デジタル画とアナログ画 そして臨床美術のアートプログラム
カテゴリー「臨床美術 Clinical Art 」の記事、「臨床美術を初体験した時の感動 その2 臨床美術との出会い 〜左脳と右脳〜」の続きです。
前回、左脳 と右脳 の機能の違いについて一般的に知られていることについて記載し、最後に、デジタル画 、アナログ画 は、それぞれ、左脳 または右脳 のどちらで描かれるかを考えていただきました。
答えからいきますと、左脳 で描くのがデジタル画(シンボル画) で、右脳 で描くのがアナログ画 です。
左側がデジタル画(シンボル画) で左脳 、右側がアナログ画 で右脳 を使って描いた絵
コンピューターで描くのがデジタル画、人の手で描くのがアナログ画、そういうことではないですよ。 多少なりともIT知識のあった私は、はじめ、そう思っちゃいましたけど・・・(苦笑)
※IT:Information Technology(インフォメーション テクノロジー/情報技術)
もう少し、詳しく解説しますと、左側 の絵は、「太陽、月、今日の気分 、星、チューリップ、家を、一枚の紙に描いてみてください 」 と言われた時、一方、右側 は「今日の気分 を描いてみてください。ただし、具体的な形やシンボル的なことは描かないで 。 」 と言われて描いた絵です。
シンボル画 とは、言葉を聞いた瞬間に、そのシンボル(具体的な形)が目の前にポンポンポーンと出てきたもの で、左脳 の絵、 対して、直線や曲線を使って抽象的に描かれた絵 が、アナログ画 、右脳 の絵です。
『気分』の絵については、「具体的な形やシンボル的なことは描かないで」と付け加えられなければ、人によって、描き出される絵は、ふた通りに分かれます。 例えば、上図の左 側(デジタル画 )の人の笑顔の具象画 と、右 側(アナログ画 )のような抽象的な表現 のタイプに分かれます。
デジタル画 には、どうしても、上手い下手がでてきてしまい ます。しかし、アナログ画 は非常に個性豊か な絵になり、「へえ、あなたの気分はこんな感じだった のね」と、上手いとか下手とかいったことではなくなり ます。
そして、ちょっと専門的な話になりますが、右脳 を刺激すると「前頭前野(思考や創造性を担う脳の最高中枢)」が活性化され、同時に、右脳 と左脳 を繋いでいる「脳梁」という神経網を通して、左脳 を刺激する ことにもなります。右脳 が活性化されてくると、何か理由もなく元気になってきたり、前向きになる作用がある と言われています。
ちなみに、一番上の図の、右側のアナログ画 については、私がその日どんな『気分』だったかのメモを裏側に書いていたのですが、「お花を買って幸せな気分で歩いていたら、知らないおばさまに微笑まれ、私も笑顔になりました」とありました。これは臨床美術の一つであるアナログ日記 というものなのですが、描いている時も楽しいですし、あとあと見返してみても、面白いですよ♪
さて、私が臨床美術を初体験した時に、話を戻します。 臨床美術のプログラムには様々なものがあり、画材も絵の具や墨、パステル、画用紙に限らず和紙や粘土など、プログラムによって使用するものが異なり、とてもバラエティーに富んでいます。
この時は、オイルパステル という画材を使用して、白画用紙に描いていく、とてもシンプルなものでした。 ただ、いきなり、描きたいことを描けと言われても、描けませんよね。
先生から「まず、好きな色を3色選んでください。その中の一つで、一箇所、お好みのところに線を引いてみてください。次は違う色で引いてみましょう。今度は線で囲まれたところを塗りつぶしてみましょう。」という感じで声をかけられ、先生と一緒に一つ一つのプロセスを踏んで行きます。 考えることは考えるのですが、イチから一人で描くことに比べ、ハードルがぐっと低くなります。
このプログラムの場合、白い画用紙の上に、切り抜かれた画用紙があらかじめ貼り付けられているのですが、その段差の感触を楽しめると共に、見た目にもちょっとしたアクセントにもなっています。 最後に、描いた絵に合いそうだなと思う色の台紙を選んで、自分の好きな位置に貼り付け、完成です。
この作品も、「当サイトの背景画像について 誰でも手軽に楽しめる♪ 塩を使った水彩技法 」でご案内したように、百円ショップで買った額縁に入れてみますと、雰囲気がちょっと変わります。作品感がアップしますね。
でも・・・。そうは言っても、こういった抽象画、正直やっぱり、見ただけや話を聞いただけ、ではちょっとわからない、のが多くのかたの本音かなと思います。 絵を描くのが好きだった私も、抽象画は見るのも描くのも苦手とずっと思っていました。 でも、臨床美術は、アプローチの仕方が、独特なんです。 東北福祉大学で初めてこの体験をした時、普段使っていない脳を働かせている感じ、と言うのか、なんとも言えない心地よさを得ることができ、感動しました。
その日の気分で色を選ぶ。線で描く。曲線で描く。点で描く。塗る。指でのばしてみる。台紙に貼る時の見立てを考える・・・時間にして3・40分くらい。没頭します。
抽象画(アナログ画)って、意外と面白いんだな。 初めてそう思いました。 語彙力の乏しい私には、ここまでしか言えません。上手く伝えられないのがもどかしいのですが、これは、やってみた人でないとわからない・・・
ちなみに、こちらのりんごのように、見たものを描く、具象的なプログラムもたくさんあります。 ただ、アプローチの仕方が違うのです。普通の描き方ではない。それが、誰にでもできて、面白い。そして、そこにある心が素晴らしい。 その辺のことについては、またおいおい、ご紹介したいと思います。
なお、左脳と右脳 に関しましては、カテゴリー「体の健康 」の記事、「驚異と感動の実話 奇跡の脳 その1 〜脳科学者の脳が壊れたとき〜」も、あわせてご参照いただけましら嬉しいです。
あなたの 右脳は 活発ですか?
本投稿には、臨床美術士 5級のテキストと、市販されている本「臨床美術 認知症治療としてのアートセラピー 」を参考にしました。市販本の著者は故・金子健二 先生で、宮城県出身の彫刻家であり、臨床美術の創始者です。