大人のための画家と詩人のコラボ絵本

パウル・クレー X 谷川俊太郎


社会人になってからというもの、読書と言えば、ビジネス書や自己啓発系のものが多かったのですが、気がつくと、似たり寄ったりのものも結構あって、もうそろそろ、子どもの頃や学生時代によく読んでいたような、物語や小説、詩集なんかをゆっくりと読みたいなぁという気持ちになってきました。

そこで見つけたのが、美術好きには嬉しい、絵画と詩がコラボレーションした素敵な一冊。


クレーの絵本 」(講談社出版)は、抽象画で有名なパウル・クレーの絵画に、日本の現代詩人を代表する谷川俊太郎の詩が添えられた、とても美しい本です。

パウル・クレー(Paul Klee)は、1879年のスイスで、音楽教師の父と声楽家の母との間に生まれました。4歳で祖母から絵を習い、7歳でバイオリンを始め、小さな頃から芸術の世界にあったクレーの生涯は、絵と音楽と詩にあふれたものだったのだそうです。

そんなクレーからインスピレーションを受けて、谷川俊太郎が詩を綴っています。


表紙にもなっている絵は「黄金の魚/The Goldfish」(1925年制作/ハンブルク美術館収蔵)で、添えられた詩の「どんなよろこびのふかいうみにも ひとつぶのなみだが とけていないということはない」という最後の部分が、心にズシンときます。

どの絵も、詩も、静かな中にも深さと、情緒的な美しさを感じるものばかりで、贅沢な一冊です。
インテリアとしても飾っておけるシンプルな装丁も素敵です。

この本の最後に、谷川氏による解説が載っていますので、一部抜粋させていただきます。
(ちなみに、背景の絵はクレーの「赤い気球/Red Ballon」(1922年/グッゲンハイム美術館)で、この本にも載っています)


抽象画はなんだか難しいと思っていた私にも、クレーの絵には引き寄せられてやまないものがあり、今では好きな画家の一人です。
谷川氏が述べているように、クレーの絵は単なる抽象画ではなく、見るものに魂を感じさせるものだからなのだろうと思います。

以下の動画は、パウル・クレーの作品「島/Island」(1932年/アーティゾン美術館)について紹介されているものです。
「クレーの絵本」では取り上げられていない作品ではありますが、クレーの作風についての参考になると思います。
2分ほどで短くまとめられていて、静かで穏やかなナレーションも心地よい、良質な動画です。


BGMは無いのに、なんだか音楽が聞こえてきそうな気がしませんか?
そして、この不思議な感覚の余韻にしばらく浸っていたい、そんな気持ちにさせられます。

穏やかな気持ちになれる芸術との対話、そんなひと時を、普段の生活の中でも大切にしていきたいです。



あなたは
抽象画を
どう感じますか?




「クレーの絵本」パウル・クレー(著) 谷川 俊太郎(著) 講談社
「クレーの絵本」パウル・クレー(著) 谷川 俊太郎(著) 講談社

レトロかわいいオールド&プレミアノリタケ

戦前戦後の芸術的里帰陶磁器


ポストを開けると、A4サイズで、厚めな本でも封入されていそうな郵便物が入っていました。
でも、封筒に記されている会社名には覚えはあるのだけど、ここ数日では何の購入の記憶はなく・・・
しかしながら、書店はもちろん、ネットでも本を買うことが多い私。
何かネット検索でもしている時に間違ってポチッちゃったのかな・・・?
と不安に思いつつ、恐る恐る封を開けたら、1冊の図録が。

図録に加え、2021年の卓上カレンダーのプレゼント

これ、なんか知ってる・・・
てか、持ってる・・・?

送り主は「敬誠アート」さん。
薩摩焼瀬戸焼隅田焼横浜焼オールドノリタケ等の『和骨董』とゲーベルローゼンタールフッチェンロイターマイセンKPM等の『西洋陶磁器磁器人形』を取り扱う古美術商さんです。

薩摩焼

瀬戸焼

隅田焼

横浜焼

過日のある日、仙台三越に行った時に、たまたま催事として1階フロアで敬誠アートさんが出店されていまして。

芸術的な骨董品がずらりと並んでいたので、思わず足を止めました。
艶やかな陶磁器の数々。美しいだけでなく、デザイン的にも面白いものがたくさんあり、見ているだけで楽しいものでした。

ゲーベル

ローゼンタール

フッチェンロイター

マイセン

私は特にブランド好きというわけではないのですが、ノリタケは日本を誇るブランドとして、今では高級なものから庶民的なものまで製品が取り揃えられていて、身近に感じられるブランドとして、もともと好感を持っていました。
そして数年前に仕事で名古屋に行った際に、ノリタケミュージアムに立ち寄ったのですが、そこで興味深い制作過程や歴史を知り、たくさんの美しい製品を見たらファンになりまして。

そんなノリタケの、今から100年程前の明治・大正時代に主にアメリカに輸出され、里帰りしたという陶器『オールドノリタケと、戦後の1945〜1960年頃に製造された『プレミアノリタケの品々も、三越での催事で展示販売されてたんです。

オールドノリタケ

プレミアノリタケ

オールドノリタケ

プレミアノリタケ

芸術的な骨董品といえば、もちろんそれなりのお値段。
購入できたとしても、使うというより、大事に飾るというイメージ。
ですが、中には普段使い出来そうなものもありまして。

オールドノリタケのピンディッシュと、プレミアノリタケのレトロかわいいカップとソーサーのセット、購入しちゃいました。

戦後に欧米に輸出されたこのヴィンテージなカップとソーサーは「スナックセット」と言うのだそう。
絵の具のパレットのような形のソーサーはお菓子なんかも一緒にのせられて、使い勝手も良しなプロダクト。

流行りものよりもレアなものや人と同じではないものに惹かれる私。
これもノリタケなのー?ってところが気に入ってます♪

ちなみに、かぼちゃの器は、「JAPAN」の刻印があるので里帰りした日本製であることは間違い無いのだけど、メーカーは謎というお品だそうで。
熱心な担当者さんが「根拠なくこれもオールドノリタケですと嘘はつけませんので」と教えてくれ、一品もので可愛かったので購入。

そしてその時に、販売されていた図録が、数々の芸術的な陶器が掲載されていて眺めているだけでも面白く、せっかくの機会だからと一緒に購入していたんです。

それが、今回送られてきたものと同じだったというわけでした。
既に買っていたものと同じお品だけど、3,000円する図録、プレゼントとはありがたいことです。
興味のある人にプレゼントしよう♪

敬誠アートさんのギャラリーは千葉県我孫子市にあるとのことで、行ってみたいとは思っていますが、このコロナ禍にあってはそうもいかないので、しばらくはこれ見て楽しみます。
敬誠アートさん、ありがとうございました☆


あなたは
古いもの or 新しいもの
どちらがお好きですか?

3時のおやつ展@ガラス工房尚

楽しくて美味しくなる♪3人のガラスと金属の素敵なコラボレーション


今日(2020年12月6日)が最終日ということで、事前に皆さんにお伝えできないのが残念だったのですが、ユニークで楽しい、心が和む素敵な展示会に行ってきました。


先月の初旬にもお邪魔した、秋保のガラス工房 尚さんからいただいた、今回の特別展のご案内。


ガラス工房 尚さんは、仙台市から秋保に向かって、秋保大滝の手前にあります。


シーダーギャラリー
ガラス工房に併設した、喫茶スペースもあるギャラリーです。


今回の企画は、3人のアーティストによる、「3時のおやつ」をテーマにした楽しい展示。


主催者の鍋田尚男さんのガラス作品は、鮮やかなデザインが施されていますが、これは、熱でガラスをやわらかくし、様々なガラスを溶着させるフュージングという技法で作られているんだそうです。
色も線も全く描いてない、凄技!
どれだけ手間と時間がかかることか・・・


こちらは、金属作家の永井佳奈子さんの、とってもユニークな作品。
思わず笑ってしまう、おもしろさ溢れるものばかり。
金属って聞くと冷たそうなイメージだけど、永井さんの作品には、ほっこりしたあたたかさを感じます。


そして、さらにガラス作家の沖知江子さん。
こちらは、植物を中心とした女性的な絵付けが素敵な、小物入れやお皿などの作品たち。
どれも心が癒されます。


3時ではなかったけれど、せっかくなので、私もおやつタイムにさせていただきました。
沖さんの作品にのった洋梨のコンポート。可愛らしくて、見てるだけでも美味しい。


今回は、秋保の人気のスイーツ屋さん「豆あん」さんのカステラも選ぶことができたので、ラッキーでした♪


自然に囲まれたガラス張りの開放的なギャラリーは、光が差して、とても気持ちが良く、穏やかな時間を過ごすことができます。


最後に、今日のお土産は、透明感が美しい、カトラリーレスト。


べっこう飴みたいで、美味しそう!と、思ってしまうのは私だけではないはず・・・


きらめく透明感が美しくて素敵です。


お箸を置くと、こんな感じ。


スプーンやフォークを置くとこんな感じ。


また大切にしたい宝物が増えました。
今日も、心が豊かになる幸せに、感謝。ありがとうございます☆

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ガラス工房尚/シーダーギャラリー
住所:宮城県仙台市太白区秋保町馬場丸山12−1
電話:022-399-5728
営業:10:00 〜 16:00 or 17:00
定休日:水曜日・木曜日
(特別展中等は変更あり)
Webサイト:
https://www.facebook.com/glasssho/
インスタグラムhttps://www.instagram.com/glassstudiosho/

2020年内の企画展は今回のおやつ展が最後だそうですが、通常営業はされています。
また来年も素敵な企画展示のご案内をいただきましたら、当サイトでもお伝えしたいと思います♪


あなたの
和める場所は
どこですか?

クリスマスって・・・?

喜びと、感謝の気持ちで、心豊かに迎えよう♪


今年も残り1ヶ月を切ってしまいました。
いろいろ切ない思いにかられてしまうこの時期ではありますが、少しでも豊かな日を送るために、これまでは何気なく過ごしていたことについて、ちょっと改まって考えてみるのはいかがでしょう・・・

現在、私は縁あって、可愛くて元気な子どもたちの声が響き渡る、キリスト教系の保育園でお仕事をさせていただいてます。
クリスチャンでなくとも入園できるし、職員も同様なのですが、当園にとってクリスマスはとても大切なイベント。
ということで、園長先生が、クリスマスの意義についてレクチャーしてくださいました。
私なりの解釈も含め、講義の内容を簡単にまとめてみますね。

今から2000年ほど前、ユダヤの国はローマ帝国という大きな国に支配され、人々は貧困や重圧に苦しんでいました。
争いや憎しみにも満ちた国。救いを求める人々。
ある意味では、今の世ともあまりかわりなかったかもしれません・・・

神様はこのような闇の世界をよしとはせず、神の子イエス様を光の子の人間としてこの世に誕生させたのでした。

クリスマスは、神様がその一人子であるイエス・キリストを人間の救い主(メシア=キリスト)としてこの世にプレゼントしてくださった、という神様の愛の出来事への応答として、イエスの生き方にならい愛の生活をすることを約束する時、自分のすべての生きた身と命を神様に捧げる生き方の一つの徴(しるし)、感謝の徴として、献金を捧げたり、プレゼントの交換をして喜びを共にする時なのです。
そこに、権力や野心などは存在しません。

ジョット「東方三博士の礼拝」 出典:wikipedia

美術絵画でもよくテーマとして取り上げられる「東方三博士」の図画からもわかるように、イエス・キリストの居場所は博士たちが援助を求めた王宮ではなく、粗末な馬小屋の飼い葉桶の中でした。
最初のクリスマスは、庶民の代表である羊飼いや宿屋、一般民衆や東方からの世界を代表する人々からお祝いされたということです。
クリスマスは裕福なお金持ちが贅沢するようなことではなく、全くその逆なんですね。
神の愛は、誰にも平等です。

クリスマスは、私たちが神様に愛され祝福されている存在であることを確認する喜びの時、感謝の時。
そう心にとめながらクリスマスまでの期間を過ごすだけでも、いつもよりちょっと豊かでハッピーな日々を送れそうな気がします。


あなたは
クリスマスの意味
考えたことありますか?

郁子さんのやさしくてあたたかな絵画作品

仙台の「カフェ&ギャラリー ガレ」でほっとするひととき


芸術の秋。アート好きには嬉しい響き・・・
今回は、臨床美術ボランティアを通して親しくなった福井郁子さんからご案内をいただき、仙台立町の住宅地に佇むカフェ&ギャラリー ガレ(Galle)さんで開催されている絵画展に行って来ました。


「まど展」と題された宮城県の画家さん6人による絵画展。
2020年11月2日(月)〜11月14日(土)、絵を愛する人をあたたかく見守っていらっしゃるカフェ&ギャラリー ガレさんでの展示。


カフェの入り口。この素敵なドアを開けるのが好きです。


こぢんまりとして落ちく店内に画家さんたちの作品が展示されています。


6人の画家さんによる作品たち。
それぞれの個性ある表現を楽しませていただきました。


以下の3点はいずれも郁子さんの作品です。
今回は静物画を中心に展示されていました。


こちらの2点は、臨床美術プログラムによるオイルパステルで描かれた作品。


このような形で、何気に臨床美術の認知活動にも取り組まれていらっしゃいます。


美味しいコーヒーもご馳走になり、穏やかな時間を過ごさせていただきました。

ところで、今回私がお邪魔した際には、こちらのカフェが入ったマンションが外壁工事中でしたので、外観は、昨年夏に撮影させていただいたものをアップしますね。


いつも季節を感じる花々で彩られているのが素敵で、カメラのシャッターを切らずにはいられません。


こちらは、その時開催されていた、同じく郁子さんとお友達でいらっしゃる安伊子さんの二人展の様子です。


郁子さんは、ここカフェ&ギャラリー ガレさんで定期的に展示をされています。

さらに過去に遡って、こちらは2018年12月に開催された個展のお知らせ。
(残念ながらその時はカメラ持参せず)


郁子さんにお会いし、そのやさしさとあたたかさ溢れる作品たちを拝見させていただく度に、心が安らぐとともに、アート好きな人間として心地よい刺激を受けています。

ちなみに、郁子さんがよく表現技法として使われている塩水彩。
私も郁子さんにその手法を教わってから、時々楽しんでいます。


この水彩技法については以前詳しく記載した通りです。
当サイトの背景画像について/誰でも手軽に楽しめる♪ 塩を使った水彩技法

絵が苦手な人でも、誰にでも気軽に楽しんでいただける技法ですので、芸術の秋、よろしければお試しになってみてください♪

 

カフェ&ギャラリー ガレ(Galle)
住所:宮城県仙台市青葉区立町21
電話:022-265-7063
営業:
 月〜金 10:00~18:00
 土曜日 11:00〜18:00 
 日曜・祝日定休
 (展示会の最終日などは営業時間が短縮されます)
Webサイト:http://cafegallesendai.cocolog-nifty.com/blog/


あなたも
芸術の秋
楽しんでみませんか?


創作造形活動の効能は誰にも有効

臨床美術は難しいものではないのです♪


時々このブログでも述べさせていただいている「臨床美術」についてですが、気になるけど「臨床」ってことは患者さん向けなの?とか、なんだか難しそうという声もお聞きする、今日この頃です。

以前ちょとだけご紹介しました「改訂新版 臨床美術」という本、こちらは臨床美術を知っていただくものとして、一般向けに刊行されている大変オススメのものではありますが、サブタイトルに「認知症治療としてのアートセラピー」とされていることもあり、万人向けではないような印象を持たれるかたも多いようです。

過去の記事↓
臨床美術を初体験した時の感動 その3/デジタル画とアナログ画 そして臨床美術のアートプログラム

臨床美術」は、この本の編集者である金子健二先生(宮城県出身の彫刻家)が、ご自身の親御さんの認知症改善に美術が有効ではないか?ということを経験を持って考え始めたことをきっかけに開発されたものなのです。
この本の中に、その興味深い経緯が詳しく書かれていますが、元々認知症改善へ向けて生み出されたものが、開発されてから数年、認知症改善だけでなく、介護予防や、働く人のストレス緩和、子どもの感性育成などへの効果があるとして、普及していきました。

金子先生はこの本の中で、次のように述べられています。

臨床美術において、また美術教育において、作品に優劣をつけることは危険であり、私は反対です。

学校教育では当たり前のようにしている「評価」ですが、美術作品というものは本来「心の叫び」です。

上手、下手などどいった「評価」は左脳世界のすることであって、右脳世界の美術では意味のないことです。

まして臨床美術では、そのような優劣の価値判断は禁物です。
ですから、「うまいですね」というほめ言葉は使いません。
具体的に良いところを見つけて励まし、ほめることが大切です。

改訂新版 臨床美術」p.37

上手・下手という言葉で「評価」しないで、触れる聞くほめるのが「臨床美術」であり、それが本来の美術教育でもあるということですね。

というわけで、難しい響きに感じられてしまうこともある「臨床美術」ではありますが、勝ち負けのないアート、誰にでも楽しんでいただけるものであり、変化の激しい時代において不安を感じて生きる人が多い昨今では、ますます必要とされていくものと思います。

臨床美術チラシ

また、この本には、私の尊敬する人として既にご紹介した関根一夫先生による考察文もありまして、ここでは「ファミリーケア」の重要性について述べられています。

例えば、対象となる患者さんとそのご家族の関係性であったり、実はご家族自身が心の問題を持っているだとか、そういったことに目を向けることの必要性を説かれています。

臨床美術の一環として、家族が安心して愚痴をこぼせたり、どういうふうに患者さんと接したら良いのかを一緒に考える「ファミリーケア」の役割がいかに大きいかということがよくわかる内容です。

関根一夫先生についての過去の記事はこちら
いてくれてありがとう/いつも忘れずにいたい素敵な言葉

改訂新版 臨床美術」は「臨床美術」が開発されて間もない頃に編集された本なので、主に認知症の患者さんを対象に述べられてはいますが、家族の中での問題や人間関係での問題という点では、何もご病気のかたがいらっしゃるところだけでの話ではないですよね。
人間関係の問題というのは、人の心の問題があって発生するもの。
その心の問題の改善に「臨床美術」は効果が期待できるので、是非とも多くのかたにお試しいただきたいと思うのです。

ちなみに、特に問題などはないという方々にとっては、日々の生活に彩りが増す、そんな効果があります。
例えば、写真を撮ることが好きなかたは、何気なく歩いている時でも道端の花に目が行くとか、空が美しいなとかしみじみ感じるのではないかと思いますが、その感覚と似ています。
何か趣味を持ちたいな、という人にもうってつけだと思いますよ♪


あなたにとって
美術とはどういうもの
でしょうか?

改訂新版 臨床美術

五感で秋の味覚さつまいもを描く

臨床美術で創作に没頭する時間を持ってリフレッシュ


久々の2連休を得ましたが、ちょっと最近お疲れ気味の私は、人に会わず、静かに自分の時間を持ちたいのが正直なところでした。

そんな時に思いたつのが「臨床美術」です。

ちょうど、立派なさつまいもをいただいたところでもあったので、臨床美術プログラムの一つ「さつまいもの量感画」をすることにしました。

さつまいも

さつまいもの量感画」を実施するにあたって、準備するのはこちら。
臨床美術の基本画材、オイルパステルを活用します。

さつまいもの量感画

さて、この中に、薄クリーム色と墨色の用紙がありますが、いざさつまいもを描くとなったら、あなただったら、どちらの用紙に描きこみますか?

実はこのプログラムでは、墨色の用紙に描いていくのです。
これが面白びっくりなところですね。臨床美術の醍醐味です。

そして、ここからは以前ご紹介した「りんごの量感画」と同じような流れとなります。

臨床美術「りんごの量感画」

以前ご紹介した「りんごの量感画」の記事はこちら↓
臨床美術それは誰でもできるアナログアート/お友達を呼んでプチワークショップ♪

まず、さつまいもを手に持ってみて、その独特の形状と重さを感じ、そして、中身の色を観察して、自分が「これ!」と感じた色味で描いていきます。

さつまいも

さつまいもを育てるような気持ちで、中身から描いていく。
ちょっと不思議な感覚を楽しみます。

さつまいもの量感画

次に、改めてさつまいもの外側である皮を観察して、発見できた色を、オイルパステルの中から3色以上選び、かぶせていきます。

さつまいもの量感画

ヒゲや、窪みなども見えるから、引っかき傷を入れてみたり、パステルをトントン打ってみたり、リズムを感じて進めるのも、このプログラムの面白さ。

さつまいもの量感画

納得の行くところまで描けたら、仕上げに魔法の粉(女性なら知っている(?)アノお粉☆)をふりかけツヤツヤにして色留めしたら、いよいよ、収穫(笑)!ハサミを入れてカットします。

さつまいもの量感画

そして終盤にさしかかり、ようやくクリーム色の用紙が出てきます。
こちらは実は、描いたさつまいもを貼り付ける台紙でした。
さつまいもの中身の色と似ているところがミソ。
黒い紙の中ではなんだかボヤッと見えたさつまいもが、切り出し、この用紙の上に乗せると、しっかり浮き上がってきます。

さつまいもの量感画

さて、最後。
台紙に切りだしたさつまいもと、和紙などの端材を置いてみて、どう仕立てたら自分の描いたさつまいもが素敵に見えるかを考え、位置決めしたら貼り付け、固定します。
この構成が実は一番の悩みどころだったりもします。

さつまいもの量感画

普段生活していて、さつまいもの形は愚か、中身の色までしげしげと見ることなんてないですよね。
今ここ、さつまいもに集中することで、いつもは見過ごしていることに気がつく。
食物の神秘さ、面白さを再発見する。
普段は使わない画材や道具を使って、創作することに集中する。
日常生活で忘れかけていることを体験することで、脳が活性化される、ポジティブで自由な時間です。

さつまいもの量感画

臨床美術は、もともと絵を描くことが好きなかたには新たな発見をしていただけると思いますし、美術なんて苦手というかたにも1時間程度で気軽に楽しんでいただけるプログラムが豊富です。

臨床美術には様々なプログラムがあり、お子さんからお年寄りまで老若男女、ご病気や障害をお持ちのかたから健常者まで、どなたでもできるものですが、特に、疲れている多くの現代の皆さま、リフレッシュしたい皆さまに、是非お試しいただきたいなーと思っています。


あなたは
上手に気分転換
できていますか?

静けさに包まれる東山魁夷の大壁画展@宮城県美術館

年に数日しか公開されることのない唐招提寺御影堂障壁画の一挙展示!


ただ今(2020年10月15日現在)、宮城県美術館において、日本画家の巨匠、東山魁夷の集大成であるふすま絵が一挙に公開されています。

宮城県美術館敷地入り口付近

この特別展のタイトルは「東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」。

東日本大震災の復興を願って企画されたもので、とても貴重な展示を、今期はここ宮城と岩手を限定して開催されるということで、東北人として大変ありがたいことです。

宮城県美術館入り口

しかも、今はコロナ渦の中。気軽に遠出もできません。
そんなさなか、このような素晴らしい企画を掲げ、開催してくださった関係者の皆さまには心から感謝をお伝えしたいです。

今回の展示、何が素晴らしいかと言いますと、奈良県にある唐招提寺御影堂(とうしょうだいじみえいどう)の、年に数日しか公開されることのない全68枚にも渡る障壁画が、ここ東北の地で、初めて、ドドーンと一挙に公開されているところです。

東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」チラシ(表)
東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」チラシ(裏)

御影堂5部屋に並ぶふすま絵と壁面をつなぎ合わせると、全長83mにもなるのだそうです。
それをここに運んできて展示してくださっているのです!

その上、これらの制作に至るスケッチや下図など、東山魁夷が勢力を尽くした10年以上にわたる制作の過程にも触れることができます。

宮城県美術館の特別展示室はお馴染み2階でございます♪

「魁夷」といえば、群青と緑青の微妙な濃淡で作られる「東山ブルー」。
多くの人々が、この色に魅せられていますね。

長野県茅野市の御射鹿池(みしゃかいけ)。
東山魁夷がこの地を作品にしたことでよく知られています。

その東山ブルーに加え、モノクロで表現された水墨画にもお目にかかることができます。

ここ最近、水墨画の魅力にもハマりつつある私には、今回の展示で、東山魁夷の墨画による障壁画やスケッチを見ることができ、かなりの充実感を味わえました。

ところで、当然ながら、一般人には展示室内の写真の撮影は許可されていませんので、これ以上は写真で紹介できないのが残念ですが、展示室入って程なくのコーナーで、作品名が「濤声(とうせい)」というエメラルドグリーンの初夏の海のふすま絵がいきなりドーンと目の前に広がります。
迫力を感じるとともに、静かな波の音が聴こえてきそうな感覚に陥りました。

・・・今、写真で紹介できないのが残念とは申し上げましたが、いやこれは、この素晴らしさは写真ではわからない、実物をやはり見るべきです。

「東日本大震災復興祈念 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」河北新報の記事とチケット

さて、ここで歴史で学んだことを、思い出してみましょう。
唐招提寺」は、仏教の戒律を伝えるために5度の失敗と失明を乗り越えて来日を果たした中国唐時代の高僧「鑑真」が安置されているお寺です。
今回の展示作品は、この鑑真に捧げられた障壁画なのです。

日本仏教の発展に尽力した鑑真の心を表現するため、東山は全国各地を取材旅行し、これらの作品が完成したのだということです。
ここ東北の地では、宮城は蔵王、岩手は浄土ヶ浜など、青森は浅虫、秋田は男鹿半島、山形は温海と、各地を歩かれたそうです。

東山魁夷による理想の心象風景。
これらの大きなふすま絵が並んだ空間にいると、荘厳な自然の中に佇んでいるような、とても静かな気持ちになり、心が落ち着きます・・・

繰り返しますが、これは写真などではわからない、実際に足を運んで、その空間に身を置いてナマの作品に触れなければ、得られない感覚です。

ちなみに、いつもは2階の特別展示会場外のスペースでグッズ販売がされますが、今回の宮城県美術館での特別展では、1階ロビーの片隅に出店されていました。

宮城県美術館1階ロビーにて、東山魁夷のアートプリント等々の品定めをしている人々

今回の展示会のオリジナルグッズは少なめでしたが、どなたでも立ち寄れるため、これを機に、東山魁夷のアートプリントを購入している人が結構いらっしゃるように見受けられました。

私はもちろん、図録を購入。
今回は、大物の展示品が多い分、全体の作品数が少ないので、図録も100ページ程度と薄めで、幅の取られる冊子ではなかったこと、とはいえ、ページ数少ないながらも、折り込みが数ページあって見応えあり、かつ内容が的を絞られているので、ありがたかったです。

図録、何冊も買ってますが、正直、読み切れることはほとんどないですし、本棚のスペースも減る一方なので、私にはこのくらいの分量だと助かります(苦笑)。

なお、本特別展は、
宮城県美術館での展示期間は2020年9月19日(土)から2020年11月1日(日)まで
となっており、その後は
岩手県立美術館において、2020年11月14日(土)から2020年12月27日(日)まで
開催される予定です。

宮城県で見逃したかたは、岩手県へのご旅行の行程に加えるのも一つではないでしょうか。
私も、このコロナ渦に定着しつつある「ステイケーション」として、隣県の岩手へ出かけて、異なる美術館で再びあの静けさに浸るのもいいかなぁなんて考えている次第です。

ステイケーション:「Stay(滞在)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせて作られたアメリカ発の造語。遠出をして楽しむ旅行を指す「Vacation/バケーション」に対し、自宅または近場に滞在(Stay/ステイ)して、気軽に楽しむ休暇のこと。

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あなたは
東山ブルー or モノクロの墨画
どちらがお好みですか?

想像力や創作性がアップする☆大人にもオススメの絵本

大人が見ても楽しい五味太郎さんの仕掛け絵本で感性を育もう


「絵本」という響きに、あなたが思うのはどういったことでしょうか?

子どもの頃に読んだもの、お子さんに読ませてあげるもの、一般的にはそのように考えられていますが、大人の凝り固まった頭と心をほぐすのにも効果を発揮します。
少しでも多くの大人のみなさまに親しんでもらえたら、あたたかくて幸せな世界が広がるのではないかと思っています。

そこでまずご紹介するのは、絵本好きなら誰もが知っている「月刊MOE (モエ) 」という雑誌について。

MOEは絵本のある暮らしを提案する月刊誌で、人気の作家さんや絵本・人気キャラクターをテーマとした特集から、アート・映画・旅・ハンドメイド雑貨・スイーツなど、生活が豊かになる旬の情報が満載です。

月刊MOEのWebサイト

ちなみに、MOEが大人向けであるのに対し、「kodomoe(コドモエ)」という、親子で楽しめる、子どもが喜ぶ付録付きの雑誌(隔月発刊)もあります。
子ども向けとはいえ、こちらも、可愛くて楽しい内容なので、大人だけでも楽しめちゃったりします。

さて、MOE2020年7・8合併号の特集は、「100万冊売れた絵本」でした。
MOEでは、人気の絵本がたくさん紹介されるこういった特集が定期的に組まれます。

売れる絵本特集となると、必ずあがる名作家の一人、五味太郎さん。
今は絵本から遠ざかった人でも、五味太郎さんの絵本は読んだという人は多いかと思います。
今回の特集では、その五味太郎さんのロングインタビューが掲載されていました。

「僕にとって絵本を描くのは仕事じゃない。」
「絵本は『言い切れない』ことの面白さみたいなのがあるんだよ。
文芸は言葉で説明しないと次に話が進まないけど、絵本ていうのは決定事項がないんだ。
僕は、揺れながら進んでいけるメディアとして、絵本を発見したんだよ。」

MOE 2020年7・8合併号 P12、P14より)
そんなことが語られていて、とても興味深く読みました。

表紙のイラストは五味太郎さんの超人気作「きんぎょがにげた
特別付録が素敵だったのもポイント。
クリアファイルは中身が透けて見えるものが使い勝手がよくてgood!
きんぎょがにげたグッズはいろいろ販売されていますが、これは一般販売されていないのです☆

インタビューには、五味太郎さんの代表作である、しかけ絵本シリーズについても取り上げられていました。

五味太郎さんのしかけ絵本は、私も大好きです!
お話の流れに、しかけのデザイン性、それらのアイディアはいったいどうやって生まれてくるのでしょう・・・

私もお気に入り五味太郎さんのしかけ絵本とうさん まいご

「穴からのぞかせたり、しかけを考えていくのは面白いし、僕がつくるのはみんな、基本は自分がほしいと思う絵本。申し訳ないけど、読者は二の次でいいんだよね(笑)」
MOE 2020年7・8合併号 P14より)
そういう思いで作られた絵本は、本当に楽しいです。

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、こんな風に部分的に切り抜かれたページを開閉することで前後のページの絵を利用した楽しいお話が展開されます。

面白くて素晴らしいアイディアに、ただただ感心させられるばかりです。
是非、お手に取って見ていただきたいです。

凝り固まった頭と心を柔らかくして、豊かな世界を広げてくれる、絵本。
今後も時々ご紹介していきたいと思います。


あなたの
思い出の絵本は
なんですか?

とうさんまいご (五味太郎・しかけ絵本 (2))

ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展@仙台

日常を忘れて贅沢な貴族時間の疑似体験


宮城県美術館で開催されている「ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」に行ってきました。

宮城県美術館外側に設置された看板
宮城県美術館の正面入口

本展覧会の開催期間は、2020年7月14日(火)~9月6日(日)です。

ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展 チラシ(表)

当日券料金は1,500円(一般)で、私は先日東北歴史博物館にて開催されている「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ 」行って参りましたので、その半券提示で、100円が割引されました。

GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ 」についての投稿はこちら↓
世界に誇れる日本のアート GIGA・MANGA@東北歴史博物館/江戸戯画(GIGA)から近代漫画(MANGA)までをたどる漫画の歴史展覧会

宮城県美術館のWebサイト

リヒテンシュタイン侯爵家について、まず初めて知った時に驚いたのは、君主のその家名が国名となっていて、世界唯一であるという点です。
リヒテンシュタイン公国、かつて神聖ローマ帝国に支えたリヒテンシュタイン侯爵家が統合し、昨年2019年に建国300年を迎えた、中央ヨーロッパに位置する立憲君主制国家です。

欧州の名門ハプスブルク家に支え、1719年に建国された公国において、侯爵家の歴代当主たちが集めたコレクションは約3万展にも及び、「農夫から銀行家へ」と称されるほどに目覚ましい経済発展を遂げてきたリヒテンシュタイン公国は、小国でありながら、最もリッチな国として知られています。

ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展 チラシ(裏)

ところで、リヒテンシュタイン侯爵家コレクションの展覧会が日本で開催されるのは、これで2回目です。
日本で初めて取り上げられたのは2012年国立新美術館で巡回展が始まり、「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」というタイトルで、2013年には高知県立美術館、京都市美術館にて展覧されました。

2012・13年開催時の朝日新聞Webサイト

私は、当時、国立新美術館での展覧会を拝見し、世界屈指のルーベンスコレクションを中心とした、約5世紀に渡って収集されたその素晴らしいコレクションを目の当たりにし、とても感動したのを覚えています。

2012年国立新美術館で開催された「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」の展覧会図録とチケット
(画像をクリックすると、目次のページを拡大できる画面が開きます)

日本ではまだ2回目のリヒテンシュタイン展。
前回は、侯爵家の収集の歴史と壮麗なバロック芸術が主要なテーマであったのに対し、今回はコレクション品の繊細さや技巧が焦点となっていています。

ちなみに、展覧会に行くと大抵は図録を購入する私でも、過去に行ったことのある作家やテーマをモチーフとされた展覧の際には、内容がカブるのでかさばる図録は買いません。

なので、正直なところ、今回の展示を観る前は「以前もリヒテンシュタイン展は観たし、図録は前回買ったから今回は買わない。」と思っていたのですが、実際に観ましたら、前回とコンセプトが異なっていて、また違う面白さがあったので、結局、図録を購入してしまいました。

ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」の展覧会図録とチケット
今回の図録はスクエア型で黒を基調とされていて、前回と異なるデザインが気に入った点も、購入の決め手でした。

前回はただただ圧倒されるという部分が強かったですが、今回は、中国や日本の磁器が公国へと辿った道筋にもスポットを当てられていて、親近感も湧き、しみじみと作品を味わうという感覚が濃く、リヒテンシュタインについて深掘りすることができて楽しかったです。

リヒテンシュタイン侯爵家の
珍しいもので、良いもの、かつ美しく上品な事物にお金を費やすことは永遠かつ偉大で、最大の記念となろう
という家訓は現在も受け継がれ、今も美しいコレクションは増え続けているのだそうです。
また数年後も、私たちの心を豊かにしてくれる、素晴らしいコレクションを見させてくれることでしょう。

特設ショップではミニチュア陶器が販売されていて、きらめくリアルな可愛さに思わず購入。他にも種類はあったのですが、私が行った時、このセットは最後でした。追加されたかな…

宮城県における「ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」は間も無く終了です(2020年8月22日現在)。
貴重な機会ですので、ヨーロッパの偉大な小国リヒテンシュタインへの擬似トリップ、よろしければ、お出かけくださいませ☆

なお、宮城県美術館の次の巡回先は、広島県立美術館で、2020年9月18日(金)から2020年11月29日(日)までとなっており、こちらが今回の日本での巡回最終地となります。

そして、宮城県美術館で次に予定されている展覧会は東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展(2020年9月19日(土)〜11月1日(日))です。
こちらも見逃せないです。

コロナで県外へは気軽に行けないご時世ではありますが、自分の住まいである宮城県では、今年は見応えのある企画展示が多く開催され、とてもありがたいです。
このような企画の主催者様や関わる皆様方へ、心から感謝いたします。

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