創作造形活動の効能は誰にも有効

臨床美術は難しいものではないのです♪


時々このブログでも述べさせていただいている「臨床美術」についてですが、気になるけど「臨床」ってことは患者さん向けなの?とか、なんだか難しそうという声もお聞きする、今日この頃です。

以前ちょとだけご紹介しました「改訂新版 臨床美術」という本、こちらは臨床美術を知っていただくものとして、一般向けに刊行されている大変オススメのものではありますが、サブタイトルに「認知症治療としてのアートセラピー」とされていることもあり、万人向けではないような印象を持たれるかたも多いようです。

過去の記事↓
臨床美術を初体験した時の感動 その3/デジタル画とアナログ画 そして臨床美術のアートプログラム

臨床美術」は、この本の編集者である金子健二先生(宮城県出身の彫刻家)が、ご自身の親御さんの認知症改善に美術が有効ではないか?ということを経験を持って考え始めたことをきっかけに開発されたものなのです。
この本の中に、その興味深い経緯が詳しく書かれていますが、元々認知症改善へ向けて生み出されたものが、開発されてから数年、認知症改善だけでなく、介護予防や、働く人のストレス緩和、子どもの感性育成などへの効果があるとして、普及していきました。

金子先生はこの本の中で、次のように述べられています。

臨床美術において、また美術教育において、作品に優劣をつけることは危険であり、私は反対です。

学校教育では当たり前のようにしている「評価」ですが、美術作品というものは本来「心の叫び」です。

上手、下手などどいった「評価」は左脳世界のすることであって、右脳世界の美術では意味のないことです。

まして臨床美術では、そのような優劣の価値判断は禁物です。
ですから、「うまいですね」というほめ言葉は使いません。
具体的に良いところを見つけて励まし、ほめることが大切です。

改訂新版 臨床美術」p.37

上手・下手という言葉で「評価」しないで、触れる聞くほめるのが「臨床美術」であり、それが本来の美術教育でもあるということですね。

というわけで、難しい響きに感じられてしまうこともある「臨床美術」ではありますが、勝ち負けのないアート、誰にでも楽しんでいただけるものであり、変化の激しい時代において不安を感じて生きる人が多い昨今では、ますます必要とされていくものと思います。

臨床美術チラシ

また、この本には、私の尊敬する人として既にご紹介した関根一夫先生による考察文もありまして、ここでは「ファミリーケア」の重要性について述べられています。

例えば、対象となる患者さんとそのご家族の関係性であったり、実はご家族自身が心の問題を持っているだとか、そういったことに目を向けることの必要性を説かれています。

臨床美術の一環として、家族が安心して愚痴をこぼせたり、どういうふうに患者さんと接したら良いのかを一緒に考える「ファミリーケア」の役割がいかに大きいかということがよくわかる内容です。

関根一夫先生についての過去の記事はこちら
いてくれてありがとう/いつも忘れずにいたい素敵な言葉

改訂新版 臨床美術」は「臨床美術」が開発されて間もない頃に編集された本なので、主に認知症の患者さんを対象に述べられてはいますが、家族の中での問題や人間関係での問題という点では、何もご病気のかたがいらっしゃるところだけでの話ではないですよね。
人間関係の問題というのは、人の心の問題があって発生するもの。
その心の問題の改善に「臨床美術」は効果が期待できるので、是非とも多くのかたにお試しいただきたいと思うのです。

ちなみに、特に問題などはないという方々にとっては、日々の生活に彩りが増す、そんな効果があります。
例えば、写真を撮ることが好きなかたは、何気なく歩いている時でも道端の花に目が行くとか、空が美しいなとかしみじみ感じるのではないかと思いますが、その感覚と似ています。
何か趣味を持ちたいな、という人にもうってつけだと思いますよ♪


あなたにとって
美術とはどういうもの
でしょうか?

改訂新版 臨床美術