こんなに面白かった鉄腕アトム

純粋な愛 X 鉄腕にかなうものはない


先日、画家パウルクレーの絵に谷川俊太郎の詩が添えられた絵本をご紹介しましたが、谷川俊太郎さんといえば、元祖TVアニメ「鉄腕アトム(昭和版)」主題歌の詩を作られた人であることはご存知でしたか?

前回の記事:
大人のための画家と詩人のコラボ絵本/パウル・クレー X 谷川俊太郎

手塚治虫原作のアニメ「鉄腕アトム」は、1963年からフジテレビ系で日本初の30分テレビアニメシリーズとしてアニメ化、1980年には日本テレビ系でカラー版の『鉄腕アトム (アニメ第2作)』が制作され、言わば、カラーアニメの原点とされる名作。
2003年には平成版のアトム、さらにはCGによるアニメ映画も作られ、少しずつ形を変えつつも、多くの世代に愛される作品です。

先日の投稿の際、谷川俊太郎さんから鉄腕アトムを思い出し、小さな頃にTVに食い入って見た記憶が蘇ったので、思わず動画を探しまして、初めは歌だけ聞ければいいかなと思っていたのですが、第1話、面白くて見きってしまいました。

これを見る前、記憶にあったのは、主題歌の部分と、近未来SFのワクワクする展開の中で子どものロボットが世界を救うという物語に魅力を感じていた点で、具体的な内容は全く覚えていなかったのですが、今回YouTubeで見て、こんなに面白かったのかーと関心。
もしかしたら私の近未来SF系の映画が好きな原点は、ここにあるのかもしれません。

それにしても、アトムの誕生秘話、こんな話だったんだ?!といきなりのシビアなストーリー展開に驚きました。
第2話、3話と続けて見たくなってしまいますね。

このSFストーリーが面白いというのは一つですが、「鉄腕アトム」で手塚治虫が伝えようとしているのも「愛」ですよね。
アンドロイドではあるけれど、子どもの心を持っているからこそ表現できる純粋な愛。掛け値無しのやさしさ。
愛のある鉄腕だからこそ、みんなに必要とされ愛される百万馬力になるのだろうな、いくら怪力とか権力とかお金があっても、そこに愛がなければ何にもならないよねと、またまた深く思い浸りました。


あなたは
子ども心
覚えていますか?

大人のための画家と詩人のコラボ絵本

パウル・クレー X 谷川俊太郎


社会人になってからというもの、読書と言えば、ビジネス書や自己啓発系のものが多かったのですが、気がつくと、似たり寄ったりのものも結構あって、もうそろそろ、子どもの頃や学生時代によく読んでいたような、物語や小説、詩集なんかをゆっくりと読みたいなぁという気持ちになってきました。

そこで見つけたのが、美術好きには嬉しい、絵画と詩がコラボレーションした素敵な一冊。

クレーの絵本 」(講談社出版)は、抽象画で有名なパウル・クレーの絵画に、日本の現代詩人を代表する谷川俊太郎の詩が添えられた、とても美しい本です。

パウル・クレー(Paul Klee)は、1879年のスイスで、音楽教師の父と声楽家の母との間に生まれました。4歳で祖母から絵を習い、7歳でバイオリンを始め、小さな頃から芸術の世界にあったクレーの生涯は、絵と音楽と詩にあふれたものだったのだそうです。

そんなクレーからインスピレーションを受けて、谷川俊太郎が詩を綴っています。

表紙にもなっている絵は「黄金の魚/The Goldfish」(1925年制作/ハンブルク美術館収蔵)で、添えられた詩の「どんなよろこびのふかいうみにも ひとつぶのなみだが とけていないということはない」という最後の部分が、心にズシンときます。

どの絵も、詩も、静かな中にも深さと、情緒的な美しさを感じるものばかりで、贅沢な一冊です。
インテリアとしても飾っておけるシンプルな装丁も素敵です。

この本の最後に、谷川氏による解説が載っていますので、一部抜粋させていただきます。
(ちなみに、背景の絵はクレーの「赤い気球/Red Ballon」(1922年/グッゲンハイム美術館)で、この本にも載っています)


魂の住む絵


クレーの絵に現れているものは、私たちがふだん目にしているものとは違う。
たしかにそこには文字や人のかたちや植物らしきものが描かれてはいるが、それを言葉にしようとすると私たちはためらう。
言葉で彼の絵をなぞることは出来ないと私たちは思う。
クレーは言葉よりもっと奥深くをみつめている。
それらは言葉になる以前のイメージ、あるいは言葉によってではなく、イメージによって秩序を与えられた世界である。
そのような世界に住むことが出来るのは肉体ではない、精神でもない、魂だ。

クレーの絵は抽象ではない。
抽象画には精神は住めても魂は住めない。
言葉でなぞることは出来ないのに、クレーの絵は私たちから具体的な言葉を引き出す力をもっている。
若いころから私は彼の絵にうながされて詩を書いてきた。
ちょうどモーツァルトの音楽にうながされてそうしてきたように。
「詩」は言葉のうちにあるよりももっと明瞭に、ある種の音楽、ある種の絵のうちにひそんでいる。
そう私たちに感じさせるものはいったい何か、それは解くことの出来ない謎だ。

(「クレーの絵本」最終頁 谷川俊太郎氏による文の一部)


抽象画はなんだか難しいと思っていた私にも、クレーの絵には引き寄せられてやまないものがあり、今では好きな画家の一人です。
谷川氏が述べているように、クレーの絵は単なる抽象画ではなく、見るものに魂を感じさせるものだからなのだろうと思います。

以下の動画は、パウル・クレーの作品「島/Island」(1932年/アーティゾン美術館)について紹介されているものです。
「クレーの絵本」では取り上げられていない作品ではありますが、クレーの作風についての参考になると思います。
2分ほどで短くまとめられていて、静かで穏やかなナレーションも心地よい、良質な動画です。

BGMは無いのに、なんだか音楽が聞こえてきそうな気がしませんか?
そして、この不思議な感覚の余韻にしばらく浸っていたい、そんな気持ちにさせられます。

穏やかな気持ちになれる芸術との対話、そんなひと時を、普段の生活の中でも大切にしていきたいです。



あなたは
抽象画を
どう感じますか?




クレーの絵本