〜 本当のところ、それは泣かされる物語でした 〜
フォーラム仙台で上映中の『フェザーズ その家に巣食うもの(原題:The Thing with Feathers)』を観てきました。
実はこの映画の公開前、私は、最初に映画館でチラシをパッと見した時、「ホラーっぽいな」と思って、観るつもりはありませんでした。
私はグロテスクだったり、残虐な描写がリアルなタイプのホラー映画が苦手だからです。
とはいえ、チラシを一見したその日、映画好きの私は念の為、家に帰ってからPCで予告編動画も確認。
で、やはり怖そうだなという印象は変わらずで、この映画はスルーするつもりでいたのです。
だって、こんな予告編ですよ?
本当に怖そうじゃないですか??(それとも私が気弱なだけ??)
でも、素晴らしいパフォーマンスで知られ、私にとっても好きな俳優の一人、かつ偶然にも私と誕生日が近しいベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Timothy Carlton Cumberbatch, 1976年7月19日〜)主演の作品、そしてアート好きの私には、そのカンバーバッチが今回演じる主人公はコミック・アーティストであるというところが興味深くて、どうしても気になって…
それで後日、改めてこの映画のチラシを見たときに、目にとまる言葉がありまして。
「いびつな美しさをまとい癒しをもたらす、絶望と再生のファンタジースリラー」
というキャッチコピーです。

ふと、ホラーというより、どこか違う方向の作品なのではないかと思いました。
さらにこの映画の原作小説のタイトルが
『悲しみは羽根をまとって(原題:Grief is the Thing with Feathers)』
であることを知り、これは単なる怖い映画ではないのかもしれない、と感じたのです。
そして、実際に観てみて思ったのは、これはホラーではなく、「喪失」の映画だということでした。

物語の中に現れるカラスは、不気味で少し怖い存在です。
けれど同時に、どこか可笑しさもあり、完全に恐怖の対象にはなりません。
最初はその違和感に戸惑いましたが、観ているうちに気づきました。
あの存在は恐怖そのものではなく、「悲しみ」そのものなのではないかと。
悲しみは、突然やってきて、居座り、理屈ではどうにもなりません。
それでも時に、どこか現実離れした形で自分の中に現れることがあります。
そう考えると、あのカラスの奇妙さは、とてもリアルに感じられました。
この映画を観ていて感じたのは、人の死というものは「乗り越えるもの」ではなく、「抱えたまま生きていくもの」なのかもしれない、ということです。
悲しみを無理に消そうとするのではなく、ちゃんと感じて、そのまま受け止めること。
それは決して楽なことではありませんが、それでも自分は生きていくしかありません。
カラスの言葉は、突き放しているようでいて、どこか慰めにも感じられました。
厳しさと優しさが同時にあるような、不思議な存在です。
この映画の最中、私は、思いがけず、泣いてしまいました。
瞳から、静かにツーッと涙が流れ落ちてくるのです。
私はこれまでに身近な人を何人も失った経験があります。
だからこそ、この映画が心に刺さったのかもしれません。
観ているうちに、自分の中にある感情に、少し気づくことができた気がしました。
観終わったあと、完全にスッキリしたわけではありません。
ただ、自分の感情に気づけたという意味では、少しだけ心が軽くなったようにも感じています。
一方で、内容については考えさせられる部分も多く、どこか引きずるような余韻も残りました。
でも今こうして振り返ってみると、どちらかというと「スッキリ」に近い感覚だったのかもしれません。

この映画は、もしかしたら人を選ぶ作品かもしれません。
物語としてわかりやすい展開を求める人には、少し難しく感じるかもしれないので…
けれど、もし何かを失った経験があるなら、この映画は静かに寄り添ってくる作品だと思います。
ホラーが苦手な私でも観ることができたので、同じように少し不安に感じている方でも、大丈夫じゃないかと思います。
なお、仙台では現在フォーラム仙台で上映されています(※4月9日まで)。
もし気になっている方は、ぜひ、劇場で観てみてください。
私は映画を観たあと、原作小説『悲しみは羽根をまとって(原題:Grief is the Thing with Feathers)』も読んでみたくなり、今読み進めているところです。
読み終えたら、また違った視点でこの作品について書いてみたいと思います。
映画『フェザーズ その家に巣食うもの』公式ホームページ:https://feathers-film.com/

