田とうふ店」へ。

お店は、秋保大滝に向かう途中、ほとんど何もない通りにポツンと建っています。
県内外からお客さんが来られるということで、夕方には売れ切れちゃうそうです。
私たちが立ち寄った時で午後1時くらいでしたが、すでに品薄でした。
というわけで、一人でこんなに購入。
お店で購入して、そこで開封して食べていくこともできます。
気持ちの良い軒下で、実食。
お豆の濃厚な旨味を堪能できるお豆腐に感動します。

次に向かったのは、「秋保大滝」。

まずは不動尊でお参り。
山をくだって、美しい紅葉と流れ落ちる滝を拝みます。

ちょっとした山歩きで運動して、今度こそ昼食を。ということで、不動尊向かい側にあるお蕎麦屋さんへ。

手打ちそばの店「二代目たまき庵」は天然舞茸の天ざるが有名なのだそう。
是非食べたいと入店しましたが、ここも並んでました。
でも二組ほど待てば座れるということだったので、待つことにしました。

ようやく食にありつけた時は午後3時でした。
でも、ここに来なければ食べられない天然舞茸の天ぷらとお蕎麦。
とっても美味しかったので、結果ここにして良かったと3人で幸せに浸りました。

こちらは麺がとても太い田舎蕎麦。
私は、本日残り一食という粗挽そばをいただきました。
麺の太さの違いは一目瞭然ですね。

そして最後に向かったのは、実は本日の真の目的であったところ。

ガラス工房 尚」さんは、今日(というか、いつも)車を出してくれた美香さんの勤務先。
美しくて個性的な作品の展示は圧巻です。
白を基調としたギャラリー兼カフェ。
落ち着く空間で、美味しいコーヒーや紅茶をいただくこともできます。
本日(2020年11月8日)まで、仙台出身の旅する写真家伊藤秀海( Shu Ito )さんの写真が展示されていました。
特殊プリントされた美しい写真が、ガラス工房尚さんのガラスフレームで飾られるという貴重なコラボレーション。

秀海さんの世界観から生まれる写真たち、素敵です。
今日は、それらの美しい写真のみならず、実際に秀海さんにお会いし、お話することができて、私は幸運です!

秀海さんの情熱を直に感じて、やっぱり私も楽しく写真を撮り続けようって改めて思えました。
ありがとうございました!!

三島とニュープリマス「Just Like Sisters
ニュージーランド写真集 「LIKE NO OTHER

写真集は二冊とも購入し、サインもいただけたので、大事にします。
そして、世界を股にますます活躍されること間違いないであろう伊藤秀海さんを、私は心から応援します。

工房をあとにしたのは、午後5時半くらいでした。すっかり真っ暗・・・

最後にご参考まで、今回の秋保の旅での訪問先の位置関係は下図の通りです。
(クリックすると拡大ページが開きます)

宮城県の山の中につき、車で動くのが一番です。
バスも出ていることは出ているのですが、移動ポイントが広範囲となるので、車をお持ちでないかたや県外からお越しのかたはレンタカーのご利用が便利です。


秋保を満喫した充実の一日。
コロナで自制状態が続いていて、日本から一歩でも出たくてウズウズしているこの頃ではありますが、こうやって地元を改めて見直すことで感じる幸せもあるわけで、それは本当にありがたいことです。
幸せに生かしていただけていることに、心から感謝します。

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あなたは
どんな秋を
感じていますか?

創作造形活動の効能は誰にも有効

臨床美術は難しいものではないのです♪


時々このブログでも述べさせていただいている「臨床美術」についてですが、気になるけど「臨床」ってことは患者さん向けなの?とか、なんだか難しそうという声もお聞きする、今日この頃です。

以前ちょとだけご紹介しました「改訂新版 臨床美術」という本、こちらは臨床美術を知っていただくものとして、一般向けに刊行されている大変オススメのものではありますが、サブタイトルに「認知症治療としてのアートセラピー」とされていることもあり、万人向けではないような印象を持たれるかたも多いようです。

過去の記事↓
臨床美術を初体験した時の感動 その3/デジタル画とアナログ画 そして臨床美術のアートプログラム

臨床美術」は、この本の編集者である金子健二先生(宮城県出身の彫刻家)が、ご自身の親御さんの認知症改善に美術が有効ではないか?ということを経験を持って考え始めたことをきっかけに開発されたものなのです。
この本の中に、その興味深い経緯が詳しく書かれていますが、元々認知症改善へ向けて生み出されたものが、開発されてから数年、認知症改善だけでなく、介護予防や、働く人のストレス緩和、子どもの感性育成などへの効果があるとして、普及していきました。

金子先生はこの本の中で、次のように述べられています。

臨床美術において、また美術教育において、作品に優劣をつけることは危険であり、私は反対です。

学校教育では当たり前のようにしている「評価」ですが、美術作品というものは本来「心の叫び」です。

上手、下手などどいった「評価」は左脳世界のすることであって、右脳世界の美術では意味のないことです。

まして臨床美術では、そのような優劣の価値判断は禁物です。
ですから、「うまいですね」というほめ言葉は使いません。
具体的に良いところを見つけて励まし、ほめることが大切です。

改訂新版 臨床美術」p.37

上手・下手という言葉で「評価」しないで、触れる聞くほめるのが「臨床美術」であり、それが本来の美術教育でもあるということですね。

というわけで、難しい響きに感じられてしまうこともある「臨床美術」ではありますが、勝ち負けのないアート、誰にでも楽しんでいただけるものであり、変化の激しい時代において不安を感じて生きる人が多い昨今では、ますます必要とされていくものと思います。

臨床美術チラシ

また、この本には、私の尊敬する人として既にご紹介した関根一夫先生による考察文もありまして、ここでは「ファミリーケア」の重要性について述べられています。

例えば、対象となる患者さんとそのご家族の関係性であったり、実はご家族自身が心の問題を持っているだとか、そういったことに目を向けることの必要性を説かれています。

臨床美術の一環として、家族が安心して愚痴をこぼせたり、どういうふうに患者さんと接したら良いのかを一緒に考える「ファミリーケア」の役割がいかに大きいかということがよくわかる内容です。

関根一夫先生についての過去の記事はこちら
いてくれてありがとう/いつも忘れずにいたい素敵な言葉

改訂新版 臨床美術」は「臨床美術」が開発されて間もない頃に編集された本なので、主に認知症の患者さんを対象に述べられてはいますが、家族の中での問題や人間関係での問題という点では、何もご病気のかたがいらっしゃるところだけでの話ではないですよね。
人間関係の問題というのは、人の心の問題があって発生するもの。
その心の問題の改善に「臨床美術」は効果が期待できるので、是非とも多くのかたにお試しいただきたいと思うのです。

ちなみに、特に問題などはないという方々にとっては、日々の生活に彩りが増す、そんな効果があります。
例えば、写真を撮ることが好きなかたは、何気なく歩いている時でも道端の花に目が行くとか、空が美しいなとかしみじみ感じるのではないかと思いますが、その感覚と似ています。
何か趣味を持ちたいな、という人にもうってつけだと思いますよ♪


あなたにとって
美術とはどういうもの
でしょうか?

改訂新版 臨床美術

五感で秋の味覚さつまいもを描く

臨床美術で創作に没頭する時間を持ってリフレッシュ


久々の2連休を得ましたが、ちょっと最近お疲れ気味の私は、人に会わず、静かに自分の時間を持ちたいのが正直なところでした。

そんな時に思いたつのが「臨床美術」です。

ちょうど、立派なさつまいもをいただいたところでもあったので、臨床美術プログラムの一つ「さつまいもの量感画」をすることにしました。

さつまいも


さつまいもの量感画」を実施するにあたって、準備するのはこちら。
臨床美術の基本画材、オイルパステルを活用します。

さつまいもの量感画


さて、この中に、薄クリーム色と墨色の用紙がありますが、いざさつまいもを描くとなったら、あなただったら、どちらの用紙に描きこみますか?


実はこのプログラムでは、墨色の用紙に描いていくのです。
これが面白びっくりなところですね。臨床美術の醍醐味です。

そして、ここからは以前ご紹介した「りんごの量感画」と同じような流れとなります。

臨床美術「りんごの量感画」

以前ご紹介した「りんごの量感画」の記事はこちら↓
臨床美術それは誰でもできるアナログアート/お友達を呼んでプチワークショップ♪

まず、さつまいもを手に持ってみて、その独特の形状と重さを感じ、そして、中身の色を観察して、自分が「これ!」と感じた色味で描いていきます。

さつまいも


さつまいもを育てるような気持ちで、中身から描いていく。
ちょっと不思議な感覚を楽しみます。

さつまいもの量感画


次に、改めてさつまいもの外側である皮を観察して、発見できた色を、オイルパステルの中から3色以上選び、かぶせていきます。

さつまいもの量感画


ヒゲや、窪みなども見えるから、引っかき傷を入れてみたり、パステルをトントン打ってみたり、リズムを感じて進めるのも、このプログラムの面白さ。

さつまいもの量感画


納得の行くところまで描けたら、仕上げに魔法の粉(女性なら知っている(?)アノお粉☆)をふりかけツヤツヤにして色留めしたら、いよいよ、収穫(笑)!ハサミを入れてカットします。

さつまいもの量感画


そして終盤にさしかかり、ようやくクリーム色の用紙が出てきます。
こちらは実は、描いたさつまいもを貼り付ける台紙でした。
さつまいもの中身の色と似ているところがミソ。
黒い紙の中ではなんだかボヤッと見えたさつまいもが、切り出し、この用紙の上に乗せると、しっかり浮き上がってきます。

さつまいもの量感画


さて、最後。
台紙に切りだしたさつまいもと、和紙などの端材を置いてみて、どう仕立てたら自分の描いたさつまいもが素敵に見えるかを考え、位置決めしたら貼り付け、固定します。
この構成が実は一番の悩みどころだったりもします。

さつまいもの量感画


普段生活していて、さつまいもの形は愚か、中身の色までしげしげと見ることなんてないですよね。
今ここ、さつまいもに集中することで、いつもは見過ごしていることに気がつく。
食物の神秘さ、面白さを再発見する。
普段は使わない画材や道具を使って、創作することに集中する。
日常生活で忘れかけていることを体験することで、脳が活性化される、ポジティブで自由な時間です。

さつまいもの量感画


臨床美術は、もともと絵を描くことが好きなかたには新たな発見をしていただけると思いますし、美術なんて苦手というかたにも1時間程度で気軽に楽しんでいただけるプログラムが豊富です。

臨床美術には様々なプログラムがあり、お子さんからお年寄りまで老若男女、ご病気や障害をお持ちのかたから健常者まで、どなたでもできるものですが、特に、疲れている多くの現代の皆さま、リフレッシュしたい皆さまに、是非お試しいただきたいなーと思っています。


あなたは
上手に気分転換
できていますか?

静けさに包まれる東山魁夷の大壁画展@宮城県美術館

年に数日しか公開されることのない唐招提寺御影堂障壁画の一挙展示!


ただ今(2020年10月15日現在)、宮城県美術館において、日本画家の巨匠、東山魁夷の集大成であるふすま絵が一挙に公開されています。

宮城県美術館敷地入り口付近

この特別展のタイトルは「東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」。

東日本大震災の復興を願って企画されたもので、とても貴重な展示を、今期はここ宮城と岩手を限定して開催されるということで、東北人として大変ありがたいことです。

宮城県美術館入り口

しかも、今はコロナ渦の中。気軽に遠出もできません。
そんなさなか、このような素晴らしい企画を掲げ、開催してくださった関係者の皆さまには心から感謝をお伝えしたいです。

今回の展示、何が素晴らしいかと言いますと、奈良県にある唐招提寺御影堂(とうしょうだいじみえいどう)の、年に数日しか公開されることのない全68枚にも渡る障壁画が、ここ東北の地で、初めて、ドドーンと一挙に公開されているところです。

東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」チラシ(表)
東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」チラシ(裏)

御影堂5部屋に並ぶふすま絵と壁面をつなぎ合わせると、全長83mにもなるのだそうです。
それをここに運んできて展示してくださっているのです!

その上、これらの制作に至るスケッチや下図など、東山魁夷が勢力を尽くした10年以上にわたる制作の過程にも触れることができます。

宮城県美術館の特別展示室はお馴染み2階でございます♪

「魁夷」といえば、群青と緑青の微妙な濃淡で作られる「東山ブルー」。
多くの人々が、この色に魅せられていますね。

長野県茅野市の御射鹿池(みしゃかいけ)。
東山魁夷がこの地を作品にしたことでよく知られています。

その東山ブルーに加え、モノクロで表現された水墨画にもお目にかかることができます。

ここ最近、水墨画の魅力にもハマりつつある私には、今回の展示で、東山魁夷の墨画による障壁画やスケッチを見ることができ、かなりの充実感を味わえました。

ところで、当然ながら、一般人には展示室内の写真の撮影は許可されていませんので、これ以上は写真で紹介できないのが残念ですが、展示室入って程なくのコーナーで、作品名が「濤声(とうせい)」というエメラルドグリーンの初夏の海のふすま絵がいきなりドーンと目の前に広がります。
迫力を感じるとともに、静かな波の音が聴こえてきそうな感覚に陥りました。

・・・今、写真で紹介できないのが残念とは申し上げましたが、いやこれは、この素晴らしさは写真ではわからない、実物をやはり見るべきです。

「東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」河北新報の記事とチケット

さて、ここで歴史で学んだことを、思い出してみましょう。
唐招提寺」は、仏教の戒律を伝えるために5度の失敗と失明を乗り越えて来日を果たした中国唐時代の高僧「鑑真」が安置されているお寺です。
今回の展示作品は、この鑑真に捧げられた障壁画なのです。

日本仏教の発展に尽力した鑑真の心を表現するため、東山は全国各地を取材旅行し、これらの作品が完成したのだということです。
ここ東北の地では、宮城は蔵王、岩手は浄土ヶ浜など、青森は浅虫、秋田は男鹿半島、山形は温海と、各地を歩かれたそうです。

東山魁夷による理想の心象風景。
これらの大きなふすま絵が並んだ空間にいると、荘厳な自然の中に佇んでいるような、とても静かな気持ちになり、心が落ち着きます・・・

繰り返しますが、これは写真などではわからない、実際に足を運んで、その空間に身を置いてナマの作品に触れなければ、得られない感覚です。

ちなみに、いつもは2階の特別展示会場外のスペースでグッズ販売がされますが、今回の宮城県美術館での特別展では、1階ロビーの片隅に出店されていました。

宮城県美術館1階ロビーにて、東山魁夷のアートプリント等々の品定めをしている人々

今回の展示会のオリジナルグッズは少なめでしたが、どなたでも立ち寄れるため、これを機に、東山魁夷のアートプリントを購入している人が結構いらっしゃるように見受けられました。

私はもちろん、図録を購入。
今回は、大物の展示品が多い分、全体の作品数が少ないので、図録も100ページ程度と薄めで、幅の取られる冊子ではなかったこと、とはいえ、ページ数少ないながらも、折り込みが数ページあって見応えあり、かつ内容が的を絞られているので、ありがたかったです。

図録、何冊も買ってますが、正直、読み切れることはほとんどないですし、本棚のスペースも減る一方なので、私にはこのくらいの分量だと助かります(苦笑)。

なお、本特別展は、
宮城県美術館での展示期間は2020年9月19日(土)から2020年11月1日(日)まで
となっており、その後は
岩手県立美術館において、2020年11月14日(土)から2020年12月27日(日)まで
開催される予定です。

宮城県で見逃したかたは、岩手県へのご旅行の行程に加えるのも一つではないでしょうか。
私も、このコロナ渦に定着しつつある「ステイケーション」として、隣県の岩手へ出かけて、異なる美術館で再びあの静けさに浸るのもいいかなぁなんて考えている次第です。

ステイケーション:「Stay(滞在)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせて作られたアメリカ発の造語。遠出をして楽しむ旅行を指す「Vacation/バケーション」に対し、自宅または近場に滞在(Stay/ステイ)して、気軽に楽しむ休暇のこと。

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あなたは
東山ブルー or モノクロの墨画
どちらがお好みですか?

本当の幸せに繋がる枡野俊明住職の教え

まずは「上手な心の守り方」からご紹介


「柔軟心」という言葉をご存知ですか?
柔軟な心?なんだか素敵な響き♪
この言葉、実は禅語で、正しい読み方は「にゅうなんしん」というのだそうです。

“「柔軟心」とはつまり、決まった形のない心のこと。
物事に対する考え方が「こうあるべき」「こうあらねばならない」と一つに固定されておらず、状況や相手に応じて自由自在に変わっていくことを意味します。

心はどんなに「強く」したところで、このストレス社会においては、傷ついてしまうし、折れてしまうからです。

自分の心をどんなに固く分厚い殻で覆ったところで、それがすべてのストレスを跳ね返してくれるシェルターにはなりえないのです。
むしろ不安や悩み、迷い、怒りをこじらせてしまうことになりかねません。

もちろん、ときにはストレスを「跳ね返す」心の強さも必要です。

しかし、ときにはストレスを上手に「受け入れる」ことや、上手に「受け流す」ことも必要になってきます。
たとえるなら、空に浮かぶ雲のような柔軟さで。”

知的生きかた文庫「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」p.3-4より

このように記された前書きによって始まる、枡野俊明さんのご著書「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」は、私自身、心が折れかかっている時に読んで、とても励みになった本の一つです。

上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」目次

1章 まず、自分を嫌わない
 「心を守る」ための絶対のルール
2章 絶対、無理をしない
 「自分を大切にする」とはこういうこと
3章 すぐに、人と競わない
 「自分の物差し」でしっかり生きる
4章 ささいなことで、怒らない
 心をすり減らさないためのコツ
5章 いつまでも、クヨクヨしない
 落ち込んでもいい、でも早く立ち直ろう


この本の中で特に私の心に響いたヒントについては、また改めてお伝えさせていただくとして、まずは、枡野俊明さんについてのエピソードを簡単にご紹介させてください。

枡野俊明(ますのしゅんみょう)氏。曹洞宗徳雄山建功寺住職で、作庭家でもいらっしゃいます。
僧侶でありながら作庭家、いわゆる庭のデザイナーとして高い評価を得られ、数々の賞を受賞し、多摩美術大学やブリティッシュコロンビア大学で教鞭を執られるほか、禅の教えをわかりやすくかつ多方面から解いた本を数多く出され、平成18年(2006年)には、ニューズウィーク日本版において『世界が尊敬する日本人 100人』にも選出されました。

ニューズウィーク日本版 Newsweek Japan 2006/10/18号


そんな素晴らしいかたに、数年前、私はお会いする機会に恵まれました。
たまたま仕事で枡野俊明さんの講演会の企画にたずさわることができたのです。

実は私、その講演会の企画が上がる前からすでに枡野俊明さんの本を何冊も読み、大ファンだったので、その企画が現実となる時にはもう天にも登るほどの思いでした。
講演当日にお会いしたご住職は、常に誰に対しても、物腰が柔らかく、穏やかな表情をたたえ、漂うおおらかさに、ファンである私は舞い上がりつつも、大きな安心感を覚えました。

ご講演は当然のことながら、素晴らしい。
僧侶さんですからご発声も良いので、聞き取りやすく、聴講者の様子に気配りされながら進められるお話は、あっという間に感じました。

そして、講演会の後にはこちらからお礼をお送りしたのですが、それに対して、ご丁寧にもご本人からお手紙とお電話とでお礼をくださったのです。
手紙と電話で、ダブルで、ですよ。
講演の依頼をしたのはこちらですし、わざわざお礼のお手紙をくださるだけでもありがたいことなのに、いち担当者の私に直接電話までくださるなんて。こんなスゴイかたがこれほど謙虚とは!と驚くとともに、尊敬の念が増したことは言うまでもありません。


さて、この、私が心から尊敬してやまない枡野俊明さん、結構な勢いで本を書かれていらっしゃいます。
私が持っているだけでも10冊です。
確かに、これだけ本を出されていると、時々購入者レビューにもあるように、かぶる内容もあり、低評価を下すかたもいらっしゃいますが、枡野俊明さんのようなかたがおっしゃるような事柄には、繰り返し触れることで、私たちの心身の豊かさが持続されるのではないでしょうか。

今後、時々、枡野俊明住職の教えをここで記していくことで、心と生活の平穏を保っていきたいと思います。

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心を健やかで穏やかに保つヒント集「上手な心の守り方」/枡野俊明住職による禅的心のセルフケア


あなたは
心のセルフケア
できていますか?


「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」枡野俊明(著) 知的生きかた文庫
「上手な心の守り方: 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント」枡野俊明(著) 知的生きかた文庫

音楽のみならず『音』そのものにスポットをあてた映画!

ドキュメンタリー「ようこそ映画音響の世界へ」


全くノーマークでいたのですが、先日「海の上のピアニスト イタリア完全版」を観に行った際に、「ようこそ映画音響の世界へ」というドキュメンタリー映画が上映されていることを知りました。

先月(2020年8月)、映画『音楽』にスポットをあてた「すばらしき映画音楽たち」というドキュメンタリー映画が再上映(初公開は2017年)されていましたが、今度は、映画に使われる『音』そのものに焦点をあてるという、今まで取り上げられたことのないテーマ、是非とも観たい!と思い、早速観て参りました。

関連記事:
映画や音楽好き必見 ‘映画音楽 ’にスポットをあてた貴重な映画/これまでにないドキュメンタリー「すばらしき映画音楽たち」
名作復活上映「海の上のピアニスト」/20年の時を経て上映される完全版

映画「ようこそ映画音響の世界へ」チラシ(表)

こちらのチラシに並ぶ数々の名作映画のタイトル。
それらの名作たる所以には“音”の効果が計り知れなく、その“音”を作り出すためには、職人さん達による、知られざる創意工夫と労力が注がれているのだということを知ることができる映画です。

この映画では、同じ映像でも、音がない場合とある場合とを対比して見せてくれる場面があったり、映画を表現する上での音には声、効果音、音楽という種類があり、それぞれがどのような手法で取り込まれ、そしてどんな効果を生み出しているのか、名作のワンシーンと共に、巨匠や職人さん達の貴重なインタビューを交えながら、とても興味深い映画音響の世界を紹介してくれます。

映画「ようこそ映画音響の世界へ」チラシ(裏)

日本における『映画』という言葉、映画の『映』は『映像』と『画像』で表すように、私たちは一般に、映画は、映し出された動画を通して楽しむものだと思っていますが、実は、そこには音という聴覚的な効果が絶大だったんですね。
ともすると、音の方が映像以上に効果を発揮していることもある・・・

この映画、音響楽しめる映画館で観て大正解でした。
音をあちこちに移動させる「5.1chサラウンドシステム」について具体的に紹介してくれる場面もあって、その説明映像と映画館のそれぞれに配置されたスピーカーからの音で、改めてその効果を実感できるのは特に面白かったです。

ちなみに、この映画の原題は「Making Waves(メイキングウェーブス)」。
映画館ではまさに、この音のウェーブ(波・波長)を感じることができます。

また、例えば、誰もが知る「スターウォーズ」が公開された時のエピソードでは、オープニングで宇宙船が大画面に迫力の登場をするシーン、その圧巻の映像と音響で、観客達が驚き興奮しますが、私も改めてその感覚を得ました。

携帯電話やタブレット、パソコンなどで、手軽に配信映画を視聴できる現代ではありますが、これを観て、映画はやはりまずは映画館で観るべきだなと思いました。


そしてつくづく、視覚・聴覚を通して映画を楽しめる五体満足な体を持つ自分は幸せだなーと感じました。
素晴らしい映画クリエイターの方々へと、与えられた体で映画を十分に楽しめることに感謝して、今後も少しでも多くの映画を観て、たくさんの感動を得させていただき、感性豊かになる時間を送っていきたいと思います。

「ようこそ映画音響の世界へ」公式サイト
フォーラム仙台・チネ・ラヴィータのHP


あなたの
聴覚に訴える映画は
なんですか?

名作復活上映「海の上のピアニスト」

20年の時を経て上映される完全版


8月半ばから開催されていた、映画館フォーラム仙台における「エンニオ・モリコーネ追悼特集」。
以前書きました時には、この特集、9月24日までということで、「海の上のピアニスト」の上映も同じく24日までということだったのですが、10月1日(金)にまで伸びたようです。
実は私、24日までの都合がつかないでいたので諦めていた所でしたが、おかげで、観に行くことが出来ました♪

関連記事:
映画や音楽好き必見 ‘映画音楽 ’にスポットをあてた貴重な映画/これまでにないドキュメンタリー「すばらしき映画音楽たち

当初チラシでは9/24までだったが「海の上のピアニスト イタリア完全版」は10/1(金)までに延長♪

海の上のピアニスト」は、全編に渡って、映画音楽の巨匠モリコーネの美しい音楽が堪能できる名作で、日本で初公開されたのは1999年、それから20年ほどぶりで、4Kデジタル修復版およびイタリア完全版として復活上映中です(2020年9月26日現在)。

「海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版&イタリア完全版」チラシ(表)

1900年に豪華客船の中で生まれ、“ナインティーン・ハンドレッド(1900)” と名付けられた男の子が凄腕のピアニストとして成長しつつも、生涯船を降りることなく数奇な人生を歩んだことで伝説となったというファンタジー映画(フィクション)です。

映画の中で、副主演であるトランペッターの男性(役名:マックス)が「本当の話」と言って物語が進められていることもあり、実話かと勘違いもされてしまう映画ですが、フィクションです。

また、実際に存在し、ジャズを作った人とも言われているジェリー・ロール・モートンを、物語の中でナインティーン・ハンドレッド(主人公)のピアノ対決相手として登場させていることもあって、よりリアルっぽく感じさせられちゃうわけなのですが、そこがこの映画の見所でもあります。

ジェリー・ロール・モートン
(Ferdinand “Jelly Roll” Morton)
1890〜1941年。
米国ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のピアニスト、バンドリーダー、作曲家。
(wikipediaより)

この、ジェリーとナインティーン・ハンドレッドの、それぞれのピアノ演奏による対決シーンは圧巻です。
ピアノ曲が好きな人はもちろん、そうでない人も、時を忘れて見入ってしまうこと請け合いです。

でもふと現実に帰ると、映画の中では二人とも誰もが息を止めてしまうような演奏をするわけだけど、そもそもこれは、演技。本当に演奏している人がすごすぎる!そして、これほどのピアノ弾きの演技をする俳優もすごい!って、そっちの感動が最終的に増します・・・

「海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版&イタリア完全版」チラシ(裏)

今回公開されたイタリア完全版は、当初のものより50分ほども長い映画ですが、物語の展開が軽快で、笑えるところもたくさんあり、そしてちょっと悲しくもあるお話なのですが、見所がたくさんあって、3時間も長くは感じません。

個人的には、ピアノの演奏を心から楽しんでいるナインティーン・ハンドレッドを見ていると気持ちがいいのと、悪い人が出てこなくて(一瞬意地悪そうな人も最終的に良い人)、みんな心温かく、人間味あふれる感じが、好きだなーと感じる映画です。


そして、私にとってお気に入りの一つである、この映画のサントラCDはこちらです。
ピアノソロ、オーケストラ、バンド調ありとバラエティーに富み、中にはノリのいい曲もあって楽しめつつも、穏やかな気持ちになりたいときには最適なアルバムです。

「海の上のピアニスト」オリジナル・サウンドトラックCDの表と裏面

このCDに付属のブックレットには、エンニオ・モリコーネ(訳:ジャパンタイムズ)による以下のメッセージが添えられています。

私が、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画「海の上のピアニスト」のために作曲したこの音楽は、これまでに私が手がけたどの映画音楽にも見ることのできない特質を備えていると信じています。

この映画は真のミュージカル映画であり、そのために私は心理学、歴史、言語学から音楽的技巧や名人技(この映画が一人の音楽家、独学の偉大なピアニストについての物語だからなのですが)といったモチーフや、壮大で情緒的な音楽シーンあるいは親密で安らぎのあるシーン、またあるいはエンターテインメントに満ち溢れた楽しいシーンやそうかと言えば徹底したリアリズムのシーンといったさまざまなテーマの音楽シーンを相手に奮闘しなければなりませんでした。

これら全てのモチーフが見事に溶け合い、その結果この映画の特質を観客の皆様に十分に楽しんでもらうためになくてはならない表現力が生み出されているのだと思います。

私は、この映画とその音楽がそれらにふさわしい成功を収めることを願ってやみません。

この映画音楽は、扱われているテーマの多様性からいっても、私のこれまでの作品の中で最も成功を収めた作品の一つに数えられることでしょう。

ご本人がそう述べられている通りの、素晴らしい音楽そして映画の名作です。
是非、観て、聴いて、その素晴らしさを感じてください♪


あなたの
お気に入りの映画音楽
はなんですか?

「海の上のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック