〜およそ20年越し、大好きな映画を美しく蘇った映像で大画面で観る感動〜
数年前、大好きな映画『落下の王国(The Fall)』について、ロケ地となった世界遺産とともに紹介する記事をしたためた私。
なんとこの映画が4Kデジタルリマスター版として蘇り、今年、日本全国の映画館で上映されると知った時はどれだけ心が躍ったことか。
映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』2025年11月21日(金)より全国公開。
しかも、”オリジナルの劇場公開版でカットされたシーンが新たに追加され、より濃密な没入体験を実現”された”完全版”とのこと。
映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』公式ホームページ:https://rakkanooukoku4k.jp/
長年のファンとして、この上映日をどれだけ待ち望んだことでしょう・・・
というわけで、その公開初日、ついに映画『落下の王国(The Fall)』の4Kデジタルリマスター版を映画館で鑑賞してきました。
仙台市在住の私が訪れた劇場はフォーラム仙台でしたが、平日の昼間にもかかわらず、劇場は満席。
(上映されている劇場一覧はこちら→https://theaterlist.jp/?dir=rakka4k)
制作されてからおよそ20年が経った今でも、この映画が持つ力の大きさを改めて感じ、胸が熱くなりました。
私自身、世界遺産やアート、そして映画をこよなく愛する者として、この作品は特別な意味を持っています。
なぜなら、これは単なるファンタジー映画ではなく、まさに「動く美術書」!!
そして「世界を巡る壮大な旅」!!だから。
さて、ここから先は少しネタバレ的なことも述べていこうかと思いますので、まだ一度も映画『落下の王国(The Fall)』を観たことがなく、これから観るのだという方は、ご留意くださいね。
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まず、『落下の王国(The Fall)』を語る上で欠かせないのは、その息をのむような映像美です。
ターセム・シン(Tarsem Singh)監督は、インド、ナミビア、中国、イタリアなど、20カ国以上でロケを敢行されたとのこと。
4Kリマスターによって大スクリーンに映し出されたその光景は、もはや現実のものとは思えないほどの色彩と質感でした。
誰もが感動するのは、CGに頼らず、世界遺産を含む実在のロケ地を最大限に活かして創り上げられた映像の迫力です。
壮大な万里の長城や、タージ・マハルの前に建つ赤い砦。
砂漠(ナミビア)の絵画的な構図。
インドのジャンタル・マンタル(ジャイプル)の巨大な建造物が、物語の登場人物の背景として機能する瞬間。
一つ一つのショットが、まるで緻密に計算された絵画のようでもあり、劇場で鑑賞することは、世界の美術館を巡るような素敵な体験でした。
これまで小さな画面でしか観たことがなかった方も、ぜひこの機会に劇場の暗闇で、監督が追い求めた「本物の美」に触れ、私が味わったような感情を得てほしいと願います。
この映画が、私のような世界遺産好きの心を掴んで離さないのは、ファンタジーの物語が、地球上に実在する最も美しい場所の数々によって支えられている点ではないでしょうか。
病室で語られる物語は、病気の少女アレクサンドリアの無垢な視点と、語り手ロイの絶望や希望が混ざり合いながら進んでいきます。
そのストーリーテリングの中で、世界遺産や世界各地の絶景は、単なる背景ではなく、物語の感情を表現する重要な役割を果たしています。
例えば、美しい砂漠(ナミビア ナミブ砂漠)や、青い街(インド ジョードプル)の風景は、旅のキャラクターたちが感じる孤独や、自由への渇望を象徴しているようにも感じられます。
そして、それは私たちが世界遺産に感じる「人類の残すべき遺産」という価値観と深く響き合うのです。
最後に、タイトル『落下の王国(The Fall)』に隠された多層的な意味について考えてみたいと思います。
映画の原題である『The Fall』は、邦題として『落下の王国』とされました。
これには様々な解釈が込められているのだと感じます。
この言葉が指し示すものは、現実と物語の世界で、登場人物たちに起こる複数の「落ちる」または「落ち込む」という状態ではないでしょうか。
1. Royの現実:絶望への「転落」
主人公であるスタントマンのロイは、撮影中の事故により再起不能の怪我を負い、恋人にも裏切られ、精神的に深い絶望へと「落ち込んで」います。
物理的な落下として、彼がスタントマンとして経験した「落下」(事故)そのもの。
精神的な崩壊として、絶望から自死を考えるほど、人生のどん底へと「転落」した状態。
物語の終焉において、彼は物語の中で、キャラクターたちを次々と死(あるいは絶望)へと「落とす」ことで、自身の苦しみを表現しようとします。
2. Alexandriaの成長:無邪気な時代からの「脱却」
一方、少女アレクサンドリアは、純粋で無垢な視点を持っていますが、ロイの物語を聞くことで、死や裏切り、悲劇といった現実世界の暗い部分に直面していきます。
アレクサンドリア自身も、オレンジの収穫中に木から「落ちて」腕を骨折して入院しロイに出会った。
ロイを救おうとして病院内で再び「落下」して大怪我を負ってしまう。
アレクサンドリアの無垢からの脱却
→人間が成長する過程で経験する、無邪気な世界から現実の世界へと「落ちていく」過程を象徴
3. 神話的な解釈:「失楽園」のテーマ
「The Fall」という言葉は、キリスト教の神話において、アダムとイブがエデンの園を追放された「堕罪(Fall of Man)」を連想させます。
ロイが語る物語は、復讐と裏切りに満ちたダークファンタジーです。
これは、かつて美しい世界(楽園)があったにもかかわらず、人間が悪意や過ちによってそこから「失墜」した状態を描いていると考えられるのではないでしょうか。

『落下の王国(The Fall)』という、絶望、成長、そして神話的な失墜を表現するタイトル。
こうして考えてみると、笑える部分も大いにある作品でありながら、結構なダークな部分を示唆し、私たちに改めて人生の問いかけをしてくれるような物語だなと感じました。
だからこそ、この映画は単なる映像美だけでなく、深い悲哀と、そこから立ち上がろうとする人間の強さという感動を、観る者に与えるのかもしれません。
長年のファンの方も、今回初めて観る方も、この4Kデジタルリマスター版により、きっと新たな感動と発見を得られると思います。
スクリーンに広がる夢のような世界で、あなた自身の「落下の王国」を見つけてくださいね。
映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』公式ホームページ:https://rakkanooukoku4k.jp/
あなたにとって
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どこですか?





