被爆ピアノを通して考える“平和 ”

広島在住のピアノ調律師さんがモデルの映画「おかあさんの被爆ピアノ」


本日、2020年8月15日は、戦後75年の「終戦の日」です。
平和が当たり前の日本に生きている現代の私たちですが、わずか75年前は、それが当たり前のことではなかったわけですよね。
戦後に生まれた私たちには知り得ようのない思いをされている方々が、今も生きていらっしゃる。
また、世界を見渡せば、いまだに、戦時同様の苦しい毎日を送る人もいる・・・

映画「おかあさんの被爆ピアノ」チラシ(表)

今、平和なこの国で過ごせる日本国民として、忘れてはならないことがある。
そういったことを考えさせてくれる映画「おかあさんの被爆ピアノ」が、現在公開されています。

被爆ピアノという存在、あなたはご存知でしたか?
私は、この映画によって初めて知りました。

原爆の爆心地から3キロ以内で被爆したピアノは被爆ピアノと呼ばれているのだそうです。
そして、持ち主から被爆ピアノを託され、修理・調律して、それらを自ら運転する4トントラックに載せて全国を回り、被爆ピアノの音色で、忘れてはならない原爆の記憶を伝える活動をしているかたがいらしたんですね。

広島市で「矢川ピアノ工房」を営む矢川光則さんが、被爆者団体から広島で被爆したピアノを託され、核兵器廃絶と恒久平和を願って、自らも被爆二世としてご自身のできる平和運動として、全国を回っているのだそうです。

株式会社矢川ピアノ工房HP「被爆ピアノへの取り組み

その矢川さんの活動に着想を得て、映画「おかあさんの被爆ピアノ」は作られました。

映画の中でおりがみのピアノが出てきて、懐かしくなり、私も折ってみました。パステルで描いた鍵盤がヘンですが…

主人公は東京で生まれた大学生の女性。母親は広島で生まれ、暗い過去のある広島に娘を近づけたがらず、実家にあった被爆ピアノも寄贈してしまう。しかし、主人公は、調律師との出会いをきっかけに、亡くなった祖母のこと、そして自分のルーツを探るため広島へとおもむく・・

映画「おかあさんの被爆ピアノ」チラシ(裏)

映画の内容はフィクションですが、平和な現代を生きる、とある普通の家族の物語で、特に過剰な演出もなく、淡々とした流れがかえって、親近感もあり、自分の心の中に静かにさざなみが立っていくのを感じました。

昭和20年8月6日に広島に投下された原子爆弾。
犠牲になった広島の街と多くの命。
原爆を乗り越えた生々しい傷跡の残るピアノから発せられる音色は、温もりと重みがあるように感じ、その旋律の美しさは私たちの胸に確かにメッセージを伝えてくれている気がしました。

映画「おかあさんの被爆ピアノ」パンフレット。
映画製作者の方々の思いと、矢川さんご本人や、広島の原爆に関わる人々によるメッセージが胸を打ちます。

おかあさんの被爆ピアノ」公式サイト

ところで、実際の矢川さんによる被爆ピアノの平和コンサートについて、調べましたら、今年、ここ仙台にもいらしてくださる予定があるようです。
現時点では10月27・28日が予定のようですので(場所など詳細は不明)、コロナの影響などで中止にならないことを願いつつ、今後もチェックしていこうと思います。

世界遺産広島平和記念碑(原爆ドーム)
世界遺産登録基準は『人類初の原子爆弾がもたらした悲劇を伝える価値

なお、映画「おかあさんの被爆ピアノ」は、宮城県では、フォーラム仙台でのみ、8月20日まで公開されています。

フォーラム仙台/チネ・ラヴィータWebサイト


あなたにとって
平和は
当たり前ですか?

愛の人 マザー・テレサ その2

マザー・テレサを取り巻く人々

先に投稿しました「愛の人 マザー・テレサ その1」では、私の愛読書「マザー・テレサ あふれる愛(講談社青い鳥文庫)」について、この本を書かれた写真家の沖守弘さんを中心に書かせていただきました。

今回は、この本に書かれている、つまり、沖氏が出会ってきた、マザー・テレサをとり囲む人々について、ほんの一部だけ、ご紹介させていただきたいと思います。

ユーゴスラビア(現在のセルビア・モンテネグロ)に生まれたマザー・テレサは、貧しい人たちのために働きたいと考え、18歳でインドへ行きました。
そして、数年後、ある出来事をきっかけに、自分のなすべきことは、路上で死を待つしかない人びとが安らかに死を迎えることができる<家>をつくることだと確信し、<死を待つ人の家>をつくり、その3年後には、ゴミ箱に捨てられていた赤ん坊を発見したことをきっかけに、<聖なる孤児の家>をつくりました。
他にも<移動診療所>や<平和の村>など、活動を広げるマザーの元には、多くのシスターや支援をしたいと申し出る人々が集まります。

この本には、沖氏の撮影した写真が、80枚くらい挿入されているのですが、それらの写真の、マザーの元で支援活動をしてる人々は、女性はもちろん男性も、なんだかとても端正で美しいのです。
贅沢のない暮らしをし、衛生状況にも難がある仕事をしているにも関わらず、自分に信念を持ち、心の美しさを保っているから、見た目にも表れるのでしょうか。

ところで現在では、日本でも、マザー・テレサを知らない人はいないし、今も以前も、支援者はたくさんいます。
しかしながら、当時、沖氏は、エコノミック・アニマル(経済的利益ばかりを追求する動物)と言われる日本人は、マザーの活動には無関心なのであろうと思っていたため、ある日、現地で、ボランティアに参加している日本人女性に出会った時には、驚いたのだそうです。

その女性は、商社員である夫のコルカタ勤務に同行、せっかく近くにいるのだからとボランティアに加わったのだそう。
それを沖氏が素晴らしいと賞賛したところ、

「マザーの手伝いをするというより、自分たちのためにやっているんです。
1週間に1回、それもたった2時間ぐらいのお手伝いでしかないけれど、やり終わった後の充足感というか爽快感がたまらなくてやっているので、マザーのためのボランティアなんて、そんな大げさなことではありません。動機不純かしら・・・」

と笑って語ったとのこと。

ボランティア活動をされたことがある人には、その気持ち、わかる!と思われたかた、いらっしゃるのではないでしょうか?

私も臨床美術のボランティアに参加させていただくことがあるのですが、たった数時間の活動で、やっぱり参加してよかった!と毎回心地よい充実感を得ることができます。
もし何らかのボランティアの募集など、参加したことはないけど迷っている、というかたがいらしたら、飛び込むことをお勧めします。
特に、人と直接関わり、サポートしてさしあげるような活動は、相手に喜ばれるだけでなく、自分自身が得られる感動がきっとあると思いますので。

最後に、沖氏がこの本のプロローグに、マザー・テレサの言葉から取り上げている、印象深い一言がありますので、ご紹介いたします。

「 不親切で冷淡でありながら奇跡をおこなうよりは、

むしろ親切と慈しみのうちにまちがうほうを選びたい。」


あなたにとって、
慈しみ
って、どんなものですか?

マザー・テレサ あふれる愛 (講談社青い鳥文庫)

世界遺産検定

心に築く「平和のとりで」

先日、「写真」のカテゴリーで、花と美術と世界遺産の国オランダについて触れ、そこでちょっと書きましたが、私は主に「美術と世界遺産などの芸術に触れること」をテーマに、旅行します。

とは言え、これも震災後に言い始めたことですので、自分にとっては、これからが本番だと思っています。
一度きりの人生、死ぬまで、できるだけ多く、心が震える場所を訪れたい。

デンマークの世界遺産 シェークスピア「ハムレット」の舞台でもあるクロンボー城屋上からの眺め

そこで、どうせなら、なんとなくではなくて、それなりに知識をつけて、出かけた方が楽しいだろうなと思い、世界遺産検定を受けてみようと思い立ったのがおととしの冬でした。
一番基礎となる4級試験に、12月締め切り直前に申し込みをして、翌年2月に受検し合格、そして今年、昨年と同様2月に3級を受け、合格しました。

世界遺産検定は、子供から大人まで毎年大勢の人が受ける、とてもメジャーな試験で、年に4回も開催されます。
(マイスターと1級はそのうち2回)

世界遺産検定のホームページによると、
「世界遺産検定は、人類共通の財産・宝物である世界遺産を通して、国際的な教養を身に付け、持続可能な社会の発展に寄与する人材の育成を目指した検定です。」
とされています。

そこまでの志を持ったわけでもなく、単純なきっかけで世界遺産検定合格に向けての勉強を始めた私ですが、学び始めてすぐ、心があたたかくなり、世界遺産をますます勉強したい!と思えるようになったポイントがあります。

『戦争は人の心の中に生まれるものだから、人の心の中にこそ、平和のとりでを築かねばならない』

これは、ユネスコ憲章の前文にある言葉です。
検定の公式テキストで一番初めに学習する部分です。

この解説として、
「世界中の人々が互いに不信感や敵意を抱かぬよう、またそれを心の外に出さぬよう、お互いに理解し合うことが平和な世界を築く上で重要であるという、ユネスコの理念をよく表したもの」
と、テキストには記されています。

単に、世界遺産のなにがどこにあってを知るだけではなく、世界遺産の理念の誕生の背景や、世界遺産はなんのためにあるのかなど、学んでみると興味深いところがたくさんあって、面白いです。

ところで、“資格・検定”というものは、役に立つか立たないかをよく議論されますが、個人的にはこういったものは、人に評価してもらう手段ではなく、自分を成長させるための学びの機会だと思っています。
自分の人生を豊かにするためのもの。

だから、取得・合格に向けての勉強は、全くといったら嘘になりますが、そんなに、苦痛になりません。
充実し楽しく感じていることがほとんどです。

特に、世界遺産検定の試験当日の会場は、様々な年代の人の姿がありますので、みんな自分の人生のために励んでるんだなーと、なんだか力になりますよ。

左から、兵庫県姫路市 姫路城、岩手県平泉町 毛越寺、岐阜県白川村 白川郷

ちなみに、毎週日曜の午後6時からわずか30分、TBSテレビで「世界遺産」という番組もやっていますから、ご興味ありましたらご覧になってみてください。
TV番組が取り上げる場所なので、僻地とかよっぽどの旅好きじゃないとトライできなそうなハードルの高い遺産が紹介されることも多いですが、TVじゃないと見られないような美しい断崖絶壁の山々や広大な青い海とか、うわーっと思わず言ってしまうような場面が結構あると思います。
もしかしたら、何かあなたの琴線に触れるようなこともあるかもしれません♪

あなたの心が震える場所は
どこですか?

世界遺産検定(3・4級)の公式テキストと過去問集です。
テキストはオールカラーで、様々な世界遺産を、視覚的にも楽しむことができます。

はじめて学ぶ世界遺産50 世界遺産検定4級公式テキスト<第2版>

きほんを学ぶ世界遺産100 世界遺産検定3級公式テキスト<第2版>

世界遺産検定3・4級公式過去問題集<2020年度版>

愛の人 マザー・テレサ その1

マザー・テレサを取材し続けた沖守弘氏

私は本が好きなのですが、保管場所も限られているので、定期的に本棚を整理し、手放す本を考えることにしています。
先日も、その作業をしていたのですが、この本は絶対手放さないぞ!と改めて心に誓った本がありますので、ご紹介したいと思います。

それは、沖 守弘(おき もりひろ)氏による「マザー・テレサ あふれる愛」(講談社 青い鳥文庫)です。
アマゾンでの評価が高いのも、納得できます。良書です!

なお、この本には「青い鳥文庫」バージョンではないものもありますが、「青い鳥文庫」は小学中級以上向けに作られていますので、分かりやすく、写真も豊富で、老若男女どなたにも読んでいただけるので、お勧めです。
(完全にルビが入っているので、返って読みづらいと感じる方もいるかもしれませんが…)

また、マザー生誕100年の2010年に出版されましたので、記念本でもあるような形ですね。
著書の沖氏の活動により、マザーの来日が実現したということはあまり知られていないことだと思いますが、この本を読めばその理由が分かります。

沖守弘氏は、マザー・テレサを撮り続けた写真家として有名な人です。
1950年から社会的テーマを題材とした報道写真家として活躍し、1974年からマザー・テレサを撮り始め、彼女が1997年87歳で亡くなるまで追い続けます。そして、2018年89歳で、その生涯を閉じました。

この本によると、沖氏は、マザー・テレサを取材始めた初期の頃は、悲惨な状況を収めることにフォーカスをあて、陰惨で目を背けたくなるようなカットに異常に執着していたそうです。報道写真家ですから無理もないと思いますが、沖氏自身が、途中でそれが間違いであることに気がついたと言います。

「正直に言って、マザーの<死を待つ人の家>をみたとき、ぼくは、これはとくダネだ、くいついて撮りつづけていけばモノになるぞと、功名心にかられていた。一種の現世欲から、この仕事は始まったのだ。」

「ぼくは、あきらかに間違っていたのだ。ぼくが会ったマザー・テレサは、明るくて強くてラジカルで、だけどやさしく、不退転の意思と自分の進んでいる方向に絶対の確信をもった女性である。およそ悲壮感とは対極にある人である。それをぼくは、まったく逆にとらえ、しかも自分は正しいのだと傲慢にもきめこんでいたのだ。」

この沖氏の思いには、写真家でなくとも共感を覚える方が多いのではないのでしょうか?
現代は、不用意に人を不安に陥れる情報が多すぎます。
現実を知ることはもちろん大切ですが、自分のエゴや、人の関心を集めるための手段として発信されているのではないかとさえ感じることがあります。
一人でも多くが、あえて悲壮感に向かうような行為はせずに、少しでも穏やかに過ごすための選択ができるようになれば良いなと思います。

マザー・テレサは、1974年にノーベル平和賞を受賞しました。マザーの日本の息子と言われた沖氏でも、受賞によって多忙となり、体調を崩してしまったマザーにはすぐ会えなかったそうです。受賞の1年後に再会できた時、沖氏は、マザーに平和賞のメダルをつけた写真を撮らせてとお願いします。

しかし、
「受賞はね、もう過去のこと。メダルはしまってあるからここにはないの。オキ、わたしはね、ノーベル平和賞をもらうために、この活動をしているわけではないのよ。名誉とか勲章とか、わたしにはそんなに意味のあるものと思えないのよ。あなたは、わかってくれてるでしょうけどね。」
と、やさしくそしてキッパリと断られたそうです。

私は研究機関に勤めていたことがありますが、正直なことを言うと、研究が、人のためではなく、名誉のためになされているのではないかと思ってしまうことがありました(もちろん大体が人と世のためにされているということを書き添えておきます)。
現代は、ノーベル賞に限らず、様々な賞、勲章があり、人々が称えられますが、その受賞の裏には暗い世界がないことを願うばかりです。

また、エピローグの前の章、最後の頁では、このように締められています。

「マザーには、ノーベル平和賞受賞インタビューでの有名なエピソードがある。
『世界平和のために、わたしたちはどんなことをしたらいいですか?』と記者にたずねられ、ひとこと、こう答えたという。

『いますぐ家に帰って、家族を大切にしてください。』

平和は、愛は、まずわたしたちのまわりからはじまる、いや、はじめなければならないのだ。」

この本に関しては、ご紹介したい部分が山ほどあります。
楽しいエピソードもたくさんあって、心がほっこりすること請け合いです。
是非、一人でも多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。

今回の私からの紹介は、沖守弘氏を中心としたお話になりましたが、この本では、マザー・テレサだけでなく、彼女を取り囲む素晴らしい人々についても述べられていますので、それらも交えて、また次回(カテゴリー:心の師匠)にご紹介したいと思います。

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あなたの心をあたたかくするのは
どんな本ですか? 


マザー・テレサ あふれる愛 講談社青い鳥文庫 / 沖守弘 【新書】