日本の公害汚染を伝えた写真家ユージン・スミスの遺志を継ぐ映画

史実に基づく映画「MINAMATA ーミナマター」から考える生命


科学が発達した現代、私たちは生きるためにその研究や開発からたくさんの恩恵を受けることができています。
しかし人類が押し進める発展によって時に起こる公害汚染という問題。

日本で記憶に新しいのは、ここ宮城県の隣で発生した「福島第一原発事故」がありますね。
これは2011年の東北地方太平洋沖地震による原子力事故で、10年を過ぎてもなお問題は解決していないことは、日本人なら誰もが知っている通り。


しかし、日本で起きた公害汚染といえば、今からさらに遡ること65年、熊本県で発生し、1956年に公式認定された水俣病については、どれだけの人が理解をしているのでしょうね。

私はと言えば、水俣病と公害汚染については、小学校での社会科の授業を通して知った世代です。
日本の四大公害病として他に、富山のイタイイタイ病、三重の四日市ぜんそく、新潟の第二水俣病、テストに出ましたよね。

水俣病は、工場から排出された有機水銀によって体が侵され、中枢神経を中心とする神経系が障がいを受け中毒性疾患となってしまった人が大勢いる公害病で、私は子どもながらに、何となく戦争と同じような怖さを感じ、この時代の熊本の住民に生まれなくて良かったという感覚を持ったことを記憶していますが、その程度で、自国のことでも、訪れたこともない所の自分には関係のない問題といった感じで、それほど考えたことはありませんでした。

映画「MINAMATA ーミナマター」のチラシ(表)
(画像をクリックするとPDF画面が開き、拡大できます)

そんな私が、伝説の写真家とも言われるユージン・スミスが追い世界に伝えた水俣病の真実を、ジョニー・デップ主演によって映画化されたということで話題の「MINAMATA ーミナマター」を観てきました。
(私はフォーラム仙台で観ましたが、2021年9月26日現在、宮城県内では数カ所で上映中です)

映画は、ジョニー・デップ演じるユージン・スミスが、自身が撮影した写真を自宅の暗室で現像作業をしているところから始まります。
BGMに流れるロックな音楽と赤みを帯びた暗室で作業をするその姿はとてもクールで、写真が趣味の一つである私はその出だしでかなり引き込まれました。

しかし、そのかっこいいオープニングも束の間、重くて深刻な物語へと変わっていきます。


映画の中盤、公害汚染を引き起こした企業であるチッソ社の社長が、真実を知らされてはならないと、ユージンを丸め込むために「我々が行なっているのは人類のため、犠牲になるのは漁業なんかを営む少しの人達だけ」といった発言をする場面があったのですが、それには映画鑑賞者としても憤りを感じ、これが映画の中でのセリフとは言え、現実にもあんな被害を起こし、責任逃れをしてきた企業と国はやっぱりおかしいよと改めて思いました。

この映画は、あくまでも”史実に基づく物語”であり、フィクションですが、実際に当時撮影された写真や映像も挿入されており、一層胸が締め付けられる思いがしました。

映画「MINAMATA ーミナマター」のチラシ(裏)

映画にも登場するもう一人の実在の人物でもあるユージンの元妻アイリーン・美緒子・スミスさんが
”ユージンは、決して諦めず、何があっても真実と向き合う人でした。何より大切にしていたことは、被写体と写真を受け止める側、両者への責任でした。
と述べています(映画「MINAMATA ーミナマター」の公式サイトより)。

この映画でも、ユージン・スミスは、酒浸りで自分勝手、複雑な性格を持ちながらも、人との繋がりを大切にし、真実を伝えるために命をも賭けた人であったことが描かれています。

そして、こちらはこの映画のキャッチフレーズ。

” 一枚の写真が世界を呼び覚ます ”

動画が主流となった現代、TVは興味ない私でも、映画は大好きだし、インターネットにアップされた動画も観ますし、たまに自分で動画撮影することもありますが、動画よりも一瞬を切り取る写真からの方が、ずっと強いメッセージを受けると感じることがあります。
一瞬のために渾身が込められた写真にはやはり見るものを捉える力があり、人は心を動かされることがあります。

ユージン・スミスは、世界の人に真実を伝えたいと、時には重症を負いながらも写真を取り続け、報道写真家として壮絶な人生を送り、その生涯は59歳で幕を閉じてしまいますが、彼の写真と生き方は、こうして今も私たちに訴えかけています。

人としての心や生きるものの命を奪ってまでしてなされる科学と経済の発展が人類が目指すゴールなのか、本当の意味での人としての豊かさとは何なのか、生かされている私たちには忘れてはならないことがあるのではないかと深く考えさせられる映画でした。

映画「MINAMATA ーミナマター」のパンフレット

なお、この映画のエンドロールでは、ユージン・スミス氏には直接関係ありませんが、写真とともに世界で起こった数々の公害汚染事件が紹介されます。
普段はエンドロールは見ずに席を立つ人も、是非最後までご覧になって、私たちが生かされている美しく大切な地球の環境について、そして生きとし生けるものの命について、考えてみる時間にしてみてはいかがでしょうか・・・


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公害汚染

子ども支援に尽力するアスイクさんの活動

そして私にもできる支援


今年(2021年)は、東日本大震災から10年。この震災をきっかけに、さまざまな支援団体が発足しました。
NPO法人であるアスイクさんもその一つで、代表を務める大橋雄介さんが、震災後に始めた、避難所で子ども達の学習サポートをする活動から支援の規模を広げ、ここ宮城県では現在とても大切な役割を果たす団体として存在してくださっています。

私がNPO法人アスイクについて知ったのは一昨年のことで、大橋さんから直接お話を聞ける機会があり、その取り組みにとても共感しまして、その後、活動を見守らせていただいています。

過去の関連記事
子どもたちの幸せを願って/NPO法人アスイクさんの取り組み
子どもたちを守りたい!アスイクさんのクラウドファンディング/仙台のNPO法人アスイクさんの「食糧支援×見守りプロジェクト」
目標達成の理由はそこに愛があるから/アスイクさんからのクラファン協力御礼のお手紙

大橋さんがご友人と始めた小規模な学習支援だったものが、震災から10年を経た現在では、スタッフも100人を超えるものとなったそうで、主な活動内容は、

・保育園、児童館の運営

・学習・生活支援、不登校・ひきこもり支援、食を通した支援といったセーフティネット事業

といったもので、その他にも、子どもたちを支えるためのプロジェクト事業や、被災地やコロナによる家庭への影響などを調査する事業など多岐にわたり、宮城県内にある数カ所の拠点で、「生きづらさ」を抱える子どもたちと保護者たちへの支援に取り組まれています。

そして今年、NPO法人アスイクの設立10周年を記念してシンポジウムを開催されるとのこと。

(画像をクリックするとPDF画面が開いて拡大できます)

日本でも問題が浮き彫りになってきている子どもたちの貧困、不登校やひきこもり、そして近年よく耳にするようになったヤングケアラーといった様々な課題を解決するのは簡単なことではありませんが、この国の義務教育というシステムの中ではとても解決できることではなく、アスイクさんのような組織が主導となり周りを巻き込んで、多くの人が共に、子どもを取り巻く社会の問題を自分ごととして捉え、不幸を減らし幸せへと導くにはどうしたら良いかを考えることが大切だと思います。

今回、このシンポジウムは、学生や子育てに困難を抱えている当事者の皆さんも含めて多くの人に参加していただくために参加費無料で開催したいということで、その開催資金をクラウドファンディングで募集されています。
NPO法人アスイク10周年記念クラウドファンディング
昨年は「食糧支援×見守りプロジェクト」ということで困難を抱えた家庭に物資をお届けしたいとクラウドファンディング に挑戦し、その目標を達成されましたが、今回の趣旨は異なるのでちょっと厳しそうな感じもしますが、頑張っていただきたいです。

私は普段アスイクさんの取り組みに直接的に協力できているわけではなく、影ながら応援させていただいていますが、このシンポジウムの企画も素晴らしいですし、営利を求めていない法人には、こういった催しの開催はなかなか難しいものですので、もし私自身が当日のシンポジウムに参加できないとしても、少しでも支援できればと思い、気持ち程度ですが寄付させていただきました。

「将来を担う子どもたちのために」とはよく言いますが、私は、それよりも、ただ、「生きづらさ」を感じる子どもが減って欲しい。
「生きづらさ」を抱えた子どもは、何の支えもなければ、そのまま、「生きづらさ」を抱える大人へと成長します。
この混沌とした世の中でも、生きやすい社会、幸せな世界が広がることを願って、私にもできる支援になればと思います。

寄付は1,000円から可能ということですので、もしあなたが、現代の子どもたちとその取り巻く環境について課題を感じていらっしゃるなら、この支援についても考えていただけたら幸いです。

NPO法人アスイクのWEBサイト


あなたが考える
生きやすい社会とは
どんなものですか?

フランスの友人による腎臓移植ブログ

腎臓移植の実状をドナーの立場からわかりやすく


昨年、このWEBサイトを作ってからほどなくして連絡を取ることができるようになった、私の大切な友人である久美子ちゃん。
以前、当ブログでも紹介させていただいた通り、彼女は現在フランスに住んでいて、ご主人と共に素敵なB&B(家庭的なお宿)を経営しています。

親友の素敵な住まい@フランス/La Vieille Forge ラ・ヴィエイユ・フォルジュ


そのお宿「ラ・ヴィエイユ・フォルジュ」のWEBサイトから、周辺情報やB&Bについて綴られたブログも拝見することができ、ここ日本にいながら、私も楽しませてもらっています。

ブルゴーニュ田舎暮らしとB&B

そんな彼女が、最近、B&Bについてのブログとは別に、新しいブログを綴り始めました。

なんとテーマは「腎臓移植」。
オランダ人のご主人は、多発性嚢胞腎という難病を抱えていていますが、夫婦二人三脚で支え合って過ごしていて、まもなく迎える夫婦間腎臓移植手術にあたって、何かの役に立てればとブログにしてくれたのです。

ご主人の病気のことも、いずれ移植手術をするということも、メールで前々から伺ってはいたけれど、私の身近では聞いたことがない話なので全く想像もつかず、とても大変そう、大丈夫なの?と何度となく伝えていたのですが、当の彼女は前向きで、こちらの方が勇気をもらえるほどです。

綴り始めてくれたブログも、重く深妙なテーマではありながらも、ユーモアも交えつつ記されていて、なんの知識のない私でも興味深く読ませていただいています。

フランスと日本の事情は異なることも多いとは思いますが、同じような課題を持つ方にも、そうではない方にも、参考になることや、励みになることもあるかもしれません。
少しでも多くの皆さまにご覧いただけたらと思い、シェアさせていただきます。

まずは、こちらからご覧くださいね。

フランスで腎臓移植/はじめに


コロナ禍が落ち着いて、海外渡航も再びできるようになったら、是非とも訪れたいと決めているフランス。
きっと良いタイミングに恵まれ、ブルゴーニュで平和に暮らすハンセン夫妻に会えることを信じ、楽しみにしています。


あなたは
臓器移植について
考えたことがありますか?



臨床美術で描くピーマン

オイルパステルで「ピーマンの量感画」制作


本日は2021年9月5日(日)、急に涼しくなって、秋の気配も感じるようになりましたね。
しかし、今月参加するつもりでいた臨床美術の研修会も、緊急事態宣言を受けて延期となってしまいました。
ですので、前回に引き続きではありますが、今回もまた、臨床美術プログラムの独習をすることにしました。

臨床美術で楽しむマチエール/誰にでも表現できるアートな絵肌

臨床美術「色面とマチエール」

前回は「色面とマチエール」というプログラムで抽象画制作でしたが、今回は「ピーマンの量感画」といいまして、具象画をやってみることにしました。

さて、ピーマンといえば、夏が旬。
夏も終わりかけですが、まだスーパーでは他のお野菜に比べて、安く購入することができます。

臨床美術には豊富なプログラムがあって、実施する内容によっては、その時々の季節を感じることができることも魅力の一つです。
今日は、ピーマンをモデルにしてアート制作、そして、その後はその旬の味覚を楽しく味わおうと思います♪

臨床美術では、様々な画材を使いますが、最も基本的なのが、「オイルパステル」を使ったプログラムです。
前回に引き続き、今回もオイルパステルを用います。
オイルパステルは、パステルのようだったりクレヨンのようなタッチなど、幅広い描き方が楽しめる画材でありながら、扱いに難しさがないので、小さな子どもからお年寄りまで、誰にでも親しんでもらうことができます。

臨床美術の面白さは、モデルとなる素材をじっくり観察するところにもあります。
今回は私の独習ですが、教室での実施の時は、参加者の皆さんと共に観察して語らい合い、あたたかなコミュニケーションの場が生まれることも臨床美術の醍醐味です。

それでは早速、今日の私のモデルさんにしたいなと思ったピーマンを手にとって、色や輪郭の変化など感触を感じながらじっくり観察します。

また、ピーマンを縦半分にカット、そして輪切りにもして、その中身を見て、改めてピーマンの形態に注目してみます。
小さな子どもだったら、普段でも食材に触れる時、好奇心を持って観察することもあるかもしれませんが、これほど馴染みある野菜だと、大人になった私たちはそうそうじっくり観察するなんてないですよね。
というわけで、これも、凝り固まった脳への心地よい刺激となります。

じっくりと観察をしたら描いてくわけですが、このプログラムの面白いところは、まず、その季節に感じる空気の色で下地を入れていく点にもあります。
描き込む用紙はピーマンのタネの色に近いクリーム色であることもポイント。
自分がこれと思った空気の色を2色選んで、ピーマンの空洞の中にその季節の匂いが詰まっているようなイメージで・・・

軽やかに塗り重ねたら、その上にピーマンの皮の色だと感じる3色以上を選んで描いていきます。
ピーマンの独特の形。陰影を描いていくことで感じるピーマンの膨らみ。

十分に色を塗り込んだら、次は、房やヘタを線で描いて、割り箸ペンでスクラッチしたりして、細部を描いていきます。

さらに、オイルパステルと相性の良いダーマトグラフで強調したいアウトラインを描いて・・・

最後に、最初に自分で選んだ空気の色で影を描いて表情豊かにするというのも、このプログラムの面白い発想です。

仕上げに、パウダーでオイルパステルを定着させたら完成です。
時間にして、およそ1時間程度。

ちなみにですが、前回の「色面とマチエール」による作品も緑色でしたが、あちらはペイルグリーン(うす淡い緑)は使いましたが、今回使ったグリーン(緑)、イエローグリーン(黄緑)は一切使ってないんです。
シンプルな12色セットでも様々な色味を表現できるのがオイルパステルの良さ。

黒い台紙を下にして、額装してみました。
百均の額縁だけど、悪くないでしょ?

アート制作で豊かな気分になった後は、モデルになってもらったピーマンを使ってお料理。
こちらもまた今が旬の生キクラゲと共に、中華風炒めを作ることにしました。
赤ピーマンもお安くなっていたので、一緒に炒めて、彩りも良く♪

フライパンにごま油を熱し、みじん切りにしたニンニクを弱火で炒めて香りが出てきたら、細切りにした生キクラゲを投入して油が回ったら同じく細切りにしたピーマンを炒め、調味料(醤油、酒、中華スープの素、砂糖、水)を加え、水分が飛んだら塩胡椒して出来上がりの、シンプル料理です。

アート制作からじっくり感じて、美味しくいただく、季節の食材。
秋の味覚も増えてくるこれから、アートな視点で食材を探してお料理するのも、日常をちょっと楽しくするスパイスになるかもしれません♪



あなたが食べたい
秋の味覚は
なんですか?