臨床美術を初体験した時の感動 その3

デジタル画とアナログ画 そして臨床美術のアートプログラム


カテゴリー「臨床美術 Clinical Art」の記事、「臨床美術を初体験した時の感動 その2 臨床美術との出会い 〜左脳と右脳〜」の続きです。

前回、左脳右脳の機能の違いについて一般的に知られていることについて記載し、最後に、デジタル画アナログ画は、それぞれ、左脳または右脳のどちらで描かれるかを考えていただきました。

答えからいきますと、左脳で描くのがデジタル画(シンボル画)で、右脳で描くのがアナログ画です。

左側がデジタル画(シンボル画)左脳、右側がアナログ画右脳を使って描いた絵

コンピューターで描くのがデジタル画、人の手で描くのがアナログ画、そういうことではないですよ。 多少なりともIT知識のあった私は、はじめ、そう思っちゃいましたけど・・・(苦笑)

※IT:Information Technology(インフォメーション テクノロジー/情報技術)

もう少し、詳しく解説しますと、
左側の絵は、太陽、月、今日の気分、星、チューリップ、家を、一枚の紙に描いてみてくださいと言われた時、一方、
右側今日の気分を描いてみてください。ただし、具体的な形やシンボル的なことは描かないでと言われて描いた絵です。

シンボル画とは、言葉を聞いた瞬間に、そのシンボル(具体的な形)が目の前にポンポンポーンと出てきたもので、左脳の絵、
対して、直線や曲線を使って抽象的に描かれた絵が、アナログ画右脳の絵です。

『気分』の絵については、「具体的な形やシンボル的なことは描かないで」と付け加えられなければ、人によって、描き出される絵は、ふた通りに分かれます。
例えば、上図の側(デジタル画)の人の笑顔の具象画と、側(アナログ画)のような抽象的な表現のタイプに分かれます。

デジタル画には、どうしても、上手い下手がでてきてしまいます。しかし、アナログ画非常に個性豊かな絵になり、「へえ、あなたの気分はこんな感じだったのね」と、上手いとか下手とかいったことではなくなります。

そして、ちょっと専門的な話になりますが、右脳を刺激すると「前頭前野(思考や創造性を担う脳の最高中枢)」が活性化され、同時に、右脳左脳を繋いでいる「脳梁」という神経網を通して、左脳を刺激することにもなります。右脳が活性化されてくると、何か理由もなく元気になってきたり、前向きになる作用があると言われています。

ちなみに、一番上の図の、右側のアナログ画については、私がその日どんな『気分』だったかのメモを裏側に書いていたのですが、「お花を買って幸せな気分で歩いていたら、知らないおばさまに微笑まれ、私も笑顔になりました」とありました。これは臨床美術の一つであるアナログ日記というものなのですが、描いている時も楽しいですし、あとあと見返してみても、面白いですよ♪

さて、私が臨床美術を初体験した時に、話を戻します。
臨床美術のプログラムには様々なものがあり、画材も絵の具や墨、パステル、画用紙に限らず和紙や粘土など、プログラムによって使用するものが異なり、とてもバラエティーに富んでいます。

この時は、オイルパステルという画材を使用して、白画用紙に描いていく、とてもシンプルなものでした。
ただ、いきなり、描きたいことを描けと言われても、描けませんよね。

先生から「まず、好きな色を3色選んでください。その中の一つで、一箇所、お好みのところに線を引いてみてください。次は違う色で引いてみましょう。今度は線で囲まれたところを塗りつぶしてみましょう。」という感じで声をかけられ、先生と一緒に一つ一つのプロセスを踏んで行きます。
考えることは考えるのですが、イチから一人で描くことに比べ、ハードルがぐっと低くなります。

このプログラムの場合、白い画用紙の上に、切り抜かれた画用紙があらかじめ貼り付けられているのですが、その段差の感触を楽しめると共に、見た目にもちょっとしたアクセントにもなっています。
最後に、描いた絵に合いそうだなと思う色の台紙を選んで、自分の好きな位置に貼り付け、完成です。

この作品も、「当サイトの背景画像について 誰でも手軽に楽しめる♪ 塩を使った水彩技法」でご案内したように、百円ショップで買った額縁に入れてみますと、雰囲気がちょっと変わります。作品感がアップしますね。

でも・・・。そうは言っても、こういった抽象画、正直やっぱり、見ただけや話を聞いただけ、ではちょっとわからない、のが多くのかたの本音かなと思います。
絵を描くのが好きだった私も、抽象画は見るのも描くのも苦手とずっと思っていました。
でも、臨床美術は、アプローチの仕方が、独特なんです。
東北福祉大学で初めてこの体験をした時、普段使っていない脳を働かせている感じ、と言うのか、なんとも言えない心地よさを得ることができ、感動しました。

その日の気分で色を選ぶ。線で描く。曲線で描く。点で描く。塗る。指でのばしてみる。台紙に貼る時の見立てを考える・・・時間にして3・40分くらい。没頭します。

抽象画(アナログ画)って、意外と面白いんだな。初めてそう思いました。
語彙力の乏しい私には、ここまでしか言えません。上手く伝えられないのがもどかしいのですが、これは、やってみた人でないとわからない・・・

ちなみに、こちらのりんごのように、見たものを描く、具象的なプログラムもたくさんあります。
ただ、アプローチの仕方が違うのです。普通の描き方ではない。それが、誰にでもできて、面白い。そして、そこにある心が素晴らしい。
その辺のことについては、またおいおい、ご紹介したいと思います。

なお、左脳と右脳に関しましては、カテゴリー「体の健康」の記事、「驚異と感動の実話 奇跡の脳 その1 〜脳科学者の脳が壊れたとき〜」も、あわせてご参照いただけましら嬉しいです。


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本投稿には、臨床美術士5級のテキストと、市販されている本「臨床美術 認知症治療としてのアートセラピー」を参考にしました。市販本の著者は故・金子健二先生で、宮城県出身の彫刻家であり、臨床美術の創始者です。